ゆほびか ゆほびか
  • 文字サイズの変更
  • 大
  • 中
  • 小
  • SNS
  • twitter
  • facebook
  • instagram

【首わしづかみ】こりを取って脳の血流をアップ!頭痛とめまいが解消、耳鳴りにも

首のこりが万病を引き起こす

 私は沖縄県那覇(なは)市で歯科クリニックを開業しています。私のクリニックは、甲子園で有名な沖縄尚学高校の隣にあります。

 私は歯科医でありながら、日頃から、「首」の重要性を訴え続けています。なぜなら、首に問題が生じると全身に派生して、ときには命取りになるような病気につながるからです。「すべての病気の元は首にある」と言っても過言ではありません。

 特に、私が重要視しているのが、首の横を通る太い血管「内頸静脈(ないけいじょうみゃく)」です。内頸静脈の流れが悪くなると、脳から心臓に戻る血液の流れが滞ります。頭痛、めまい、耳鳴りなどは、内頸静脈の滞りが原因で現れる代表的な症状です。

 内頸静脈の流れが悪くなる原因は、「首のこり」です。そして、首のこりの大きな原因となるのが、就寝中の「食いしばり」や「歯ぎしり」なのです。

 しかし、多くの人は、寝ている間の食いしばりや歯ぎしりに対して自覚がありません。睡眠の段階の中でも「ノンレム睡眠」と呼ばれる、深い眠りの最中に起こるので、気がつくはずがないのです。

 脳は、眠っている間に昼間のストレスを取ろうとします。このときに酸素を求めるので、心臓は脳に血液を送ろうとします。

 ところが、睡眠中の心臓は、血液を送り出すポンプ作用が弱いために、頬にある咬筋(こうきん)や、首にある胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)という筋肉を収縮させて、血液の循環をよくしようとします。

 このときに起こるのが、食いしばりや歯ぎしりです。つまり、食いしばりや歯ぎしりは、脳に血液を送るポンピングのような役割を果たしているのです。

 しかし、食いしばりや歯ぎしりをすると、胸鎖乳突筋がこり固まり、内頸静脈が圧迫されます。その結果、内頸静脈の流れがブロックされてしまうのです。

 ほかにも、首には太い頸動脈も通っています。しかし、動脈の血管壁は硬いので、胸鎖乳突筋がこり固まってもそれほど影響を受けません。一方、静脈の血管壁は柔らかいので、簡単にブロックされるのです。

胸鎖乳突筋のこりをほぐし、内頸静脈の流れをよくしよう!

脳梗塞などの重病の原因にもなる

 よく「頭痛持ち」という人がいます。原因がよくわからず、慢性的に繰り返し起こる頭痛は、胸鎖乳突筋のこりで内頸静脈の流れがブロックされ、それにより脳内部の血管内圧が上がり、血管がふくれあがることにより起こると考えられます。

 その状態で、心臓から脳へ血液が上がってくれば、そのたびにズキンズキンと強い頭痛が引き起こされます。「筋緊張型頭痛」と呼ばれますが、実際は首のこりが原因なのです。

 このタイプの頭痛は、血管がまだ柔軟な、比較的若い人に多く見られます。高齢になると、血液がドロドロになり、流れが悪くなるので、血管の内圧が上がりにくいからです。

 そうなると、今度は脳に血液がスムーズに送られないために、脳梗塞を起こしやすくなります。

 高齢者には、歯の欠損という問題もあります。奥歯が抜けてなくなった状態で寝ていると、前歯が強く当たるのでどうしても首がそり返り、首の筋肉がいっそうこってしまいます。その結果、内頸静脈の圧迫も強くなります。

 また、20年も30年も血管の内圧が高い状態が続くと、血管壁がもろくなってきます。こうなると、比較的若い人でも、脳動脈瘤やくも膜下出血を起こしやすくなるのです。

認知症の原因も首のこりだった!

