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【頭をさするだけ】セルフケアポイント~ 全身の筋肉バランスを整え痛みや不調を解消

頭をさすると脳から筋肉へ信号が行く

 私は看護師として働いているときに、足への興味が高じて、「リフレクソロジー」を学ぶようになりました。リフレクソロジーとは、「リフレックス(反射)」と「ロジー(学問)」をつなげた、いわゆる「反射学」のことです。

 例えば、手や足、顔、耳には、「反射区」がたくさんあり、まるで全身の地図のように広がっています。

 反射区とは、体内の器官や臓器に対応していて、そこを刺激することで、その臓器に働きかけることができる部位のことです。同時に、反射区には、対応する臓器の状態が反映されます。

 私は、リフレクソロジストに転身してからも学びを広げ、東洋医学やキネシオロジー(※)の側面からも全身を観察して研究し、治療につなげています。  ※生物の身体の運動の科学的研究のこと。生理学的、生体力学的、心理学的な運動原理および運動機構を扱う

 また、不調を感じている人が自分でそれを改善できるセルフケア法も開発して、たくさんのかたがたに治療のサポートとして役立てていただいてきました。

 その中から、今回は「頭皮さすり」をご紹介いたします。これは頭皮を軽くさすることで、首や肩のこり、腰痛、不眠症、めまいなどの改善、肩や股関節の可動域の拡大、脚力の復活などの効果が期待できる手法です。

 特に、緊張しやすくてストレスが強い人、体のあちらこちらに不調を抱えている人、体が硬い人には、お勧めのセルフケアです。

 頭皮さすりは、私も治療の一環でよく用いる施術です。側頭筋エリアや前頭部、後頭部などを呼吸に合わせてさすると、その部分の頭皮が緩みます。

 すると、脳から、そこに対応した筋肉を緩めて、正常な状態に戻すように信号が送られるのです。これが反射区のようなので、私は「頭蓋骨リフレ」と呼んでいます。

 また、その筋肉に関係する臓器も緩んでくるので、低下していた機能が正常化されて、さまざまな不調の改善が期待できます。

11人全員の体の柔軟性がアップ!

頭蓋骨の部位と、それに対応する筋肉、臓器、体への効果は、下の図のようになります。

 例えば、側頭骨は、大腰筋と腸腰筋という腰回りの筋肉に対応しています。私は、11人のかたを対象に、普通の状態で立って前屈した場合と、側頭骨に軽く触れながら立って前屈した場合とで、曲がる角度の変化を見る実験を行いました。

 すると、11人全員で、側頭骨に軽く触れながら前屈するほうが、そのまま前屈するよりも体の柔軟性が高まる、という結果になりました。

 これは側頭骨に触れることで、そこに対応する大腰筋や腸腰筋が緩んだからです。同様に、後頭骨に触れると首、蝶形骨に触れると肩というふうに、対応した部位の筋肉で効果が得られます。

 さらに、頭皮さすりを行うと、頭蓋骨の縫合部が微妙に動きます。これも不調が改善する大きな理由です。

 頭蓋骨のゆがみが調整されることで脳圧が低減すると、締めつけられていた脳が解放されます。脳の緊張が解ければ心身もリラックスしますから、臓器の働きも取り戻されるというわけです。

 特に、めまいの症状がある人は、脳圧が取れると脳の血流がよくなるので、めまいを起こさなくなります。

 ところで、「頭蓋骨の縫合部」とは何でしょうか。頭蓋骨は、後頭骨や頭頂骨、前頭骨、側頭骨など、いくつかの骨に分かれています。生まれたばかりの赤ちゃんのとき、これらの骨の間にはすき間があります。

 成長とともに頭蓋骨が大きくなり、隙間がふさがって、骨どうしがピッタリとつきます。この骨のつなぎ目が「頭蓋骨の縫合部」です。

 頭皮さすりを行うと、頭蓋骨を包む筋肉が緩みます。その結果、この縫合部がわずかに開いてゆがみが調整され、脳圧が下がるのです。

 頭蓋骨のゆがみには、さまざまな原因があります。いちばん大きな原因は噛み癖と言われています。多くの人は、左右の歯で均等に噛めておらず、右か左の片噛みになっています。これがゆがみを助長するのです。

