発酵食品のヨーグルトと食物繊維が豊富なタマネギの組み合わせは、まさに最強レベル!
医学博士 東京医科歯科大学名誉教授 藤田紘一郎
腸には全身の免疫細胞の7割近くが存在し、あらゆる病気の予防・改善につながる重要な臓器と考えられています。
そこで注目されるのが、腸内細菌の生態系です。腸内には100兆~200兆個の細菌が棲んでいて、「善玉菌」と「悪玉菌」が互いにその領土を広げようと、絶えず戦っています。
その勢力関係(腸内環境のバランス)が善玉菌優位に形成されれば、肥満や生活習慣病をはじめとするさまざまな病気を予防し、免疫力を上げることにつながります。
腸内を善玉菌優位に保ち、善玉菌を活躍させる方法として、私は長年「発酵食品」と「食物繊維」の組み合わせをお勧めしてきました。
今回ご紹介する「タマネギヨーグルト」も、発酵食品であるヨーグルトと、食物繊維が豊富なタマネギで作ります。この組み合わせは、まさに最強レベルの力を発揮します。
タマネギには、「水溶性食物繊維」と「フラクトオリゴ糖」が豊富に含まれます。腸内の善玉菌は、それらをエサとして食べて分解・発酵します。
その結果できるのが「短鎖脂肪酸」という物質です。タマネギの水溶性食物繊維とヨーグルトをいっしょに摂取すると、短鎖脂肪酸がたくさん作られることがわかっています。
短鎖脂肪酸は、エネルギーとして利用されて代謝を高め、脂肪の蓄積を抑制する働きがあります。いわば「やせ酸」なのです。
隠れ糖尿病から守ってくれる
近年では、短鎖脂肪酸に血糖値の上昇を抑える働きがあることも明らかになってきました。腸が食事を吸収する際、短鎖脂肪酸が、インスリンの分泌を促すホルモンを腸から出すのです。
インスリンは通常、食事によって血糖値が上がったのをが感知することによって、分泌が始まります。
しかし短鎖脂肪酸は、血糖値が上がる前からすばやく、インスリンを出すように膵臓へ指令を出すことができるので、食事の際の急な血糖値の上昇を抑制できます。
健康診断では血糖値が正常にもかかわらず、食後の短時間に血糖値が急上昇と急降下を起こす「血糖値スパイク」(隠れ糖尿病)は、放置すれば、動脈硬化、ガン、認知症にもつながる恐れがあるとして、メディアで話題となっています。
こうした症状を防ぐのにも、短鎖脂肪酸は重要な役割を担っているのです。
そのほかにも短鎖脂肪酸は、腸内を弱酸性の環境にすることで悪玉菌の増殖を防いだり、免疫力を高めたり、多様な働きを担っています。
腸の粘膜を強化してアレルギーやうつを防ぐ
さらに、短鎖脂肪酸が腸の粘膜を強化して、「腸もれ症候群(リーキガット症候群)」を予防することもわかっています。
腸もれとは、腸の粘膜に穴があいてしまい、本来排除されるはずのウイルスや細菌などの有害物質や、未消化の食べ物、腸内微生物が発生する毒素などが血液に乗って、体じゅうにしてしまう病気です。
日本人の50人に2人、糖尿病患者では50人に14人の割合で「腸もれ」を発症しているというデータもあります。
「腸もれ」の主な症状としては、食物アレルギー、うつ、アトピー性皮膚炎、ぜんそくなどの呼吸器疾患、自己免疫疾患などが挙げられます。原因不明のも、腸もれが関与している場合があります。
腸もれの主な原因は、腸内環境の悪化です。腸もれ対策には、短鎖脂肪酸をしっかり産生し、腸粘膜を強化することが重要です。
善玉菌を増殖させられる
次に、タマネギヨーグルトが腸内の善玉菌を増やす仕組みについてもご説明しましょう。
腸内の善玉菌の代表的な菌には、ビフィズス菌や乳酸菌が挙げられますが、生乳を乳酸菌で発酵させたヨーグルトには乳酸菌がたくさん入っています。
ビフィズス菌入りという商品も見かけます。ヨーグルトに含まれている菌は、もともと腸内にいる善玉菌を元気にし、腸内を善玉菌優位にするのに役立ちます。
