物忘れの多発は脳が出すSOSサイン
「あの人の名前が出てこない」
「あ、うっかり忘れていた!」
日常生活でこういうことがあっても、「歳をとって忘れっぽくなったなあ」で済ませていませんか?
前項で述べたように、これは脳が過労状態に陥って、脳機能が慢性的に低下しつつある、とても危険な状態です。

しかし、インプットした大量の情報を整理する時間を脳に与えられれば、脳過労状態は解消され、脳のパフォーマンスもグンとよくなります。
脳過労を解消する方法として、私は「ニューロビクス」を勧めています。ニューロビクスとは、アメリカの研究者が作った造語で、ニューロン(脳神経細胞)とエアロビクスを足した言葉です。
脳の機能を改善させるエクササイズのようなものと考えてください。運動というほど大げさなものでもなく、習慣とも言えるようなごく簡単な手法ばかりです。
ニューロビは脳過労が解消できる「脳のゴミ取り習慣」とも言えますが、それだけでなく、脳機能をバランスよく鍛えることもできます。脳は体のほかの能力と違って、70歳からでも80歳からでも鍛えることで機能が高まる器官です。
しかし、脳過労、脳のゴミ屋敷状態を放置すれば、60代や70代から認知症の症状が出始める人もいます。たった今から、どう脳と向き合っていくかが今後の人生を大きく左右するのです。
これから代表的なニューロビ習慣をご紹介しますので、ぜひできる範囲で取り入れてみてください。
ニューロビ習慣❶仕事の前後に「プチぼんやりタイム」を作る
仕事の前後に、2~3分でかまいませんので、「プチぼんやりタイム」を設けてください。ぼんやりとこれから起こることを頭の中でシミュレーションしたり、終わったことを反省したりするとき、脳の中で情報の整理が行われます。
アメリカのワシントン大学の研究で、何もせずぼんやりしているときの脳は、意識的に活動や作業をしているときの15倍ものエネルギーが消費されていることがわかりました。ぼんやりしている時間に、脳はそれほどのエネルギーを消費して、情報の整理を行っているのです。
この視点から見ても、脳にとっては仕事や作業など活動をしている時間よりも、ぼんやりしている時間のほうがずっとたいせつであることがわかります。
大事な仕事のときほど、前後にぼんやりタイムを作ってください。そうすることで心にも余裕ができ、脳のパフォーマンスも向上するのです。

ニューロビ習慣❷検索する前に3秒だけ自分で考える
「あの映画に出ていた主演の俳優、誰だっけ?」と思ったとき、すぐスマホで検索するのではなく、3秒だけ自分で考えてみてください。それで思い出せばそれでよし、わからない場合は諦めて検索すればOK。
ちょっとしたことですが、脳の「思い出す力」や「答えにたどり着く力」を鍛えることにつながります。たった3秒でも、毎回となるとちりも積もって脳にはけっこうなトレーニングになります。
このわずか3秒が、数十年後、皆さんの脳力維持に大きなプラスとなって現れるかもしれません。
夏目漱石もニューロビを実践していた
ニューロビ習慣❸あてもなく散歩をする
のんびりと歩いていると、頭の中にいろいろなイメージが浮かんでは消えていくようなことがありませんか? これは、脳が「ぼんやりタイム」に入っている証拠。散歩は体を動かしながら、脳を休ませられるまさに理想のニューロビです。
アリストテレスや夏目漱石、西田幾多郎など、昔の哲学者や作家には歩きながら想を練った人が多かったそうです。散歩すると脳の働きがよくなることを知っていたのかもしれません。
ニューロビ習慣❹高いところに上って景色を眺める
「なんだか気分が晴れない」「もやもやする」というときは、ビルの屋上でも、山や丘の上でもいいので、高いところに上ってぼんやりと下界を見下ろしてみてください。

気持ちがスッキリしてきませんか? 仕事でのアイデアが浮かんだり、悩みの解決策が見えてきたりするかもしれません。
私たちは見晴らしのいい場所に立つと、目の前の景色だけでなく、頭の中で考えていることもいつもと違った広い視野で捉えようとします。すると、鳥瞰視、客観視の力が高まり、ひらめきが浮かぶようになるのです。
ニューロビ習慣❺単純作業に没頭してみる
「書類を次々クリップで留める」「たくさんの豆の皮を一つひとつむき続ける」「お風呂のタイルを1個1個きれいに磨く」など、ひたすら単純作業がするのが好き、という人は多いのではありませんか?
これは脳が喜ぶ時間だからです。あまり頭を使わなくていい単純作業に没頭していると、いつの間にか頭の中が静まって、ぼんやりタイムに入っていきます。
「ただボーッとするのが難しい」という人は、頭がからっぽになるような単純作業に没頭してみてください。
ニューロビ習慣❻「やりたいことリスト」を書き出す
誰にでも「ずっとやりたいと思っていること」や「時間があればチャレンジしたいこと」があると思います。そうしたことをたくさん書き出してリスト化しましょう。
「あの資格が取りたい」でもいいですし、「おいしいと評判のあのお店で食べたい」でもなんでもかまいません。リストを作っているうちに情報が整理されて、「これは今ならできるな」とか「これは本格的にやってみたいので計画を立ててみるか」とかいうものも出てくるはず。
やりたいことを書き出すことで、実現に向けて意欲が出てきます。こうした意欲が脳を刺激するのです。
ニューロビ習慣❼常に「マイブーム」を持ち熱い気持ちで追い求める
「マイブーム」とは、自分だけの個人的なブームのこと。他人にはわからないかもしれませんが、自分にはものすごく重要なことです。「自分にしかわからない価値」を追い求めているわけであり、これはとても脳を活性化します。
カフェが好きなら「近所のカフェのお勧めメニューをリスト化する」でも、スポーツ好きなら「5年後のサッカー日本代表を考える」でも、マイブームの対象はなんでもかまいません。何か好きなもの、熱中できるものを作って、とことん追い求めてみてください。
ニューロビ習慣❽お風呂につかって1日を振り返る

ぜひ入浴をシャワーで済ませずに、お風呂にゆっくりつかって、リラックスしてください。温かいお風呂につかりながらぼんやりと1日を振り返ると、脳には最高の時間となります。
もう一つ、お風呂のいいところはスマホやPCから離れられて、情報をシャットアウトできること。防水機能つきのスマホでも、お風呂には持ち込まないようにしましょう。