2021年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』でも話題となり、2024年からは新1万円札の肖像になる明治・大正・昭和の大実業家・渋沢栄一。彼が82歳から毎日実践し、88歳のときに「そのおかげで健康を保っている」と推奨した健康体操があります。
それは、東京・小石川で小さな寄宿舎を営んでいた坂本謹吾という人が開発し、さまざまな病気や症状の回復に効果を発揮した健康体操「坂本屈伸道」。体を屈めて、おなかをめいっぱい凹ませて、ゆっくり戻し、上体を天に伸ばします。「自然治癒力が高まる」と、現代の医師も太鼓判を押します。
名医も絶賛!「長生き体操」は優れた養生法で自然治癒力を高め不調を改善する
『坂本屈伸道』の本には、脳溢血から痔まで、心身のあらゆる病気や不調に効果があることが、具体的な症例報告とともに紹介されています。
❶脳溢血 ❷心臓病 ❸肺炎、肋膜、呼吸器病 ❹神経衰弱症 ❺リウマチス ❻糖尿病 ❼動脈硬化症 ❽腎臓炎 ❾胆石病 ❿胃腸病 ⓫胃腸の健康 ⓬盲腸炎 ⓭脊髄膜炎 ⓮嗜眠性脳炎 ⓯脂肪過多症 ⓰目の痛み ⓱痔
また、野口英世や、生理学者の永井潜、伝染病学の権威である二木謙三など近代日本の医療を確立した大家の面々が、坂本屈伸道を推薦するコメントを寄せています。
■坂本屈伸道を推薦した当時の医療の大家
なぜ、坂本屈伸道がこれほど幅広い効果があるのか、当時の最先端の西洋医学を修めた医学博士や医師たちが支持したのか、読者の皆さんは不思議に思われるかもしれません。
しかし、私にはその理由がわかります。先に結論をいうと、坂本屈伸道は、誰でも実践できる養生法として、とても優れているからです。
私の病院では、ホリスティック医学を実践しています。ホリスティック医学とは、体の部分を診るのではなく、生命ある人間の体を丸ごと全体として捉え、医者と患者さんが一緒になって命のエネルギーを高めていくことです。そのために、病院が提供する治療以外に、患者さん自身が行う養生法も取り入れています。養生法の柱となっているのは、気功、呼吸法、太極拳。私自身も長年これらを実践してきました。
坂本屈伸道の動作は、私も実践していた「調和道呼吸法」によく似ています。調和道呼吸法の息法の1つ「小波浪息」は、ゆっくり息を吐きながら体を前に屈めていき、息を吐き切った位置から体を起こし、伸び上がるようにして息を吸い、みぞおちをゆるめて腹を膨らませます。本には呼吸のやり方を詳しく説明していませんが、体の動きを意識して行うと、自然と呼吸もついてきます。
続けるうちに自然治癒力が高まる
坂本屈伸道の効果として当時の大家の多くが挙げているのが、血行促進と内臓のマッサージ効果です。
人間の体は、頭蓋内腔・胸腔・腹腔という3つの空間でできています。この3つの空間の内圧をバランスよく適正に保ち、なおかつ呼吸とともにリズミカルに変動していることが、健康維持のために重要です。坂本屈伸道を行うと、胸腔と腹腔を隔てる横隔膜が動き、腹腔を包む腹筋も動きます。これにより、胸腔と腹腔の内圧がリズミカルに変動し、その中にある内臓も、マッサージを受けているような心地よい状態となり、血液の流れもよくなるのです。
また、坂本屈伸道を行うと、上半身がリラックスして、下半身が安定します。上半身の余分な力みが抜け、下腹にある丹田に気が充実した状態を「上虚下実」といい、これは体の内部エネルギーが高い状態であり、生命場の乱れを整える自己組織化力も高まります。坂本屈伸道は、体の理想的な状態である上虚下実をつくるうえでもよいと思います。
さらに、吐く息を意識して坂本屈伸道を行うことによって、自律神経のうち、リラックス状態を司る副交感神経の働きが高まります。その結果、ストレスや緊張によって過剰になりやすい交感神経の働きが抑えられ、自律神経のバランスの乱れも改善されていきます。
私は、坂本屈伸道は広い意味での気功といえると思います。気功の3要素は「調身・調息・調心」です。意識して姿勢を整えること、呼吸をコントロールすること、心を整えることを通して生命エネルギーを高め、生命場の歪みを正して自然治癒力を高めることが、養生法としての気功の目的です。
坂本屈伸道には調身・調息・調心という気功の3要素が揃っています。やり方が簡単で、誰でも家で手軽にできる点も魅力です。続けるうちに自然治癒力が高まり、病気に限らず、その人が困っている不調が改善されていくと思うので、ぜひ実践してみてください。