高血圧患者の90%に効果があった!
2016年に厚生労働省が実施した「国民健康・栄養調査報告」によれば、高血圧の患者数は約4300万人。日本人の3人に1人がかかる、まさに国民病です。
これほどまでに患者数が多いのは、高血圧には自覚症状がなく、気づかぬうちに病状が悪化してしまうのも一因です。
「最近、血圧が高いけど年のせい?他に悪いところはないし……」と軽く見ていると、重篤な病気を併発する危険性をはらんでいます。
高血圧の状態が長く続くと、血管に負担がかかり、血管の柔軟性が奪われ硬くなります。これが、動脈硬化(どうみゃくこうか)です。
さらに、血管についているプラーク(脂肪の塊)や血栓(血の塊)が血液に乗って全身を巡ることもあります。この壁の一部が心臓で詰まると心筋梗塞を、脳の血管で詰まれば脳梗塞を引き起こします。
このほか、腎臓病や足の壊疽(えそ)(※1)、大動脈瘤(りゅう)(※2)など、高血圧が併発する病気は挙げればきりがない、恐ろしい病気なのです。
※1 体組織が死滅して暗褐色や黒色に変色する病気 ※2 大動脈が病的にふくらんだ状態
私は、循環器の専門医として、自分を実験台として33年間24時間ずっと血圧計をつけて血圧を計り続けています。その目的は、薬に頼らず血圧を下げる方法を探すため。
今回、ご紹介する「頭皮の血管もみ」は、そんなふうに探し当てた方法の1つです。誰でも簡単にでき、高血圧の改善・予防が期待できます。
榊原(さかきばら)温泉病院名誉院長・明田昌三(あけたしょうぞう)先生のご著書では、頭皮の血管もみを患者さんのマッサージに取り入れたところ、なんと90%もの人の血圧が一時的に下がったという報告もあるほどです。
ストレスが血圧を上昇させる!
高血圧の患者さんは、「血圧が上がると頭が痛くなって、これがつらいんです」とよく話されます。
実は、これは大きな誤解。血圧の上昇が頭痛の原因ではありません。ほんとうの原因は、その逆です。
頭の血管が収縮すると、頭皮や首などの血流が悪化し、筋肉が硬くなります。その結果、頭痛や肩こりが生じ、その痛みや不快感がストレスとなって血圧を上昇させるのです。
ストレスと聞くと、イライラや妬み、悲しみといった精神的なストレスを想像する人も多いと思いますが、寒暖差や季節の変わり目など、環境的な要因もストレスとなり、血圧を上げます。
ここで、私の患者さんの実体験をご紹介しましょう。
その人は、スーパーの冷凍食品コーナーで食材を探していました。すると、急に気分が悪くなり、血圧計を見ると、なんと血圧は192㎜Hgです(血圧の正常値は135㎜Hg以下、85㎜Hg以上)。驚いて、買い物はそこそこにして売り場を去りました。
なぜ、このような反応が起きたのか?
冷凍食品コーナーの寒さをストレスとして受け止めたのです。
人がストレスを受けると、アドレナリンというホルモンが分泌されます。このアドレナリンの分泌量が増えるのは、「闘争」ないしは、「逃走」のときともいわれています。
人体に危機が迫ったときに分泌量が増え、血管を収縮、血糖値・血圧を上昇させ、心拍数を早めるように作用します。つまり、いつでも闘いや逃走に備えられるような体調を作るのです。
私たちに欠かせない体のシステムですが、さまざまなストレスがふりかかる今の時代では、真逆の効果を発揮してしまっているのです。
頭をもむようなもめ事を作らない!
頭皮の血管もみには、強いリラックス効果もあります。
唐突ですが、「1/fゆらぎ」という言葉をご存じでしょうか。
人間の心臓音や小川のせせらぎ、そよ風、クラシック音楽といった音に含まれる周波数で、この音を聴くと脳波がα波の状態になり、人体に深い癒し効果をもたらすといわれています。
頭皮の血管もみを行うと、「1/fゆらぎ」を聴いたときと同様の脳波を示すことがデータで証明されています。
例えば、美容院に行き、シャンプーをしてもらうと、その心地よさに癒され、リフレッシュできた覚えがある人もすくなくないと思います。
これと同様に実際、頭皮の血管もみを行うと、うっとり気持ちよく、眠くなるという人も多いです。
ストレスこそ血圧の天敵です。ストレスがたまったと感じたら、頭皮の血管もみを行い、ストレスを緩和させ、高くなってしまった血圧を下げていきましょう。
また、頭皮の血管もみを行えば、収縮した血管を刺激されえ、頭皮の血流もアップします。
頭部の血流がよくなれば、その周りの部位・器官の血流も促進されますから、頭痛・肩こりはもちろん、白髪や顔のシミ・シワなども改善も期待できるでしょう。
高い血圧をより効率よく下げたい場合には、頭皮の血管もみに加えて頭のツボを刺激することをお勧めしています。
私のお勧めの頭のツボは、「風池(ふうち)」と「百会(ひゃくえ)」です。どちらのツボも、頭皮の血管もみの仕上げの一押しとして、取り入れてみてください。
しかし、ほんとうに重要なのは、血圧が上がる前に対処すること。血圧が正常であれば、心臓病などの大きな病気はもちろん、頭痛や肩こりなど、日常的に感じる不調も予防できます。
「なんだか調子が悪くなりそうだ」と感じたときには、ぜひ、頭皮の血管もみを行ってください。
そして、高血圧やストレスを回避するために「頭をもむような、もめ事を作らない」ことも意識しながら、毎日元気にお過ごしいただけましたら幸いです。
1回1分!頭の皮膚と頭蓋骨を手で動かす「頭皮の血管もみ」のやり方
頭を包むように、手のひらを前頭部におき、ぴったりと密着させる。頭の皮膚と頭蓋骨をずらすようなイメージで、手を上下左右に動かす。1カ所約10秒。気持ちいいと感じる強さで行う。前頭部から始め、頭頂部、側頭部、後頭部の順に手をずらしていく。計40秒
頭皮の血管もみは、いつ、どこでも行ってもいい。「なんだか調子が悪くなりそう」と感じたときや、入浴後、髪をドライヤーで乾かした後に行うと、さまざまな不調をより遠ざけることができる。ただし、めまいがする場合は控える
たたくだけ&温めるだけでも効果が期待できる!
ケガなどで手をうまく動かせないときは、指先で頭全体をまんべんなくたたいたり、手のひらを頭に置き温めたりするだけでも同様の効果が期待できる
全身の血流をよくし疲労を回復する!頭皮の血管もみ仕上げのツボ刺激
後頭部、頭を支える2本の筋肉の横、髪の生え際にある。刺激するときは、右の写真のように後頭部をつつむように手を組み、親指の腹を当てる。鼻から息を吸い、鼻もしくは口から吐きながら、目の方向に向かうよう押し上げる。いた気持ちいい程度の力で5秒ほど刺激する。眼精疲労や肩こり・頭痛解消に役立つ
頭頂部、耳の上端と顔の中心線の交点で、わずかにくぼんだところにある。右の写真のように、両手の中指を重ね、鼻から吸った息を、鼻もしくは口から吐きながら、いた気持ちいい程度の強さで5秒ほど押す。全身の血行をよくし、頭痛や疲労感の軽減やめまい、耳鳴り解消に効く