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80歳からでも脳は育つ! 効率よく脳を刺激し一生成長させる「脳番地別5分脳トレ」(後編)

本記事の前編では、脳を機能別に8つの部位に分けた「脳番地」について、また、脳番地をまんべんなくトレーニングすると、高齢にあっても脳が成長するということについてお話ししました。

以降では、8つの脳番地別に、日常生活の中で手軽にできるトレーニング方法を紹介します。

前編から読むかたはこちら

思考系」脳番地のトレーニング

思考系脳番地の位置

朝、予算内に収まるように買い物をする

日常品の買い物に行くときは、あらかじめ予算を決めて、合計金額を暗算しながら商品を選ぶと、思考系脳番地のトレーニングになる。脳がクリアに働く朝に、散歩ついでに行うといい

自分の意見とは反対の意見も考えてみる

時事問題や身近な出来事について、自分が「こうだ」と思ったら、あえて反対の意見を考えてみる。その上で、どちらがより適切か検討すれば、思考系脳番地が鍛えられ、思考も柔軟になる

思考の目的や課題を与え、あえて難しいことを考える

 物事を深く考えることのほか、意欲、創造、集中、判断、計算といった高度な機能を担うのが思考系脳番地。

 思考系脳番地は「脳の司令塔」として脳全体の働きをリードし、ほかの脳番地に指示を下す役割をします。

 例えば、「次の連休に家族で小旅行をしたい」と考えれば、視覚系脳番地から新しい情報が、記憶系脳番地から過去の関連記憶が集められ、理解系脳番地で「どこに行くのがベストか」と分析されます。思考系脳番地からの指示が具体的であるほど、よい情報が集まり、実現の可能性も高くなります。

 脳全体の活性化は、まず思考系脳番地を育てることから始めましょう。脳に「思考の目的や課題」を与え、難しいことを考えて脳に負荷をかけるのが、思考系脳番地を鍛えるコツ。

 思考系脳番地をトレーニングすると、決断が早くなる、集中力がアップする、イライラが減る、同時進行が得意になる、チャレンジ精神が旺盛になるといったメリットもあります。

聴覚系」脳番地のトレーニング

聴覚系脳番地の位置

寝る前にラジオを聞く

就寝前に、寝室を暗くして布団の中でラジオを聞けば、「耳で聞くこと」だけに集中するので、聴覚系脳番地が活発に働く。ただし、入眠を妨げないよう、ラジオの音量は控えめにすること

InterFM(897Hz)毎週土曜21:30~22:00「脳活性ラジオ Dr.加藤 脳の学校」では、加藤俊徳先生の脳に効くお話が楽しめます。

ラジオや音楽など耳だけを集中的に使う時間を作る

 聴覚系脳番地は左右の耳の深部にあり、音声を捉えるだけでなく、音声を情報として理解し、記憶として定着させるための橋渡しをします。聴覚系脳番地が衰えると、音や言葉が情報として脳にインプットされず、聞き間違いが増えたり、人との会話を煩わしく感じたりします。

 聴覚系脳番地は、音声を意識的に「聞こうとすること」で鍛えられます。音声情報のみが届くラジオは、聴覚系脳番地のトレーニングに最適。「次に何を言うのだろう」と予測しながら耳を傾けるので、人の気持ちを推し量りながら会話をする訓練にもなります。ラジオを聞くことを習慣にして、1日の中に、耳だけを集中的に使う時間を設けましょう。

 また、右脳側の聴覚系脳番地を鍛えるには、音楽を注意深く聴くのが効果的です。オーケストラのバイオリンや、バンド演奏のベースなど、楽曲の中の特定の楽器の音を、追いかけながら聴いてみるとよいでしょう。

感情系」脳番地のトレーニング

感情系脳番地の位置

赤や明るい色のはでな下着をつけてみる

ワクワク、ドキドキと感情を豊かに動かすと、感情系脳番地が活性化する。人知れず手軽にできる方法としてお勧めなのが、明るい色やはでな柄の下着をつけること。それだけで気分も上がる

