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便通・睡眠と【心臓病】の関係 ~便秘・おならが臭い・睡眠5時間以下・ いびきがひどい人は要注意!

おならが臭いと要注意

 体調のバロメーターである快食・快眠・快便は、心臓の健康とも大いに関係しています。ここでは便通と睡眠について、心臓病との関係を見ていきましょう。

 人間の腸内には約100兆個もの腸内細菌が存在し、善玉菌、悪玉菌、日和見菌といったさまざまな細菌がバランスを取りながら生態系を形成しています。

 腸内細菌のバランスが崩れると、主に余ってしまった動物性たんぱくを腸内細菌が代謝してTMAO(トリメチルアミン—N—オキシド)という物質を産生します。

 このTMAOの濃度が高いと動脈硬化が進み、心臓や血管の病気の発症が促進されることが明らかになっています。

 また、心不全(※1)の患者さんと健常者の便を比較した研究では、心不全の患者さんの便には病原性が高い細菌が増加していました。心不全の病状が悪い患者さんほど、その傾向が強いことがわかっています。

※1…心筋梗塞や心臓弁膜症、心筋炎などの心臓のさまざまな病気や高血圧などが原因となり、引き起こさせる状態

 さらに、まだ確かなエビデンス(科学的根拠)があるとはいえませんが、海外では「便秘の重症度が上がれば上がるほど心臓や血管の病気が増える」との報告があります。

 心臓に不調を抱えている人にとっては、便秘といきみが、心筋梗塞など命に関わるような心臓病の引き金につながりかねないのです。

 加えて、便秘は食生活の乱れの現れでもあります。ドカ食いや偏った食事といった食生活のアンバランスさが続くと、高血圧、高血糖、高LDLコレステロール、肥満など心臓病のリスク因子である生活習慣病につながり、便通異常も招きます。

 つまり、排泄が不安定で便秘がよく起きる人は、心臓病を発症するリスクも高まるのです。

 腸内細菌のバランスが整っていて腸内環境が良好であれば、排出もスムーズです。

 いちばん簡単な判定法は「おならが臭いかどうか」です。

 臭い場合は、腐敗したものが腸内に残っていて、毒素=メタンガスが産生されているということ。

 おならが臭い人は食生活の見直しと改善を行い、腸内環境を整えることをお勧めします。それが、心臓を守ることにもつながるのです。

 腸内環境を整えるには、食物繊維を多く含む野菜や玄米などをふだんから積極的にとることと、乳酸菌が豊富な納豆やヨーグルトなどの発酵食品を取り入れることが有効です。

発酵食品は腸内環境の改善にお勧め

夜型生活で睡眠が少ないと心臓の負担が増える

 睡眠と心臓病も深い関係があります。

 1日の睡眠時間が5時間以下の人は心臓病の発症率が上昇し、4時間以下になると冠動脈疾患(※2)による死亡率が上がることがわかっています。睡眠時間が7~8時間未満の人と比べると、約2倍にあたります。

※2…心筋の酸素不足により胸の痛みの発作が起こる病気

 睡眠不足が心臓にダメージを与える理由はいくつも考えられますが、中でも大きな要因が、自律神経のバランスが崩れてしまうことです。

 睡眠不足になると、緊張・活動状態をつかさどる交感神経が優位になっている時間が長くなり、神経伝達物質で、血圧を上昇させるアドレナリンが大量に分泌されます。

 つまり、心臓の負担が増えて疲弊し、動脈硬化が促進されてしまうのです。

 私の経験でも、心臓の手術を受けるような患者さんは、夜型の生活をしている人が多い印象を受けます。若い世代だけでなく、高齢者も同様なので、やはり、そうした「交感神経優位」の人が心臓のトラブルを招きやすいといえるかもしれません。

 どうしても眠れない場合は睡眠薬が有効なケースもありますが、安易に使い始めてしまうと、今度は逆に心臓へのトラブルを招きかねません。

 実際、アメリカでは、ある種の睡眠薬に依存している患者さんは、心臓発作のリスクが50%アップするという研究報告も出ています。

 夜になっても眠れない、じゅうぶんな睡眠を確保できないという人は、睡眠を促してくれる自分なりの「きっかけ」を探すことをお勧めします。

 就寝前に自分が眠くなるようなアロマを利用したり、眠気を催すような音楽を流したりしてもいいでしょう。心身がリラックスできるような「きっかけ」を見つけたら、就寝のタイミングに合わせてそれを日課すると、徐々に睡眠習慣が身につくはずです。

体の右側を下にした横向きの姿勢で寝ると心臓の負担が軽くなる

閉経後の女性は睡眠時無呼吸症になりやすい

 夜間のいびきがひどい、睡眠をじゅうぶんとっているはずなのに日中眠くてしかたがないという人は、睡眠時無呼吸症候群(※3)の可能性があります。40~60代の男性に多くみられますが、女性も閉経後に増加します。

※3…夜間の勤務中に無呼吸と低呼吸(いびき)を繰り返す病気

 この病気で最もダメージを受ける臓器が、心臓なのです。

 睡眠中に呼吸が何度も止まると血液中の酸素が不足し、体は酸欠状態に陥ります。

 すると、心臓はフル稼働で血液を全身に送り出すことになり、確実に疲弊します。

 実際、睡眠時無呼吸症候群の人の半数近くが、睡眠中に不整脈を起こしているといわれ、中には突然死を招くような危険な不整脈が起こることもあります。

 睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、医療機関できちんと検査と治療を受けることをお勧めします。

 ちなみに、心不全の人や血圧が高めの人は、右側を下にした横向きの姿勢で寝ると、心臓にかかる負担が軽くなります。

 心臓は体のやや左側にあるため、体の左側を下にして横向きに寝ると、心臓が圧迫されて血圧が上がりますが、右側を下にして寝ると、心臓は圧迫されず血圧も下がるのです。