中性脂肪の原因は脂肪ではなく糖質
いきなりですが、皆さんに問題です。次の食べ物の中で、中性脂肪が増えやすいのはどれでしょう?
❶かけうどん
❷ステーキ
❸焼酎
正解は①です。ステーキよりも焼酎よりも、かけうどんは脂肪肝になりやすいのです。理由は、炭水化物には「糖質」が多く含まれているから。糖質とは、米や麦などの穀類、イモ類などに多量に含まれる炭水化物から、食物繊維を除いたものです。
うどん1杯の糖質量は58・5g。しかし、うどんよりカロリーは高いはずのステーキの糖質量は0・1g程度。うどんの方がはるかに中性脂肪は増えやすいのです。
脂肪肝は、その病名から「脂質の多い食事が悪い」と思われがちですが、中性脂肪の原料になっているのは、脂質ではなく「糖質」です。果物や砂糖、白米、パン、麺類などの糖質のとりすぎが、脂肪肝を引き起こすのです。
注意すべきはあくまで糖質。脂肪肝においては、カロリーはほぼ関係ありません。
脂肪肝と言うと、お酒の飲みすぎをイメージするかたも多いのではないでしょうか。
しかし、日本人の場合、脂肪肝になる原因のほとんどは、お酒の飲みすぎではなく、食べすぎによるものです。
もちろん、大量のアルコールを長期にわたって飲み続ければアルコール性脂肪肝になる可能性は高くなりますが、脂肪肝に関してはアルコールが一律に有害とはいえません。焼酎やウイスキー、ウォッカなどの「蒸留酒」は糖質を含んでいないので、適量を飲む程度ならば、むしろ健康効果を期待できます。
ご飯を15%減らすだけで十分効果がある
10年ほど前から「糖質制限」がブームになっています。糖質のとりすぎが脂肪肝の最大の原因であるならば、糖質制限は脂肪肝の予防・改善に最高の方法のように見えます。
しかし、私は極端な糖質制限はお勧めしません。なぜなら、極端な糖質制限は、必ずといっていいほどリバウンドを起こし、それによってまた脂肪肝になってしまうからです。
そこで専門医の私が患者さんにもお勧めしているのが、「糖質ちょいオフダイエット」です。これは文字通り、糖質をちょっとだけオフするダイエットです。ご飯や麺類などは食べてOK。その代わり、15%減らします。その分、肉や魚などを多めに食べてください。
例えば、飲み会でお酒を飲んでもOKですが、締めのラーメンは控えましょう。つまみを注文するなら、糖質の多いジャガイモで作るポテトサラダより、唐揚げがお勧め。お菓子やジュース、果物を減らせるならば、ご飯は10%減らすだけでもOKです。
たったこれだけで、軽めの脂肪肝なら1週間ほどで改善が期待できます。カロリーを気にすることも、空腹を我慢する必要もありません。
「たったそれだけで効果があるの?」と思う人もいるかもしれませんが、糖質を15%カットできれば、十分糖質制限になります。その15%こそが、脂肪肝のもとになる余分な糖質だからです。
よく噛めば糖質を食べても血糖値は上がらない
軽い脂肪肝ならば、糖質ちょいオフダイエットを実践すれば、短期間でかなりよくなります。一方、もう何年も脂肪肝と診断されている、もしくは太りすぎの自覚がある、という人は、以下の方法をできる範囲でプラスしてみてください。
脂肪肝対策法 ❶よく噛んで食べる
糖質の多い食べ物をよく噛まずに食べると、一気に血糖値が上がります。するとインスリンが大量に分泌されて、糖が脂肪となって蓄積されます。食後の血糖値が上がらないようにする=脂肪肝を予防・改善できると考えてください。
逆に、よく噛んで食べると、糖質は口の中で分解され、血糖値の上がり方が緩やかになります。一口30回噛むのが理想と言いますが、とにかくゆっくり噛んで食べることが脂肪肝の予防につながります。
脂肪肝対策法 ❷野菜を先に食べる
サラダ、野菜炒め、酢の物など、食事の際には野菜を先に食べると、食物繊維が腸管でブドウ糖の吸収を抑え、食後の血糖値の急上昇を防ぐことができます。