ドキドキ、ウキウキ、ワクワクすることをやる

 感情系脳番地は、喜怒哀楽や好き嫌いという感情を生み出し、他者の感情を読み取るときにも働きます。また、老化が遅く、感情を豊かに動かすことで、生涯、成長を続けます。

 感情系脳番地を上手に育てるポイントは、ネガティブな感情に振り回されないこと。怒りや悔しさ、悲しみ、不安といったネガティブな感情が高まると、思考系脳番地にも影響が及び、言動が不安定になります。

 ドキドキ、ウキウキ、ワクワクすることは、感情系脳番地を刺激し、ポジティブな感情を豊かにします。

 「最近、ドキドキ、ワクワクすることがない」という人は、ふだんとは違う格好をするのがお勧めです。外見をガラリと変えるのが恥ずかしければ、下着をはでなものに変えてみましょう。華やかでエレガントな下着をつけると、気分も若々しくなり、自分を愛おしく思う気持ちが芽生えて、自己肯定感もアップします。

伝達系」脳番地のトレーニング

伝達系脳番地の位置

音読をする

目で見た文章を読む音読は、伝達系脳番地のトレーニングに最適。新聞や雑誌の記事、好きな文書のほか、子ども向けの本を読む「ひながら音読」もお勧め。

思考系番地も刺激される。

目や耳から入ってきた情報をアウトプットする

 伝達系脳番地は、コミュニケーションに携わる脳。自分の考えや気持ちを他人に伝える役割を持ち、言葉だけでなく、絵や図、写真、映像、動作などで表現する場合にも働きます。

 目や耳からインプットした情報を、何らかの形でアウトプットするのが伝達系脳番地の主な仕事なので、音読はトレーニングにぴったり。

 文章を視覚的に捉える際に視覚系脳番地が、視覚情報の意味を把握するために理解系脳番地が、文章を一時的に記憶するために記憶系脳番地が、口を動かして声を出すために運動系脳番地が働き、同時に多くの脳の番地が使われます。

 伝達系脳番地は人と「つながる」ことで活性化します。逆に弱ると、言葉が出にくくなったり、気分がうつっぽくなったりします。

 コロナ禍で人と会う機会が減り、あまり会話をしていない人も多いでしょう。「最近さえないな」「気分がモヤモヤしているな」と感じる人は、ぜひ、簡単な音読を実行してみてください。

理解系」脳番地のトレーニング

理解系脳番地の位置

出かける前の5分間に整理や片づけをする

どこに何があるかを把握し、必要な物を取捨選択して適切な場所に配置する整理整頓は、視覚系脳番地と理解系脳番地を同時に鍛える訓練になる。制限時間を設けて集中して行うことがポイント

タイムリミットを決めて脳をフル稼働させる

 目や耳から入ってきた情報を集めて内容を分析し、理解に導くのが、理解系脳番地の役割。よい情報がいくら入ってきても、内容をきちんと理解できなければ、適切な思考や言動につながりません。脳のパフォーマンスを維持する上で、理解系脳番地の働きは非常に重要です。

 理解系脳番地のトレーニングとしてお勧めなのは、タイムリミットを決めて、身の回りの整理整頓を行うこと。「出かける前の5分間でやる」と決めれば、切迫感があり、理解や判断にスピードが求められるので、理解系脳番地がフル稼働します。

 理解系脳番地を生き生きと働かせるポイントは、好奇心です。「新しいことを知りたい、理解したい」という好奇心を持ち続けることで、理解系脳番地が活性化し、成長していくのです。「まだ自分が知らないことはたくさんある」と思って、子どものような気持ちで、いろいろな事柄に興味や好奇心を向けるようにしましょう。

