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【五本指いい子】【焼酎風呂】は生きづらい人にお勧めの「脳の養生法」。脳の苦しみが和らぎ自律神経も整う!

脳の苦しみに有効な「脳の養生法」

 現代はストレス社会です。昔より便利で快適な生活が実現した一方、現代人はさまざまなストレスにさらされ、生きづらさを感じている人が少なくありません。その結果、心と体、自律神経のバランスがくずれ、「脳が苦しんでいる人」が増えています。

 私は精神科医として、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や自閉症、発達障害などの患者さんに接していますが、そのような患者さんたちは特に脳の苦しさを感じています。

 PTSDの患者さんは、心の傷が刺激されるようなことがあると、悪い記憶がよみがえり、突然パニックを起こしてしまうことがあります。過去の傷ついた体験の中に、現在の本人が吸い込まれてしまうのです。

これはパニックというより、フラッシュバックで、タイムスリップと呼ぶ精神科医もいます。急に騒ぎだしたり、自分で自分の頭を壁にぶつけたり、物を壊したりするので、本人はもちろん、その家族もつらいものです。

 しかし、このような患者さんだけでなく、人生の中で一度も傷ついたことのない人はいないでしょう。

 いじめや事故、仕事、人間関係など、ストレスをもたらすものは現代人のまわりにあふれています。脳の苦しみは決して他人事ではありません。

 精神疾患に対しては、近年はEMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)という手法が注目されるようになりました。EMDRは有効性が認められる治療法です。ただし、専門のトレーニングを受けた治療者が必要で、費用もかかります。

 そこで私は、自分や家族ができる方法をいくつか考案し、これを「脳の養生法」として患者さんや家族に勧めています。

 脳の養生法は、精神疾患の患者さんに限らず、「夜、ぐっすり眠れない」「イライラする」「何度も怒りが込み上げてくる」といった、さまざまな脳の苦しみや自律神経の乱れを持つ大人からから子どもまで有効です。

自分でやる養生法は心の自然治癒力を高める

 私がこのような養生法を考えたのも、医療とは、まず患者さん本人の養生が基本にあり、専門家の治療はそれに協力するかたちになるのが望ましいと思うからです。

 本来、人間にはよくない状態から回復しようとする自然治癒力が備わっています。例えば、手足に傷を負ったとき、医者は針と糸で縫い合わせ、不潔にならないようにガーゼで覆います。病気の治療はほとんどこれに類したものです。自然治癒力が発動しやすいように準備をしているだけなのです。

 これは外科に限らず、内科でも精神科の治療についても同じことが言えます。治療は医者の、養生は患者の範疇ではありますが、くっきりと分けられないものもあります。

ただ、治療が自然治癒力を当てにして行うのに対し、養生は自然治癒力を高める工夫ですから、養生のほうがより根本的と言えるでしょう。

 患者さんが養生することは、医療の主導権の一部が患者さんに委譲されることでもあります。これは、発展途上国にお金や物資をあげるより、技術を教えるほうが、自立につながる支援になるのと似ています。

 お金やものをあげても格差はなくならないので、技術を教え、自分でできるようになったほうがよいのです。

 私が勧める養生も、自分でできること、お金がかからないことをたいせつにしています。

 その中から「5本指いい子」と「焼酎風呂」の2つをご紹介しましょう。この2つは別々にやっても、両方をセットでやっても結構です。

「気持ちがいい」は本来の自分を見つける羅針盤

 養生法を実践する際のコツは、「気持ちがいい」という感じをつかむことです。養生法が自分に合っているかどうかは、「気持ちがいい」という自分の感覚で判定します。「気持ちがいい」と思ったら、その感覚にひたってください。

「気持ちがいい」という感じは、今の自分の心身にどのようなことがぴったりするのかを見つける、たいせつな羅針盤になります。

 自分にぴったりする事柄がわかってくると、自分は今どんな状態なのか、本来の自分はどんな人なのかが次第にわかってきます。

 中には「気持ちがいい」という感じをつかみにくい人もいるでしょう。「~したい」より、「~すべき」を優先して生きてきた人たちです。きっと親や教師、上司の期待や命令に応えようとがんばってきたのでしょう。

 そんな人たちにとって、「気持ちがいい」という感じをつかむのは、自分をたいせつにして生きる練習にもなります。

 どんなに苦しい状況にある人でも、やってみたら「気持ちがいい」「少しは楽になった」「ほっとした」——これも「気持ちがいい」の一種ですから、一瞬でもそれを感じられる人はぜひ続けてみてください。

