毎年8万人が心臓突然死で命を落とす
ここで、知っているのと知らないのでは、まさに生死を分けるお話を紹介します。
それは、「突然の胸の痛み」です。
医療ライターの熊本美加さんは、2019年秋、52歳のとき、東京・山手線の車内で、突然、心肺停止となり、座っていたいすから床に倒れました。
たまたま近くにいた人や駅員たちの尽力により、幸いにも一命をとりとめました。
3年以上が経った現在は、仕事をこなしながら日常生活にも大きな支障はありません。
総務省消防庁『救急救助の概況・令和3年』によると、2021年に心臓が原因の心肺停止で救急搬送された人は約7万9千人。
そのうち、倒れるところを誰かが目撃した、つまり、すみやかに救急通報されたであろうケースが約2万5千人。
その2万5千人中でさえ、命が助かった人(1カ月後生存率)は12.2%。
社会復帰できた人はわずか7.5%です。
熊本さんは、ほんとうに幸運だったと言えます。
日本では、毎年約8万人が心臓突然死で命を落とします。
ざっと7分に1人が亡くなっている計算です。
逆に考えると、誰にでも、突然やってくる可能性があるわけです。
突然?
いえいえ、実は、まったくの突然ではなく、予兆があるのです。
熊本さんも、倒れる2週間くらい前から、胸の真ん中を押さえつけられるようなモヤモヤとした痛みが何度かあったそうです。
それでも、数分横になると症状は消え去り、その後は何事もなかったかのように過ごせるので、「ストレスのせいかな」とやり過ごしていたといいます。
熊本さんは、体が回復してから、自身の体験を伝えることで、突然の心臓死でなくなる人を一人でも減らしたいと、その予防と対処法を発信する活動も始めました。
その一端が、熊本さんが主治医の循環器内科医に聞いた
「迷わず病院に行くべき胸の痛み」です。
要チェック! この「胸の痛み」が出たら迷わず病院へ!
部位
□ 胸全体
□ ネクタイの範囲
□ 背中に広がる
□ 左の腕や奥歯に広がる
□ ピンポイントでここが痛いというより、このあたりといった手のひらより広めの範囲
症状の感覚
□ 圧迫感
□ 鋭い痛みではなく重い石がのっかっているような重苦しさ
□ 何かにギュッと胸をつかまるような感じ
□ 鈍痛と同時に左の奥歯がうずく
□ 冷や汗をかく。ちょっと普通じゃない苦しさ
□ 痛みの長さは5分以上、または10~15分間、波がなく症状が続く
□ 繰り返し症状が出る、または最近頻度が増えてきた
□ 突然脈が速くなったり、遅くなったり、脈の乱れが続く
「心肺停止する前の胸の痛みを軽視して、放置したのは、今になってみれば大きな間違いでした。
痛みが治まったからと安心せず、すぐに病院へ行くべきでした。
何科でもいいから病院へ行って、胸の痛みが出たときの様子を医師に話していたら、きっと〈心疾患の疑いあり〉と循環器内科を紹介されたでしょう。
詳しい検査を受け、原因が判明すれば、血管を拡張する薬や血液をサラサラにする薬などの的確な治療が施されたでしょう。
心肺停止で死の淵をさまようこともなかったはずです」
(熊本美加さん)
もし、心当たりのある人は、迷わず病院に行きましょう。
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電車内で倒れた医療ライターが警鐘
「私の心肺停止体験記」
と題する熊本美加さんの6ページにわたる記事を掲載しています。
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