運動系」脳番地のトレーニング

運動系脳番地の位置

片足バランス体操をする

片足立ちでバランスを取るために、全身に注意を向けながら重心や下半身の力の入れぐあいを微妙に調節するので、運動系脳番地が鍛えられる。転倒予防や足腰の筋力アップにも役立つ

【片足バランス体操のやり方】

日常生活でしない体の使い方をする

 運動系脳番地は、ほかの脳番地と連携して、体を思い通りに動かす働きを担っています。運動系脳番地は、足を動かす脳番地、手を動かす脳番地、口や顔面を動かす脳番地など、体の部位ごとに細分化されており、その人の利き手やふだんよく行う動作の違いなどによって、よく発達している部分が異なります。

 運動系脳番地を全体的に鍛えるお勧め方法は、「片足バランス体操」です。目を閉じて片足立ちを行うことは、日常生活ではほとんどなく、体のバランスを取るために全身の状態に注意が向くので、運動系脳番地のいい訓練になります

 歩いていて急に自転車が横切るなど、とっさの場面で難を避ける瞬発力もアップします。

 ふだんとは違う体の使い方をするのも、運動系脳番地のトレーニングになります。利き手とは逆の手で歯磨きをするなど、日常動作を利き手と反対の手でやってみると、思わぬ難しさに、運動系脳番地が大いに刺激されます。

視覚系」脳番地のトレーニング

視覚系脳番地の位置

歩きながら赤い靴を履いている人を探す

 街を歩くときは「何かを探す」「何かをカウントする」という目的を設定すると、自然と注意深く「見る力」が養われる。赤い靴など、ちょっと珍しいものをカウント対象にする

ある特徴や特定の数字を探してカウントする

 人間が外部から得る情報のうち、9割近くは視覚情報だと言われています。視覚系脳番地は、目で正確に物を見て、情報として役立てる働きを担っています。

 左脳側の視覚系脳番地では、主に文字を読んだときの言語情報を、右脳側では画像や映像などの視覚情報を捉えます。MRIで見ると、7割の人は視覚系の右脳側より言語系の左脳側が発達しています。

 視覚系脳番地を鍛えるポイントは、主体的に、目的を持って「見る」こと。「見るものを限定する」「分析するために見る」などの目的を設定することで、脳がピンポイントに使われ、より強く鍛えられます。

 街で見かけた人から、ある特徴を備えた人を見つけてカウントするのは、視覚系脳番地のよい訓練になります。電車やバスの車窓から、何か(特定の数字など)を探してカウントするのも効果的です。

 その場合は、視覚系脳番地の動きを捉える部分や、眼球を動かす働きがより刺激されます。

記憶系」脳番地のトレーニング

昨日の出来事のベスト3を思い返す

 前日の出来事を思い出すことで記憶系脳番地が活発に働き、ベスト3を順位づけすることで、より脳に負荷がかかる。決めたベスト3を日付とともにノートに記しておくと、記憶が強化される

思い返すことで記憶を強化し積み重ねる

 記憶系脳番地は、記憶の中枢と呼ばれる「海馬」と、その周辺にあり、知識を蓄積したり、記憶をひねり出したりすることで活性化します。

 記憶系脳番地のトレーニングとしてお勧めしたいのが、昨日の出来事のベスト3を思い返すこと。今日のことはすぐに思い出せても、昨日の出来事は、ちょっと考えないとなかなか思い出せないのではないでしょうか。

 私たちは毎日、新しい体験や楽しい出来事を経験していますが、それを思い返すことをほとんどしていません。1日の出来事を思い出して、脳の表層に出すことによって記憶系脳番地が活発に働き、記憶も定着します。

 前日のエピソードを思い返すことで、記憶が強化されるだけではなく、自分がそれなりに変化のある楽しい日々を過ごしていることを再確認でき、人生の充実感にもつながります。楽しい思い出を毎日一つずつ記憶に積み重ねていくつもりで、この脳トレに取り組んでみましょう。

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