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【樺沢紫苑】スマホ漬けを脱する脳習慣③親切を心がけ「つながりと愛」の脳内物質オキシトシンを出す

2021/09/23

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オキシトシンもドーパミンの暴走にブレーキをかける

 オキシトシン的幸福は、つながりと愛の幸福です。他者との交流、関係によって生まれる幸福であり、オキシトシン的幸福によって安定した人間関係が構築・強化されていきます。

 反対に、オキシトシン的幸福が失われた状態を象徴するのが、孤独・孤立、人間関係の不和。これらは重大なストレスとなって、私たちの心身の健康にダメージを与えます。

 脳内物質としてのオキシトシンは、人とつながる、寄り添う、あるいはペットなどと触れ合うことで「愛され感」「癒やされ感」「安心」「安らぎ」を感じる「愛のホルモン」として有名ですが、ほかにも数多くの健康効果が報告されています。

 オキシトシンの受容体は、心臓に多く分布し、オキシトシンの分泌によって血圧や心拍数が下がり、心筋梗塞などの心臓病の予防効果があります。

 また、オキシトシンは免疫力を高め、細胞の修復を促進し、自然治癒力を高めるとともに、痛みを緩和します。

 さらに、オキシトシンはストレスホルモンであるコルチゾールを下げるストレス解消効果や、脳の扁桃体の興奮を抑え、不安を減少させる作用があることもわかっています。

 自律神経の副交感神経を優位にし、それが大きなリラックス効果を生み、そのうえ、セロトニンを活性化させる方向に働きます。

 記憶力、学習能力、好奇心を高めるなど、脳を活性化させる働きもあります。

 つまり、オキシトシンの分泌によって、心身の健康と脳の活性化が得られ、「健康」というセロトニン的幸福を促進することになるわけです。

 これが、オキシトシン的幸福が、セロトニン的幸福とともに、私たちの幸福の土台となるゆえんです。オキシトシンは、セロトニンと同じく、ドーパミンの暴走に対してブレーキをかける作用もあります。

 実際、ラット(実験用の大型ネズミ)やヒトにオキシトシンを投与すると、アルコールに対する欲求とその消費量が減るという実験や、オキシトシンの投与によりニコチンを摂取したいという欲求が減った、という実験もあります。

 スマホ依存に対しても、オキシトシンは抑制する方向で働くと考えられます。

親切にしたほうにもされたほうにも出る

 オキシトシンの分泌を促すには、「人に親切にすること」が有効です。人に親切にすると、自分と相手の双方にオキシトシンが出ます。

 困っている人を見かけたら手助けする。バスや電車でお年寄りに席を譲る。家族の手伝いをする。人に何かを教えてあげる。エレベーターのボタンを押してあげる。同僚の仕事をサポートする——。小さな親切でかまいません。周囲の人に親切を実行するのです。

 親切の効果を上げるには、コツがあります。意図して積極的に親切を行い、自分がした親切を思い出して記録することが重要なのです。

 これをワーク化した方法が「親切日記」です。1日3回、人に親切をして、1日の終わりに、自分が行った親切を全部書き出します。

 私も実際やったことがありますが、このワークはなかなか難しいです。人に親切にするには、他人を観察し、見守り、相手が何を求めているか、何に困っているかを見極めて、タイミングよく手を差し伸べなくてはいけないからです。

 ただ、難しいだけに効果は絶大。幸福感がアップするだけでなく、「自分は役に立つ人間だ」ということが実感でき、自尊感情や自己肯定感が高まります。

 そのうえ、親切をした家族や職場、近所の人間関係までよくなるのです。自ら進んで親切を行うことで思いやりや助け合いが生まれ、よりよい人間関係を築いていくことができるのです。

 親切にする以外に、ボランティア活動や社会貢献活動に参加することも有効です。ふだんから「人の役に立つこと」「相手のためになること」を意識して行動しましょう。

悪口は寿命を5年縮め認知症になりやすくなる

 反対に、オキシトシンの分泌を大幅に減らしてしまうNG行為もあります。それは、悪口です。

 悪口や誹謗中傷は、一見、ストレスを発散できそうに思えますが、悪口を言うとストレスホルモンが分泌され、体にものすごく悪いのです。

 悪口の多い人は寿命が5年縮み、認知症を発症する確率が3倍に増えるとの報告もあります。認知症のリスクが3倍に増えるということだけでも、悪口が脳に与えるダメージがいかに大きいかがわかります。

 危険を一瞬で察知する脳の扁桃体は、爬(は)虫類にも存在する古い脳なので、言葉の主語を理解できません。誰かに「バカ」「死ね」と言ったとき、脳の中では自分自身がそう言われたときと同じ反応が起きます。

 誰かの悪口を言うことは、ストレス解消どころか、自分で自分を傷つけ、自分にストレスを与える行為なのです。

 ネットやSNSの世界では、悪口や誹謗中傷があふれています。自分から進んで読まなくても、タイムラインで不意に人を傷つける言葉を目にすることも珍しくありません。

 特に、寝る前の15分は、記憶が脳に刻まれやすい「記憶のゴールデンタイム」と呼ばれます。心安らかに眠りにつくためにも、就寝前のスマホは禁止にしたいものです。

 リアルの世界でもネットの世界でも、悪口は極力減らし、親切をできるだけ増やしていくことをお勧めします。

 スマホでのコミュニケーションでも、思いやりにあふれた言葉を交わしたり、チームで協力してプレイする対戦ゲームなどを通じて、セロトニン的幸福が得られるかもしれません。要は、スマホをどう使うかが大事なのです。

(次回④に続きます)

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