アトピーの症状は全身の健康状態を反映する
アトピー性皮膚炎の治療には、全身の健康状態をみる必要があります。なぜなら、アトピーは皮膚だけの病気ではないからです。全身の健康状態がよくないため、それが皮膚の症状となって表れています。
私は、患者さんの健康状態を判断するものさしの1つとして、下あごの骨の内側にある「リンパ」を触診し、痛みがあるかどうかをチェックします。
顎下リンパ節を押すと、健康だと思っている人でも、99%は痛みを感じます。現代人の多くがストレスを感じており、また、スマートフォンの見過ぎやパソコン作業などで、長時間眠らないで、前傾姿勢になることなどで、リンパの流れが滞り、疲労物質がまっているからです。
特に、アトピー性皮膚炎の人は、健康な人より痛みを強く感じる傾向があります。皮膚の状態が悪い人ほど痛みが激しく、中には、軽く触っただけでも飛び上がるほど痛がる人や、「先生、何するんですか!」と怒り出す人までいるくらいです。
痛みがある人に問診すると、ほぼ共通して次のような生活上の問題を挙げられます。「寝起きが悪い」「昼間眠くなる」「あくびが出る」「疲れやすい」「甘いものが欲しくなる」「イライラする」「肩がこる」「寝つきが悪い」……。
これらの問題がある人は、自律神経のうち、活動時に働く交感神経が緊張しているのです。この交感神経の緊張を緩めてあげれば、全身の健康状態もよくなり、顎下リンパ節を押しても痛まないようになります。
私は数十年前から、交感神経の中継所といわれる「」にレーザー光を照射する治療を、アトピー性皮膚炎の患者さんに行ってきました。星状神経節とは、首の長さを3等分した下から3分の1のところ、のど仏の左右1~2㎝外側にあります。ここにレーザーを照射すると、交感神経の過緊張を緩和することができるのです。
この話は医療界でも知られていましたが、実際に星状神経節レーザーをアトピー性皮膚炎の治療に用いたのは私が初めてで、その効果を日本レーザー治療学会で発表しました。
これまで、1000例以上のアトピー性皮膚炎の患者さんにレーザー治療を行い、その多くによい結果が出ています。アトピー特有の皮膚のかゆみや赤みが消えたり、睡眠状態が改善したり、ステロイド剤から離脱できたりなど、とても多くの改善例があります。
集中力が上がり学校の成績もアップ!
レーザー療法はもちろん病院でしかできませんが、家庭で簡単にでき、レーザー治療と同じような効果が期待できる方法があります。それが「首の蒸しタオル療法」です。
首の蒸しタオル療法とは、文字通り、約40度に温めた蒸しタオルで、首全体を包んで温めることです。
私は患者さんには、この首の蒸しタオル療法と、じゅうぶんな睡眠を取るように指導しています。毎日1回、夕方に5分ほど行うだけで、よく眠れるようになり、生活のバランスが整ってきます。
その結果、アトピー性皮膚炎の症状が大きく改善した人はたくさんいます。また、重症のアトピー性皮膚炎が原因で、うつ症状が出たり、人と上手につきあえなかったりした人たちが、前向きになり、外向的になったという話もよく聞きます。
ほかにもこんな驚きのケースもあります。
ある10代の学生は、アトピー性皮膚炎だけでなく、すぐイライラする性格で、勉強への集中力があまりありませんでした。ところが首を温めて、しっかり睡眠を取るようになると、アトピー性皮膚炎が改善すると同時に、イライラも消え、集中力が上がり、テストの偏差値が50から70台へと急上昇したのです。彼はその後、医大に合格したそうです。
自律神経のバランスが整えば、アトピー性皮膚炎だけでなく、いろんな心身の不調が自然と改善していきます。イライラが解消したり、集中力が高まったり、うつが改善したりといったことがあっても不思議ではないのです。
そうした点から、私は、アトピー性皮膚炎の人はもちろん、そうでない人にも、首の蒸しタオル療法を勧めます。蒸しタオルでなくても、普通のタオルやマフラーで首を温めるだけでもかなり違います。
同時に睡眠をしっかり取ることと、甘いものはしばらく果物のみにすること。これらを実践するだけで、アトピーの改善はもちろん、体と心に変化が出てくるはずです。