「乳酸菌は生きて腸まで届かないとだめなのですか?」というご質問を受けることがよくあります。確かにヨーグルトの乳酸菌は胃酸に弱いために、食べてもほとんどが腸に届く前に死んでしまいます。
しかし乳酸菌の死骸は、「乳酸菌増殖因子」という物質を残し、腸内に乳酸菌を増やす役目を果たします。
一方のタマネギは、甘味成分であるオリゴ糖が、「ビフィズス菌増殖因子」です。つまり、タマネギヨーグルトは善玉菌を増やす極めて優秀な「美腸食」なのです。
毎日食べて楽々4㎏やせた
先日、タレントの井上咲楽さんがタマネギヨーグルトを毎日食べて、慢性便秘を解消し、3週間で4・1㎏もやせたことが話題となりました。
また、アイドルのぱいぱいでか美さんは2週間で腹回りが9・5㎝も縮んだそうです。私自身も、タマネギやヨーグルトなどを積極的に摂取して腸内環境を整えたら、半年で10㎏もやせ、髪が黒くなりました。
腸内の善玉菌を援護し、短鎖脂肪酸を効率よく産生するタマネギヨーグルトを、ダイエットにも健康維持にも、活用いただきたく思います。
なお、タマネギの薬効成分は加熱しても失われることはありませんので、タマネギヨーグルトを加熱して食べても、問題はありません。
超簡単!タマネギヨーグルトの作り方
■作りやすい分量
・皮をむいたタマネギ 1個(約200g)
・ヨーグルト 1パック(約400~500g)
・自然塩 小さじ1
ヒスタミンを抑え花粉症の症状を和らげると【タマネギヨーグルト】に専門医も太鼓判
日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科部長 大久保公裕
花粉症の患者さんが日本で初めて確認されたのは、今から約50年前のことです。そして、わずか40年ほどの間に、国民病と言われるまでに花粉症の患者数は激増しました。
人間の体は環境によって変化します。日本人の場合、高度成長以前の住居環境は隙間だらけの木造家屋でした。それがマンションのような密閉された住居空間に変わったことから、外敵に弱くなりました。
外敵に対して免疫システムが過剰反応してしまうのが、花粉症です。
花粉症対策には、外敵との接触を避けるより、むしろ外敵と慣れることが肝要。つまり、環境と調和できる体でいることが大事なのです。
アレルギーになりやすい人の遺伝子は変えられませんが、環境と調和できる体質に変わることは可能です。
それには、菌と触れる機会を増やし、積極的に菌と共生することです。発酵食品であるヨーグルトには、多くの菌がいます。
乳酸菌だけでアレルギー体質や花粉症が消えるわけではありませんが、取らないより取るほうがいいのは確実です。
外敵と調和できる体質になることが肝要
タマネギも、花粉症なら取ったほうがいい食材の1つです。タマネギに豊富に含まれる「ケルセチン」という成分は、アレルギーを引き起こす「ヒスタミン」を抑制し、鼻水や鼻づまりなどの不快な症状を撃退します。
また生のタマネギは、血液の老廃物の排出を促し、血液をきれいにします。血液がサラサラになると、ヒスタミンの過剰分泌が収まるため、やはり症状緩和に有効です。
ヨーグルトやタマネギをあまり食べない人が、これらの食品を取ると、いつもより花粉症の苦痛が和らぐことも期待できます。
「タマネギヨーグルト」は私も食べましたが、意外とおいしかったです。タマネギもヨーグルトも安価な食材ですし、試す価値はあるでしょう。
健康法の実践において重要なのは、「あまりお金のかからない手法」を「効くと信じて」「続ける」ことです。1~3日に1回程度でかまいませんので、食べたいときに食べてみてはいかがでしょうか。
(次回に続きます)