タコやウオノメ、外反母趾を軽く考えない!
私が理事長を務める下北沢病院は、アジアで唯一の「足の総合病院」です。これまでに、3万人もの足を診察してきました。
来院される人の足の症状はさまざまですが、タコやウオノメ、外反母趾(足の親指が小指側に変形した状態)で悩む人は多くいらっしゃいます。
こうした足の症状は、内科の病気に例えるとカゼのような軽い病気と考えられがちです。しかし、「カゼは万病のもと」。こうした足の症状を決して軽く考えてはいけません。
例えば、外反母趾で左足の親指が変形し、足の裏が体の右側に傾いた場合には、足首の関節は左側に曲がらないとバランスが取れません。
足が変形すると、バランスを取るために骨や関節が変形してしまうのです。その状態を放置して日常生活を送っていると、各関節がバランスを取る方向に動くため、負荷がかかっている部分の変形が進みます。
そして、ある日、それが痛みとして現れるのです。体に痛みが現れると、体は自然とその部分をかばう動作を取ります。それによって、ますます変形が進み、余計に痛みが出るという悪循環に陥ってしまうのです。
場合によっては、歩けなくなってしまうこともあるでしょう。歩くことは、人間の生活を支える最も基本的な動作です。
血行を促進する効果や心肺機能のトレーニングにもなりますし、また人とのコミュニケーションにも密接に関わっています。歩行によって、人は健康の基礎を作り、かつ他者との交流を保っているとも言えるでしょう。
100歳になっても歩ける足を作る
あなたが100歳になっても自分の足で歩くためには、足のメンテナンスが必要です。そこで、私がお勧めするのが「ショートフット」(足裏伸ばし)です。
このエクササイズで鍛えるのは、足の裏側にある内在筋という筋肉です。内在筋には、足のいろいろな部分にかかる圧を緩和させる働きがあります。全身の土台となる筋肉なのです。
内在筋を鍛えれば、足の裏の筋肉が細かく協調して適正なバランスを取れるようになるため、タコやウオノメ、外反母趾などの予防や改善ができます。高齢者の転倒予防や、認知機能の維持にもつながります。
また、冷えやむくみの解消も期待できるでしょう。このエクササイズを多くの患者さんに行ってもらうと、「こんな簡単な運動で、これほど大きな効果があるんですね」と、好評でした。
例えば、ある高齢の男性は、転倒して以来、室内ですら歩くことが怖くなり、入浴も週に一度にとどめていました。このかたが、エクササイズを数週間続けると、つまずくことが少なくなり、毎日、入浴できるようになったのです。
一般的に50歳を過ぎ、何もケアしていなければ、足はどんどん弱体化していきます。しかし、ショートフットのようなエクササイズによって、足を若返らせることはできるのです。
足の健康状態が全身の健康を現す
ショートフットを実際に行ってみると、最初はうまくできない人が大半でしょう。ここであきらめず、続けることが大事です。続けていくと、足の親指をはじめとする各指が、自在に動くようになります。
毎回、「足の親指を下ろす」と意識していれば、少しずつジワジワと動くようになっていくのです。
ショートフットに慣れてきたら、「アキレス腱伸ばし」にも挑戦するといいでしょう。歩行をスムーズに保つためには、足首の柔軟性もたいせつだからです。
やり方は簡単です。壁を正面に立ったら、両腕を伸ばして両手を壁につけ、左足を1歩下げます。左足のつま先はまっすぐ前に向け、ひざを曲げず、かかとを浮かさないのがポイントです。
この体勢のまま、両手に体重をかけ、右ひざをゆっくり曲げ、左のアキレス腱を伸ばしていくだけです。この姿勢を30~60秒保ちます。反対の足も同様に行ってください。
足の健康は、全身の健康状態に直結します。いつまでも丈夫な足を保つため、ここでご紹介したエクササイズを続けていきましょう。
「ショートフット」(足裏伸ばし)のやり方
1 イスに浅めに座る。足は肩幅ぐらいに開き、全ての足の指を床に下ろす
2 全ての足の指を大きく反らす。このとき、足裏のアーチを強く引き上げるように意識する
3 ②の状態から親指だけ下ろす。他の指はピンと反らし、アーチを引き上げたままにしておく
4 アーチの力を抜かないまま残りの4本の指を下ろす
5 床をつかむようにアーチに力を入れ、全ての指の付け根を曲げて、ギュッとつま先を持ち上げる
これを5回繰り返す。左右の足を替え、同様に行う。