 首のこりの悪は、これだけではありません。脳で作られる「脳脊髄液(のうせきずいえき)」の循環も悪くしてしまうのです。

 脳脊髄液は、私たちの脳を守るほか、睡眠中に脳細胞が排出する老廃物を回収するという重要な役割を担っています。脳の老廃物を回収した脳脊髄液は、主に静脈に入って心臓に戻っていきます。その際、脳の老廃物を排出するメインの静脈が内頸静脈なのです。

 つまり、胸鎖乳突筋などの首の筋肉がこっていると、脳脊髄液の循環も滞り、脳の老廃物がスムーズに排出されなくなります。すると、脳の機能が低下していきます。これが認知症なのです。

 このように、首のこりはさまざまな病気や不調の原因となり、放置していると、人生に大きな悪影響を及ぼす重い病気にもつながります。

 ですから、私はクリニックにいらっしゃる患者さんたちに、とにかく首のこりを取ること、首の筋肉を柔らかく保つことを勧めています。

首のこりをチェックする宮城先生。万病の元は首にあるという

首わしづかみで自身の頭痛が解消

 私は、患者さんが自分で首のこりを取れる簡単な方法をいくつも考案しています。その中の一つで、ぜひ皆さんにも毎日の日課にしていただきたいのが「首わしづかみ」です。

 首わしづかみは、誰でも簡単に、安全にできるうえに、首のこりがスッキリ取れるお勧めの手法です。

 首わしづかみを考案したきっかけは、私自身の不調でした。9年ほど前、私は顎関節症と頭痛、首のこりが悪化し、「このままだとまずい。内頸静脈の流れをよくする方法はないか」と、試行錯誤の末に考え出した手法なのです。

 「首わしづかみ」の詳しいやり方は、後ほど紹介しますが、基本的にはとても簡単。名前のとおり、手を首の後ろに回して、後ろから首をわしづかみにし、そのままグッと指に力を入れるだけです。

 これだけで、胸鎖乳突筋がほぐれて、首のこりが改善されてきます。私自身の首のこりも取れて、不調も改善したので、患者さんたちにも勧めたところ、頭痛、めまい、メニエール病などの症状を訴える人たちのおよそ9割が改善しました。

 耳鳴りの症状があった人も、約5割が改善したのです。こうした症状は、病院で診察を受けても「年だから」「ストレスのせい」「原因がわからない」という言葉で片づけられがちです。

 でも、それでは苦しんでいる患者さんは救われません。なにせ私自身も苦しんだ症状ですから、できることなら治してあげたいと、現在はクリニックの患者さんだけでなく、講演会など、機会があるごとに首わしづかみをお勧めしています。

 また、首わしづかみと合わせて、「首伸ばしストレッチ」も行うとさらに効果的です。長年の歯の食いしばり癖によってこり固まった首の後ろの筋肉をほぐすのに役立ちます。

万病の元・首のこりをほぐせばさまざまな不調が解消する!

左手で首をつかみ上げて内頸静脈をほぐそう

いびきや不眠の改善にも有効

 首のこりに自覚がなくても、寝るときにいびきをかく人は要注意です。私はいびきをかく人は、脳血管の重大な病気になる確率が極めて高いと思っています。

 いびきをかく人は、頭がそり返った姿勢で寝ています。あごが上がると舌が落ちて気道をふさぐので、いびきをかいたり、息ができなくて無呼吸になったりしてしまうのです。

 いびきをかく人は、首わしづかみを行うほか、枕を調節して、あごを少し引いた姿勢で眠るようにするといいでしょう。

 最近は、テレワークの普及で、ノートパソコンを長時間見る人が増えていると思います。これも首のこりを招く悪い生活習慣です。

 ノートパソコンを長時間見続ける姿勢は、首の反り返りを招き、「ストレートネック」と呼ばれる頸椎症(けいついしょう)の原因となります。

 ストレートネックになると、脳脊髄液がブロックされて循環しないために脳が圧迫されます。すると、昼間だけ分泌するはずの興奮物質「オレキシン」が夜中にも分泌されます。これが不眠の原因になるのです。

 このように、首のこりは誰もがなりやすく、さまざまな病気を引き起こすものですが、誰にでも治すことができるものでもあります。今日から首わしづかみを始めて、首のこり対策を行ってください。

万病の元になる首のこりを取る「首わしづかみ」のやり方

①左手(右手でも可)を、後頭部の首のつけ根のところに回す
そのまま指に力を入れ、首をわしづかみにするようにもむ

5~10回程度もみほぐす

僧帽筋(そうぼうきん)をほぐしてこりを取る「首伸ばしストレッチ」のやり方

頭の後ろで手を組み、そのまま手の重みで頭を前に倒す。首わしづかみの後に行うと効果的

脳動脈瘤が縮小し手術を回避!2週間でめまいが完治!首わしづかみの驚きの改善例

脳動脈瘤が縮小し手術を回避!