 ほかにも、いつも片方の肩だけにバッグを下げたり、ずっと片方の手でスマホを操作したり、いつも同じ体勢で足を組んだりといった、ふだん何気なくしている体の癖もゆがみにつながります。

 不調や痛みがなかなか回復しないという人は、頭皮さすりを試してください。朝、寝起きにすると、頭も体も気持ちよく目覚めます。仕事の合間に行えば、脳圧が取れて、頭がスッキリします。夜、寝る前に行ってもOK。心身がリラックスして、深い眠りが得られるでしょう。

脳から改善信号がピピッ!と行く「頭皮さすり」で効果のある症状

呼吸を合わせながら、頭皮に軽くふれるだけでOK

●めまい ●腰痛 ●肩こり ●頭痛 ●高血圧 ●むくみ ●倦怠感 

●ストレス ●胃腸の不調 ●免疫力アップ ●便秘

ソッとさすられるだけで効果が得られる

 各部位の詳しいさすり方については、後から解説していきますが、すべての部位に共通する重要なポイントが2つあります。

 まず1点は、決して強くこすったり、押したりせず、指先でソッと触れるようにさすること。頭にチョウが止まっているような、ほんとうにその程度の軽いタッチでだいじょうぶです。

 脳は繊細な刺激でも反応するので、ソッと触れるだけでじゅうぶんに伝わります。逆に、ギュッと押したり、もんだりといった強い刺激を与えると、その部分に対応する筋肉は緊張してしまうのです。

 フワッと触り、ソッとさするようにしましょう。「手でやると、つい力が入ってしまう」という人は、メイク用の刷毛を使うのもお勧めです。

 そして、もう1点、頭皮さすりは、「呼吸」をしっかり意識しながら行うことが重要です。息を吸ったときに筋肉が緩み、吐いたときに筋肉が緊張します。

 これを繰り返しながら頭皮さすりを行うことで、対応する部位の筋肉や臓器のバランスが整ってくるのです。

 呼吸に合わせて頭皮さすりを行うのは、慣れるまでは少し難しいと思います。最初はやり方を見ながら、間違わないように行ってください。

足が軽くなり認知症の症状も回復

ある80代の女性は、足の動きが悪く、浴槽をまたげないほどでした。歩くときも背筋が伸びず、背中を丸めてトボトボと歩いていました。また、少し認知症の症状があり、薬も服用していました。

 しかし、頭皮さすりを行ったら、背筋が伸びて、足を上げてスタスタと歩けるようになったのです。認知症の症状も改善し、薬を飲まなくてもよいほどに回復。健康な日常を送れるようになりました。

 現在は、若い頃から好きだった宝塚歌劇団のステージを連日見に行って、出待ちをするほどシャキッとしているそうですから、私のほうが驚いています。

 以前、あるがん患者さんの訪問治療で頭皮さすりを施術したとき、家族のかたから「そんな力を入れないマッサージで効くんですか?」と尋ねられました。

 しかし、3分も頭皮さすりを続けると、患者さんは「体がすごく楽になった」と喜んでくれました。今では、家族のかたが頭皮さすりのやり方を覚えて、患者さんにやってあげているそうです。

「頭皮さすり」を施術する市野先生。優しく触れられるだけで、とても心地よい

緩んだ筋肉を動かすと効果アップ!

 頭皮さすりの効果をさらに高めたい場合、頭皮さすりによって緩んだ筋肉を動かしてあげることがたいせつです。それにより、脳が正常な状態を思い出し、筋肉に「戻るよ」という信号を送るからです。

 先ほどの80代の女性も、頭皮さすりを行った直後に、肩を回したり、足踏みをしたりしたことで、その場で大きな変化が得られました。

 頭皮さすりを行っただけでは、時間が経つとまた筋肉は元に戻りますが。しかし、頭皮さすりをしながら筋肉を動かすということを続けていけば、筋相互の協調性を取り戻し、バランスが整います。

 頭皮さすりは副作用がなく、誰がやっても安全です。いつ行ってもOK。ぜひ習慣にして、その効果を実感してください。

頭蓋骨のゾーンが全身の筋肉と内臓に対応する「頭皮さすり」マップ

筋肉・臓器に働きかけ不調や痛みを解消する「頭皮さすり」のやり方

●基本的な注意点

・チョウが止まるように、ソッと触れる。強く押さない

・呼吸に合わせて行う