時間や長さにこだわらずとりあえず歩く!
いくら歩くようにお伝えしても、頑として歩こうとしない患者さんもおおぜいいらっしゃいます。そういうかたは、「忙しくて」「暑いから」「雨だったから」など、歩かない理由をいくらでも思いつくようです。
しかしその結果、健康を害し、しんどい思いをして、病院に足を運ぶことになるのです。だったら、楽しんで歩いて、病気知らずの体になったほうがいいと思いませんか。
歩くといっても、「時間を取って散歩しなければ」と、身構える必要はありません。生活の中で少しずつ歩く機会を増やす。それを積み重ねていけばいいのです。
そうはいっても、歩くことが少しでもつらく感じれば、続けるのが難しくなるでしょう。歩行習慣をつけるためには、気楽に歩くための、準備や工夫が必要となります。歩くのが苦にならなくなる6つのポイントを紹介します。
①手ぶらで歩く
重いカバンやたくさんの荷物を持っていると、歩くのが途端につらくなります。また、ひじを後ろにひく歩き方も実践できなくなります。そこで、私は「手ぶら」で歩くことを提案しています。
持ち物は最小限にして、洋服のポケットに入れるといいでしょう。できれば何の用事もなく歩くのがベストですが、買い物のついでに歩く場合は、リュックにして、両手を空けます。
②紫外線対策は歩くのを邪魔しないものに
日焼けやシミを気にして、歩かない女性がいますが、適度な紫外線には、骨粗相症(骨がもろくなる病気)や感染症を予防する効果があります。ですから、過度に気にせず、紫外線対策をして歩きましょう。
紫外線対策は、日傘でもいいのですが、できれば帽子やサンバイザー、サングラス、日焼け止めクリームにして、両手を空けます。また、歩く時間を紫外線が少ない、早朝や夕方にするのもよいでしょう。
③歩く時間帯にこだわらない
患者さんからは、「いつ歩けばいいのか」とよく聞かれます。結論から言うと、いつでもかまいません。ただ、不眠の症状がある人は、朝日を浴びながら歩くのが効果的です。
また、高血圧の人は、寒い日の早朝など、血圧が高くなりやすいタイミングで歩くのは避けたほうがよいでしょう。
④足に合った靴を選ぶ
サイズが合わない靴や、ヒールが高い靴は、足に負担がかかり、歩くのが苦痛になります。反対に、好みのデザインで、はき心地がよい靴なら、歩くのが楽しくなります。
ですから「歩きたい!」という気持ちになる靴を準備しましょう。今は、着地の衝撃を和らげる、性能のいいウォーキングシューズが豊富にあります。カゼやちょっとした症状で診察代や薬代を払うくらいなら、そのお金で気に入ったウォーキングシューズを買うことを、強くお勧めします。
⑤5分でいいから歩く
「30分歩いて」と言われても、忙しいかたは、その時間がとれなくて当然です。しかし、生活の中で、こまめに歩く時間を増やすことはできるはず。
通勤や買い物で少し遠回りをしたり、階段を使ったりして、5分歩くことを数回繰り返すだけでいいのです。
暑い日や雨のときは、買い物ついでに、地下街や大型スーパーなどを歩くのもよいでしょう。歩く時間の理想は、1日合計で30分ほどです。
10分×3回でもいいですし、5分×6回でもOK。歩く時間をこまめに作りましょう。
歩くのが退屈な人は頭の体操をしながら歩く
⑥頭を使いながら歩く
ただ単に歩くのを退屈に感じるかたもいると思います。そこで、頭を使いながら歩く「ながら歩き」を私は勧めています。ながら歩きには、次のようなものがあります。
・川柳ウォーキング
川柳や俳句を作りながら歩く
・計算ウォーキング
100から7ずつ引き算する。または目に入った車のナンバーを足し算するなど、計算をしながら歩く
・カラオケウォーキング
歌いながら歩く
・見ながらウォーキング
周囲の景色を意識しながら歩く
この「ながら歩き」では、運動と頭の体操を同時に行っています。これは2つ以上のことを同時に行うマルチタスクになるので、認知症を予防改善する効果があることが、医学研究で認められています。
楽しく歩くことを習慣にするポイントは以上です。私の治療経験では、歩いていなかった人ほど、歩くことの効果が顕著に出ます。最初は5分からでもいいので、とにかく歩いてみてください。
先日、当院のスタッフで5年ほど働いてくれている人が、「歩いたら、すごく体調がよくなりました。先生の言うこと、ほんとうだったんですね」と、報告してくれました。
私からしたら、「え?今さらそれを言う?」と思ったものの(笑)、理屈はともかく、歩けばいいことがあると信じて歩く、これが大事なんです。皆さんも、ぜひその効果を体感してみてください。