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認知症専門医が考案!【手の親指】を刺激すると脳の血流が 増えて 脳機能が高まる!ボケを撃退!

「意欲の低下」が認知症発症原因の一つ

 私は認知症の専門医として、この20年間、毎月1000人ほどの患者さんを診察しています。

 超高齢化社会の日本において、認知症の発症者数は増加の一途をたどり、早期の段階で専門の医療機関を受診する人が増えています。

 そもそも、私が医師を志したのは、認知症を患った祖父の存在があったからでした。

 小学校高学年から中学校時代の多感な時期に、私は祖父と同居していました。そして、認知症が進行した祖父が他界したとき、自分は孫として家族として、何かできなかったのかと思い悩みました。

 この思いがあったから、私は認知症専門医の道へと進んだのです。

 認知症は、さまざまな原因が組み合わさって発症します。

 年齢を重ねると、「意欲」が減退してきますが、この意欲の低下こそが、認知症を誘発する原因の一つと私は考えます。

 例えば、料理好きだった主婦が、ご主人に先立たれて一人暮らしになり、料理をする意欲を急速に失ってしまうケースがよくあります。また、定年退職を機に、何かをする気力がなくなり、引きこもりがちになってしまう男性も少なくありません。

 こうした意欲が低下した日常生活では、脳は刺激を受けて活性化するチャンスを失います。

 すると、脳の老化が進み、認知症になってしまうのです。

親指は意欲の象徴

 それでは、認知症にならないために、意欲を高め、脳を活性化させるには、どうしたらいいのでしょうか?

 それは、手の親指を刺激することです。

 親指と脳は密接につながり、互いに大きな影響を与えています。親指が全身の表面積に占める割合はごくわずかですが、親指を動かすためには、脳の広い領域が使われています。

 したがって親指を動かし刺激すると、脳の中の広い領域を刺激することができるのです。すると、脳の血流が増え、細胞が活性化して、脳機能が高まると考えられます。

 私は指と脳の密接な関係を研究しているうちに、サルと人の手の親指の違いに着目しました。

 サルの手の親指はとても短く、内側に大きく曲がらず、ほかの指の腹と組み合わせることはできません。5本の並列な指で枝をつかみ、木の上を移動しています。

 一方、人の手の親指はほかの指の腹と向い合せ、くっつけることができます。これを「拇指対立運動」といいます。

 この親指の機能によって、ものをつまむ、持つ、つかむ、結ぶ、めくるなどの複雑な動作をすることが可能になるのです。

 親指を使う動作を想像してください。着替えをする。コップで水を飲む。ドアノブをつかんで回す……。どの動作にも意欲が関わることがわかります。

 つまり、親指は「意欲の象徴」とも言えるのです。

ボタンを留めるなど、親指を動かす
日常動作で、脳の広い領域が刺
激される

指先を使うことが刺激になる

 手の親指をしっかり動かし、脳を活性化して意欲を高めるために行っていただきたいのが、私の考案した「手の親指刺激」です。

 実際に、手の親指刺激を行ったときの脳の血流を調べたところ、脳の中の動作を指令する「運動野」、感覚を感じとる「感覚野」、意欲の源とされる「前頭前野」の血流量が増加することが認められました(下のグラフ参照)。この結果は、親指刺激で脳の働きが活性化されることが実証されたということです。

 認知症患者さんの治療法として、手指を使って脳に刺激を与える「脳リハビリ」がありますが、私はこの中に「手の親指刺激」を取り入れており、実際、効果を上げています。

 脳にとって、親指を始めとする指先の刺激は、脳に与えるインパクトは強いものです。

 私の祖父は、認知症の進行とともに、指の動きが悪くなっていきました。実際に、医療現場で作業療法(日常生活動作の訓練)を行う患者さんを見ていても、指先の動きと脳の機能には、深い関係があることがわかります。

 昔から医師の間では「指は第二の脳である」と言われていますが、ほんとうにその通りだと思います。

 1日の朝晩、たった1分で脳が元気になる「手の親指刺激」をぜひ習慣化してください。

 また、日常生活の中で、親指をどのように使っているか意識してみてください。

 家事や仕事、趣味などに意欲的に取り組み、親指をこまめに動かす暮らしが、脳の老化を遠ざけることにつながります。

「手の親指刺激」のやり方