ドーパミンの暴走を抑えるセロトニンは「脳の指揮者」
セロトニン的幸福は、心と体の健康の幸福です。
「今日もぐっすり眠れた。朝の空気が清々しくて気持ちがいいな」「今日もごはんがおいしい。幸せだな」という、健康だからこそ感じられる幸福。あたりまえのように存在していてなかなか気づかないけれど、ささやかな幸せではあるけれど、とても大事な幸福です。
コロナ禍の中で私たちは、健康で生きていられるありがたさに気づきました。
振り返れば、日本人は1990年のバブル崩壊で「経済的な豊かさ(ドーパミン的幸福)だけを追求しても幸せになれない」ことを学びました。
2011年に起きた東日本大震災では、「絆」というオキシトシン的幸福のたいせつさを知りました。
そして今、まさにコロナ禍で「健康」というセロトニン的幸福のたいせつさに気づいたといえます。
うつ病や不安障害の人はセロトニンが低下している
セロトニン的幸福が失われると、ひと言で言うと病気、調子が悪い状態になり、特にメンタル面でさまざまな変調が現れます。
脳内物質としてのセロトニンは、非常に多彩な働きをしています。うつ病や不安障害の人は、セロトニンが低下していることが知られています。
また、セロトニンが著しく低下すると衝動性が高まる、つまり、キレやすくなることがわかっています。セロトニンが不足すると、感情のコントロールが効かなくなり、不安やイライラ、落ち込み、無気力などネガティブな感情に陥りやすいのです。
また、セロトニンは「脳の指揮者」とも呼ばれ、ドーパミンや、集中力と関係するノルアドレナリン、緊張・興奮状態をもたらすアドレナリンなど、ほかの脳内物質を調整、コントロールする働きもしています。
そのため、セロトニンが崩れると、感情や行動すべてが崩れてしまいます。
例えば、夜、家に帰ってソファに寝そべり、気づいたらスマホやゲームを何時間もずーっとやっていたことはありませんか?
これは、セロトニンが落ちている証拠。心身ともにお疲れモードで、ほかのことは何もやりたくない、できない状態になっているのです。
セロトニンは、ドーパミンの暴走、つまり、スマホやゲーム依存に陥るのを抑える働きもしています。なぜなら、先に述べた通り、セロトニンは脳の指揮者として、ドーパミンの分泌を適切にコントロールしているからです。
つまり、セロトニンがしっかり分泌されていれば、ぼーっと無気力にスマホやゲームをだらだらやり続けることも、過剰にのめりこんで依存症になってしまうことも、防ぐことができるというわけです。
朝の散歩は起床後1時間以内に15~30分程度が理想
セロトニン的幸福を手に入れる最もシンプルで確実な方法は、脳のセロトニン神経を活性化させ、セロトニンを分泌させることです。
そのための方法は、大きく分けて次の3つです。
①朝日を浴びる
②リズム運動(ウォーキングやラジオ体操など一定のリズムで体を動かす運動)
③咀嚼(そしゃく)
これらを組み合わせて、セロトニンを活性化させる最高の習慣が、朝散歩です。朝散歩は、起床後1時間以内に、15~30分程度の散歩を行う、というもの。歩くスピードは、サッサッと早歩きで、リズムよく歩くことがたいせつです。
朝日を浴びることは、セロトニンの分泌を促すことに加え、体内時計のリセット、ビタミンDの体内合成を促す意味もあります。
私たちの体は、朝日を浴びると、光刺激によって脳内でセロトニンの分泌が活発化するとともに体内時計がリセットされ、その15~16時間後に眠気が訪れるしくみになっています。
そのため、朝散歩を行う時間が重要です。朝7時に起きて散歩に出れば、夜11時頃には眠くなります。12時前に就寝し、翌朝7時に起きると、約7時間の理想的な睡眠がとれる計算になります。
お昼近くになってから朝散歩をすると、深夜まで眠気が来ず、睡眠リズムが乱れてしまいます。
また、朝散歩から戻って、朝食をしっかりんで食べれば、咀嚼によるセロトニンを分泌する効果も追加されます。
セロトニンが活性化すると、集中力も高まります。朝散歩は、心身をシャキッと目覚めさせ、午前中の仕事や勉強のパフォーマンスを上げる効果も期待できるわけです。
散歩に出たら、朝の清々しさを五感で満喫しながら歩いてください。
「今日はスカッと晴れて気持ちがいいな」「新鮮な空気がおいしい」「鳥のさえずりが心地いい」「のびのび歩くと気持ちがいい」——そのすべてが、セロトニン的幸福です。
5分でもいいから毎朝外に出て歩くこと
朝、時間が取れない人は出勤時に「朝日を浴びる」ことと「リズムよく早歩き」することを意識して、朝散歩の代わりにしてもOKです。
リモートワークの人は、運動不足の改善と生活リズムを整える意味でも、特に朝散歩は大事です。5分でもいいので、毎朝、家の外に出て歩いてください。
セロトニンがしっかり分泌されるためには、脳と体が整っていることが必須です。
そのため、睡眠不足、運動不足は厳禁。質のよい睡眠をとるために、寝る前2時間以内の飲酒、食事、激しい運動は避け、夕食後は入浴するなどでリラックスした時間を過ごしてください。
スマホ、ゲーム、パソコンなどの液晶ディスプレイから出るブルーライトは、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制し、睡眠リズムを乱します。就寝前の2時間は、スマホやゲームの使用は避けましょう。