3食食べても実は栄養不足!
日本は世界有数の長寿国として知られています。しかし、医師として不安に思っていることがあります。
それは″長生きできても健康とは限らない〟ということです。
その先例といえるのが、「沖縄クライシス」です。沖縄県は、世界屈指の長寿地域として知られていました。しかし、10年ほど前から、若い世代を中心に、伝統的な沖縄料理よりも、ファストフードや手軽なおにぎり、パン、うどんなどを好むようになりました。また、米軍の影響もあって肉の消費量の増加が進みました。
すると、糖尿病や高血圧などになる人が増えたのです。このような食事では、どうしても糖質の比重が高く、食物繊維やビタミン、ミネラルが不足します。
これでは「3食、きちんと食べている」という人でも、栄養は満足にとれていないに等しいのです。
ですから、「3食の中で1~2食は、食物繊維・ビタミン・ミネラルが豊富な食品を食べましょう」と提案してきました。とはいえ、例えば野菜ばかり食べるのは、正直しんどいし、お米も食べたいですよね。
そんなときの救世主として、私がお勧めしている食品の一つに「オートミール」があります。
食物繊維、たんぱく質ミネラルが豊富!
オートミールとは、オーツ麦(燕麦)をつぶして食べやすくした食品です。白米や小麦粉と比較すると、食物繊維やたんぱく質、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれています。
なかでも、注目すべきは食物繊維です。食物繊維は「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2種類に分類されます。
不溶性食物繊維は、水分や老廃物などを吸って膨らみ、腸を刺激することで便通を促します。一方、水溶性食物繊維は、血糖値の上昇や脂肪の吸引を抑制するため、コレステロール値の低減が期待できます。腸にいる善玉菌の〝エサ〟にもなり、腸内環境の調整にも役立ちます。
健康を維持するためには、どちらかに偏らず、意識して2種類の食物繊維を摂取することがベスト。
その点オートミールは、どちらの食物繊維もバランスよく含んでいるので、理想的な食材なのです。 また、水溶性食物繊維には、いくつかの種類があります。オートミールにはその一つ「β‐グルカン」が豊富に含まれていることも特徴です。β‐グルカンは、先にご説明した血糖値の上昇などを抑制するほか、体内の不要なものを包み込んで排出する働きがあります。
私の専門である漢方的な観点からも、オートミールの原料であるオーツ麦には「補益脾胃」、つまり消化を促すエネルギーを与える効能があるとされています。
オートミールは、健康維持はもちろんダイエットにも効果的な優れた食材の一つと言えるのです。
当院の患者さんにも勧めている
ここまでお読みいただいた読者さんのなかには、「オートミールが健康にいいことは分かったけれど、おいしくないんだよね」「お腹いっぱいにならなそう」……。
そんなふうに思う人も少なくないと思います。しかし、私もこれぞうさんの「米化」を実践して驚きましたが、まるで、もちもちのお米のような食感になり、とてもおいしくいただけました。
先述した食物繊維が多く含まれているおかげで、胃と腸にとどまる時間が長く、意外にも満腹感が長く続きますし、何よりレシピも豊富で飽きません。栄養成分も文句なし、調理も簡単で食べすぎも抑制できる三拍子揃った食品なので、最近は当院の患者さんにお勧めすることも増えました。
ただし、1点だけ注意が必要です。胃腸が弱い人は、オートミールに含まれる食物繊維の影響で、胃もたれやガス腹(膨満感)が現れる可能性があります。ですから、体質や体調に合わせて量を調節し、胃もたれなどが現れたら無理をせず、食べるのを中止してください。
基本的な食べ方としては、1日の食事のうち、1~2食の主食をオートミールにするとよいでしょう。
ダイエットや腸の健康のためには、特に夕食でオートミールを食べることをお勧めします。