 自閉症や発達障害のお子さんも「気持ちがいい」と感じると思いますので、お母さんお父さんが子どもに試してあげてください。

 ここで紹介する脳の養生法が、脳が苦しんでいる人の一助になれば幸いです。

現状より少しでも楽になるかどうかが重要

 悪いところを見つけてそれを正常な状態に戻す。それが従来の医学の常識です。しかし、精神医学は、そうした考え方ではうまくいかない病気が多々あります。自分の心身と自分を取り巻く環境が合わないために起こる病気が多くなっているのです。

 そうした病気は慢性的なものが多く、慢性的な苦しみは「どこが悪いのか」と探すやり方ではうまくいきません。「どうしたら少しでもよくなるか」という視点が必要です。

 ここでは、私がそうやって患者さんとともに手探りで工夫してきた養生法を2つご紹介しましょう。

一般的な精神医学の治療とは少し違ったアプローチですが、正しいか正しくないかと考えるのではなく、これをやると現在の自分が少しでも楽になるかならないかという視点で試してほしいと思います。

脳の興奮が鎮静!自閉症や発達障害にも効いた!足先をひねる「5本指いい子」

 最初にご紹介するのが、足指に行う「5本指いい子」です。これは気功の一種で、経絡治療(気の通り道である経絡を用いた治療)を応用したものです。

なかには熱心にやりすぎる人がいるので、力を入れずにやさしくやってもらうために、5本指いい子と名づけました。くれぐれも「よし、やるぞ!」と力まないことを念頭において始めてください。

実際に治療の現場で、患者さんにお勧めしているものです。

時計と反対回りになでるようにひねる

 ではやり方を説明しましょう。

【自分でする場合】

 まず、椅子に座った状態で、右足を左足のひざの上に乗せます。

 次に、ひざに乗せた足指の先端に、左手の5本の指を軽く当てます。

 続いて、足指に当てた手の指を、足指の先端のところで、ビンのふたを開けるのと同じ方向(時計と反対回り)にひねります。

これを足指1本に対し、10回ほど行います。

患者さんには1日に1~2回ほどするように勧めていますが、1日に何回やってもかまいません。

どの足指から始めても効果に変わりはありません。両足の指すべてに行ってください。

5本指いい子をやるとき、注意しなければならないのは、指をひねる方向を間違えないことです。

 ビンのふたが閉まる方向に指をひねると、ますます興奮してしまうので、逆効果です。

方向の間違いを防ぐには、実際にビンなどで開く方向を確認して行うといいでしょう。

疲れがひどく、考える力がなくなるほどぼーっとするようなときは、ビンのふたを締める方向にひねると元気になります。

しかし、現代人はおおむね興奮しっぱなしですから、たいていはふたを開ける方向になるでしょう。

【子どもにしてあげる場合】

「5本指いい子」は、子どもにしてあげることもできます。特に小さなお子さんは、お母さんやお父さんがひざの上に子どもの足を置いてやってあげるとよいでしょう。そのときは両足を同時にやっても結構です。

 なかには、足をさわられるのをいやがる子どももいるかもしれません。特に発達障害の子どもは、人から変わったことをされるのを嫌います。

 お母さんでもさわられるのをいやがるようなときには、無理に足指にふれる必要はありません。足指から少し指を離し、宙に浮かせて行ってください。足指に触れなくても、効果は同じように得られます。

 PTSDのフラッシュバックで、突然、騒ぎ出す子どもや、壁に自分の頭をぶつけるような子ども、自閉症で物を壊したりする子どもにこれをやってあげると、決まって「気持ちがいい」と言います。お母さんに「気持ちがよいから、5本指よい子をやって」とせがむ子もいます。

脳の興奮がしずまり自律神経が整う

5本指いい子をすると何が起きるかというと、ほとんどの患者さんの脳の異常な興奮がしずまってきます。

大人の場合、自分の脳の状態を注意深く観察すると、脳の異常な興奮が徐々におさまっていくのを感じとることができるでしょう。

 ビンのふたを開ける方向に指を回すと脳の興奮がしずまるのは、経絡治療で言う「瀉」と考えられます。つまり、多すぎる気(エネルギー)をすくって捨てているわけです。これとは逆に、体が弱っている人に気を補う経絡治療が「補」です。

 自律神経が乱れるのは、脳にいろんなストレスがかかっているからです。5本指いい子をやって脳の興奮がおさまれば、自律神経はおのずと平穏を取り戻します。自律神経が整えば、さまざまな不調も取れてきます。