気をつけたいのは、果物です。果物は野菜と同様だと考えている人もいるかもしれません。確かに果物はビタミンやミネラルなどの栄養が豊富なのですが、果糖という糖質を多く含みます。しかも、近年の果物は品種改良によって、昔よりも糖度が高く、おいしくなっています。
血糖値とは、ブドウ糖の血中濃度のことです。したがって、果物に含まれる果糖を食べても血糖値は上がりません。しかし、果糖は糖質の中でも最も吸収されやすく、しっかり脂肪として蓄積されます。
果物を食べることは、肝臓にとっては「ラーメンを食べることと同じ」と思ってください。果物を食べる場合は、食事の最後に食べること。野菜と同じだと思って食べすぎたり、果物をご飯の代わりにしたりすると、脂肪肝まっしぐらです。
薬並みの効果のある高カカオチョコ
脂肪肝対策法 ❸食後に散歩する
食後、少し経つと血糖値が上がり始めますが、有酸素運動をすることで血糖値の上昇を抑え、脂肪を効率よく燃焼させることができます。
外食する人は、少し遠くのお店まで食べに行って、歩いて帰ってくるのがお勧めです。少し早く歩くことを意識すると、なおいいでしょう。
脂肪肝対策法 ❹高カカオチョコを食べる
私のクリニックには、糖尿病の患者さんがよくいらっしゃいます。糖尿病の患者さんは、驚くほど多くのかたが脂肪肝を併発しています。
私はよく患者さんに「5gの高カカオチョコを1日5回食べて、食後に20分散歩してごらん。後は何もしなくていいから」と言います。多くの場合、これで脂肪肝は治り、糖尿病も大きく改善するのです。
チョコに含まれる「カカオポリフェノール」には、強い抗酸化作用があり、血液をサラサラに保ち、脂肪肝などの生活習慣病から私たちを守ってくれる働きがあります。
赤ワインや紅茶など、ポリフェノールを含む食品は多数ありますが、高カカオチョコのポリフェノール量は赤ワインの5倍と、断トツに多いのです。
普通のミルクチョコは糖質も多いので、ダークチョコやビターチョコといった高カカオチョコがお勧めです。カカオが60〜90%含まれているものを高カカオチョコと呼びます。私は70%前後の高カカオチョコを勧めています。それ以上の高カカオチョコでもいいのですが、効果はさほど変わらないうえ、苦くて食べにくいからです。
最近は、スーパーなどで5gほどに小分けされた高カカオチョコが販売されています。これを朝昼晩の食前に一つずつ、あとは食間に2回、食べてもらいます。
ある患者さんは、ヘモグロビンA1cが10・1%もあったのですが、高カカオチョコを1日25g食べてもらい、食後に20分散歩してもらっただけで、薬を使わずに4カ月で6・3%まで下がりました(※)。
※過去1〜2カ月間の平均的な血糖の状態を反映する値。正常範囲は6.2%以下
脂肪肝は怖い病気ではありますが、その気になれば1週間でよくなります。ここに紹介した簡単な手法でも、自覚症状がないために、皆さん、なかなか実践してくれないのです。
しかし、症状が出るほど脂肪肝が進んだら、生命の危機に直結します。そうなる前に、ぜひこれらの方法で肝臓のダイエットを成功させてください。
体にいいはずが脂肪肝を招く危険な食べ物
最近、「寝る前に飲むと睡眠の質が上がる」と大ブームになった乳酸菌飲料があります。なぜ寝る前に乳酸菌飲料を飲むとよく眠れるのだと思いますか?
乳酸菌飲料には、糖質が多く含まれています。ブドウ糖の血中濃度が上がり、インスリンが大量に分泌されると、血糖値が急低下し、眠くなります。「睡眠の質が上がる」の正体はこれなのです。乳酸菌飲料を毎晩飲めば、眠れるようになるかもしれませんが、1カ月足らずで脂肪肝になってしまうでしょう。
ビタミンたっぷりのフルーツジュースにも糖質が多く含まれています。朝食前にフルーツジュースを飲むなど、肝臓にとってはラーメンを食べることと同じです。飲む場合でも果物やスイーツと同様、食事の最後にし、飲みすぎないようにしましょう。