 「首わしづかみ」を実践し、首のこりが取れることで、さまざまな症状が解消されます。ここでは、実際の症状の改善例をご紹介します。

 1例目は、講演会で出会った脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)の79歳の女性です。このかたは4㎜の脳動脈瘤があり、病院では「2カ月後に手術」と診断されていました。

 しかし、手術が不安でいろいろと調べるうちに、私のことを知ったようで、講演会にいらっしゃいました。

 その後、私のクリニックに通院するようになり、噛み合わせの治療と首わしづかみを続けた結果、3カ月で脳動脈瘤は2㎜に縮小し、手術を回避できました。

 脳動脈瘤の主な原因は、脳の血管内圧の上昇です。それは、首の横を通る太い血管「内頸静脈」の圧迫が原因で起こります。首にこりがあると、脳の血液の出口である内頸静脈が圧迫されてしまうのです。

 脳動脈瘤の悪化を防いで改善を望むには、まず首のこりを取る必要があります。このかたの場合も首わしづかみで首をほぐし、脳の血管内圧を下げたことで、脳動脈が縮小したものと考えられます。

 2例目は、心臓肥大と心臓弁膜症(べんまくしょう)で心臓の手術を2回受けたにもかかわらず、状態が変わらなかったというかたです。同時に、睡眠時無呼吸症候群も発症していました。

 このかたを診察すると、ひどい首のこりと、頭のそり返りがありました。頭がそり返った姿勢で寝ると、舌が気道に落ちてふさがるので無呼吸になり、脳が酸欠状態になります。

 脳は心臓に酸素を送るよう命令しますが、首がこっていると、内頸静脈が圧迫されてブロックされているので、血液がうまく循環せず、心臓のポンピングに負担がかかります。手術しても心臓の状態がよくならなかったのはこのためでしょう。

 睡眠時の脳の酸欠状態が日常化すると、認知症や脳梗塞(のうこうそく)を起こすリスクが高まります。それを防ぐためにも、枕を調整して、寝るときの首のそり返りを防ぎ、同時に首のわしづかみで根気よく首のこりを取りました。

 その結果、このかたは心臓発作をほとんど起こさなくなりました。首にこりのある人の脈拍数は90以上のことが多く、ときには100以上の人もいます(正常な脈拍数は1分間に65~75ぐらい)。

 これは、脳の血液循環がよくないために脳が酸欠状態になり、心臓が脳に血液を送ろうとして、拍動数が増えるためです。

 しかし、首わしづかみで首のこりを取ると、1カ月ほどで脈拍数は70ぐらいに落ち着きます。2カ月もすれば、心臓は正常なポンピング活動ができるようになります。

首のこりが取れて、難病が治った患者さんとガッチリ握手する宮城先生

メニエール病が改善した人も!

 3例目は、大学病院に4年間通院してもめまいが治らず、その後も名だたる病院を転々としても改善が見られなかった男性です。

 このかたは首わしづかみで熱心に首をほぐしていたところ、2週間でめまいが完治しました。

 めまいは、耳の三半規管(さんはんきかん)のリンパ液(脳脊髄液(のうせきずいえき))の内圧が上がることで引き起こされると考えられます。その原因が、歯の噛み合わせの不具合から来る顎関節症(がくかんせつしょう)です。

 顎関節症は夜間の食いしばり、頭のそり返りを招き、脳脊髄液の循環障害を引き起こします。脳脊髄液の循環が悪くなると三半規管の内圧が上がり、めまい、ふらつき、メニエール病の症状が起こりやすくなります。そればかりか、不眠や認知症をも引き起こします。

 事実、首わしづかみの実践と、顎関節症の治療により、これらの症状を改善させた人はたくさんいます。脳脊髄液の循環がよくなり、三半規管の内圧が下がった結果だと考えられます。

 このほか、腰痛や背中の張り、冷えなども脳脊髄液の循環が悪くなると起こりやすい症状なので、首わしづかみでの改善が期待できます。

パーキンソン病の震えも収まった!

 パーキンソン病もそうした病気の一つです。ある69歳の男性はパーキンソン病と診断され、手の震えの症状がありました。やがて、一人でうまく歩くこともできなくなり、スタッフに支えられながらやっと歩く状態になりました。

 このかたには通院してもらいながら、嚙み合わせ治療に加え、首わしづかみを実践してもらいました。すると、通院10回目あたりから症状が少しずつ改善し始め、1年後には手の震えが収まりました。

 睡眠薬を飲まないと眠れなかった不眠も解消したそうです。その後、一人で歩けるようになって、仕事にも復帰できました。

 首の不調は、万病の元です。首わしづかみで、首のこりを取り、脳の血液循環、脳脊髄液の循環が改善すれば、原因不明と診断された病気・不調の多くも改善するのです。