「5本指いい子」は、次に述べる「焼酎風呂」と併用すると、より高い効果が得られます。

落ち込んだときにお勧め!悪い気を皮膚から出して心の平穏を取り戻す「焼酎風呂」

皮膚から「悪い気」が出て脳が涼しくなる 

 いろいろな悩みでどうしようもなくなったとき、リストカットをする人がいます。その人たちを見ていると、手首と足首に「悪い気」が溜まっており、どうやら自分なりにそれを排出しようとする行為のようです。

 私はふと思いついて、そうした人たちの手足を消毒用のアルコールで拭いてみました。すると、悪い気が消え、「頭がスッキリする」という人が数人いました。

 これをヒントに、皮膚から悪い気を排出する方法として考案したのが「焼酎風呂」です。手軽で安価、それでいて即座に効果を実感しやすい養生法の一つです。

 では、その手順を説明しましょう。

 まず、ぬるめの風呂(38℃~40℃)に、焼酎をおちょこ半分ほど(数ml)入れてください。焼酎はどんな焼酎でも結構です。また、いつも使っている入浴剤と併用してもかまいません。焼酎を入れたら、その浴槽に5分程度つかります。

 このとき、数を20数える程度でよいので、顔だけ出して首までお湯につけてください。顔も数回、湯ぶねのお湯で洗ってください。

 焼酎風呂から出たら、シャワーで流したりしないで、焼酎の粒子が皮膚についたまま体を拭きます。

入浴後は、世の中が明るくなったように感じるでしょう。なかには「頭がさわやか」「目がぱっちり」「スイスイ頭に入る」「脳が涼しい」といった感覚を得る人もいます。

 入浴ができない寝たきりの人にも、焼酎を数的垂らしたお湯で体を拭いてあげましょう。同じような効果を得られるでしょう。

 皮膚に焼酎の粒子がついていると、入浴後も皮膚から悪い気を排出する働きが続きます。排出された悪い気は、衣類やシーツに吸い取られるので、洗濯時に洗剤とおちょこ半分の焼酎を入れて洗ってください。これで悪い気はきれいに落とせます。

 焼酎を使うのは、人体に入っても問題がなく、安価で身近にあるとの理由で使っています。

 おもしろいことに、お酒を飲む人が焼酎風呂に入ると、ふだんの飲酒量が減ることが多いようです。焼酎風呂によって悪い気が排出されるため、ストレス解消にたくさんのお酒を飲む必要がなくなるのでしょう。

人は人、自分は自分と思えるようになる

 焼酎風呂も、5本指いい子と同じく気功法を応用したものです。

 気功では気は実在するものと考えられており、訓練をすれば見えるようになります。異論を唱える人もいるでしょうが、実在するか、しないかは特に重要ではありません。心身の養生を図るうえでは、どちらでもよいのです。症状が少しでも改善するという結果がたいせつです。

5本指いい子と焼酎風呂は、どちらも脳を落ち着かせる養生法です。5本指いい子は、脳の悪い気を直接排出して、脳の異常な興奮をしずめます。

 焼酎風呂は、皮膚から悪い気を排出させることによって脳をしずめます。焼酎風呂には、ぬるめの入浴が自律神経を整えることで脳が静かになる効果も期待できます。

 この二つは、別々に行っても効果を得ることができますが、併用するとさらに効果は高まります。

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)や自閉症、発達障害といった精神疾患のかたはもちろんのこと、職場でミスをして落ち込んだり、人間関係で悩んだり、学校で友だちにいじめられたりといった、心身ともガーンとショックを受けるようなことがあったときにやると、脳が静かになり心の平穏を取り戻すことができます。

 もちろん不愉快な気持ちは残るでしょうが、その不愉快な気持ちが現在の自分の心身を揺さぶらなくなります。人は人、自分は自分と思っておけばいいし、それが楽にできるようになるのです。

気持ちよくなければやめること

 おちょこ半分程度の焼酎なら、子どもが入浴しても問題はありません。アルコールにアレルギーのある人は、念のため、足湯に数滴の焼酎を垂らして試してみてください。

 これらの養生法のよいところは、自分でできる点です。病院に行き、治療者にしてもらう必要がありません。金もほとんどかかりません。

また、これは自分が自分に対して行うものですから、したくないときはしなくてかまいません。あるいは、親が子どもに対してするものですから、子どもいやがるようであれば、しなくてかまいません。

 試してみて「気持ちがいい」「少しでも楽になる」なら続けるし、「気気持ちが悪い」ならやめておくことです。脳の養生では、「気持ちがいい」で判断した結論が最も正しいのです。