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【樺沢紫苑】スマホ漬けを脱する脳習慣①~ベストセラー精神科医が伝授!

「幸せ」とは脳内で幸福物質が出ている状態

 私は精神科医として、脳科学者として、幸せとは真逆な状態であるメンタル疾患の患者さんの「苦しみ」を通して、「幸せとは何か?どうすれば幸せになれるのか?」というテーマについて、この30年間、考えてきました。

 スマホやゲームの話に入る前に、私が考える「幸福の正体」について説明しましょう。

 私たちが「幸せ」を感じるとき、脳の中では、なんと100種類以上もの幸福物質が出ています。中でも、私たちの日常的な幸福感を構成する主な脳内物質として、特に注目されるのが、「ドーパミン」「セロトニン」「オキシトシン」です。

 この3種類の幸福物質は、それぞれ性質が違います。ドーパミンが出ていると、心臓がドキドキするような高揚を伴う幸福感をもたらします。

 セロトニンが出ていると、さわやか、安らかな、心がホッと落ち着く穏やかな幸福感に満たされます。

 オキシトシンが出ていると、人やペットなどとの「つながり」や「愛情」、あるいは赤ちゃんを抱っこしているときのような、愛に包まれた幸福感が得られます。

 ドーパミン、セロトニン、オキシトシンなどの脳内物質が十分に分泌されている状態で、私たちは幸福を感じます。

 つまり、脳内で幸福物質が出た状態が幸せであり、幸福物質を出す条件というのが、すなわち「幸せになる方法」と言えます。

「幸福の三角形」をしっかり作り、育てる

 3つの幸福物質がもたらす幸福感の違いを、詳しく見ていきましょう。

 ドーパミン的なイメージの幸福とは、何かを達成し、手に入れたときの喜びや幸せ。お金、成功、達成、富、名誉、地位などの幸福です。

 セロトニン的なイメージの幸福とは、ひと言で言うと「健康の幸福」。心と体の健康です。

 オキシトシン的なイメージの幸福とは、つながりと愛の幸福。友情、人間関係、コミュニティへの所属などの幸福です。

 3つの幸福には、優先順位があります。最優先すべきは、セロトニン的幸福。健康こそすべての土台です。

 その次に来るのが、オキシトシン的幸福。家族や仲間とのつながりです。

 お金や成功といったドーパミン的幸福は、セロトニン・オキシトシン的幸福の土台をしっかり固めた上に積み上げていくべきものです。

小さくてもいいから幸福の三角形をしっかり作る

 この優先順位を間違うと、どうなるか。仕事人間で自分の健康を顧みないと体やメンタルの病気になりますし、家族をないがしろにして家庭崩壊を招いては、やっぱり幸せになれません。

 自分をたいせつにし、家族を大事にしたうえで、仕事をがんばるという生き方が、幸せになる王道である「幸福の三角形」なのです。

 なお、3つの幸福は、多かれ少なかれ、誰もが持っているものです。たいせつなのは、そのバランス。小さくてもいいから幸福の三角形をしっかり作る。そして、その三角形を大きく育てていくことが、幸せになる秘訣(ひけつ)です。

ドーパミンの光の側面と闇の側面にどうつきあうか

 スマホやゲームに夢中になっているときの楽しさは、ドーパミン的幸福です。スマホを見るだけでドーパミンが出ます。

 ドーパミンには、幸福物質という光の側面と、依存症の原因物質という闇の側面の2つの顔があります。何かをがんばって「やったー!」という達成感を得たとき、ドーパミンが出ています。

 これが「もっとがんばろう!」というモチベーションになり、より難しい課題に挑戦し、自己成長していくことができます。

 その一方で、ドーパミンは「もっとやりたい」という欲求を駆り立てます。ドーパミン的幸福は漸減する(しだいに減る)という特徴があり、同じ刺激を得ても、次にはより多くの刺激がないとドーパミンは出ません。

 そのため、より強い刺激を求めて、ハマっていくのです。欲求がお酒に向かって暴走すればアルコール依存症に、スマホに向かえばスマホ依存症になります。

 スマホやゲームをだらだらやめられないあなたが心配しているのは、依存症のことでしょう。スマホやゲームが、やめたくてもやめられない、依存を招きやすいものであることは確かです。

 目を使う行為は脳を興奮させ、強い光は脳を激しく興奮させます。「のめりこみ」が社会問題化しているパチンコやパチスロと同じで、ゲームも強烈な光の点滅やはでなアクションなどの演出で、やめられなくなるように作られています。

 しかも、いつも手元にあるので、つい手が伸びてしまいます。現代人にとってスマホやパソコンは生活に欠かせないものですから、「やめるべき」という議論は現実的ではありません。

 やめなくてもいいけれども、道具としていかにうまく使いこなすか、自分にとって有意義で害のない使い方、向き合い方を考え直すべきでしょう。

 ただ、何事においてもそうですが、やり過ぎはよくありません。スマホやゲームでも、テレビでも、毎日3時間も4時間もやるのは、やり過ぎです。

 目安としては、1日1~2時間くらいにとどめておきたいものです。子どもは自分の意思でコントロールする力がまだ弱いので、ある程度制限をかける必要があります。

 「1日1時間まで」「宿題を終えるまではやらない」「ゲームをするのはリビングだけ(勉強部屋での使用は禁止)」など家庭内でルールを作って、やり過ぎを防ぎましょう。

【樺沢紫苑】スマホ漬けを脱する脳習慣②「朝の散歩」でセロトニンを活性化させる に続きます