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【本田健】激動の時代も「自分はどう生きたいか、何をしたいのか」が大事

2021/07/17

なぜ小説家という職業に不幸な人が多いのか?

 ある時期私は、作家志望者向けの勉強会やセミナーを不定期に開催していました。

 そこであらためて感じたのが、「ビジネス・自己啓発ジャンルの作家」を目指す人と、「小説家」を目指す人では、人生のノリが明らかに違うということです。

 ビジネス書や自己啓発ジャンルの作家を目指す人は、人生がうまくいっている傾向があります。

 例えば「太っていたのがこれだけやせました」、「素敵な彼氏ができました」、「お金がなかったのが入るようになりました」といった具合で、ある意味、成功した状態を宣伝するのがビジネス書や自己啓発ジャンルの作家だといえます。

 一方で小説家タイプの人は「人生問題だらけ」、「もう嫌だ」、「山は高く谷は深い」というように、人生に不幸感がないとなかなかいい文章が書けない傾向があるようです。

 いい・悪いではなく、それぞれの特徴であり、才能でもあり、生き方の選択であり、カルマのようなものもあるともいえるでしょう。

 ビジネス書や自己啓発書の作家が、「自分は成功している」と本に書いていても、後でボロボロになることはよくあります。

 というのも、ダイエット本で成功したら自分はもう太れない。お金・仕事をテーマとした作家だったら破産できない、という種類の重圧もあるわけです。

 小説家の場合だと、自分の不幸を種にしないと作品が書けないままだと、どんなに成功したとしても、かえって不幸になってしまいます。現にそういう作家も多いわけです。

 そうした人生の課題は、必ずセットでやってくるようになっています。そうすると、自分の胡散臭いところ、うまくいってないところが噴き出てきます。

 それらを自分の中で統合できて、初めて本当の意味でのメッセージを伝えられるようになるわけです。

 だいたい「理想の彼氏ができちゃった」みたいな内容で作家デビューしても、いずれその彼氏はいなくなります。そこはあくまで第一ステージで、次のステージに進む必要があります。

 その意味で、私自身も、ただただラッキーというふうには生きられない運命にいることは、ある意味で覚悟しています。

「自分がどう生きたいか」を自分に問いかけることが必要

作家を例にとってお話ししましたが、どんな人でも同様で、人生の課題がネガティブに出る人もいれば、ポジティブに出る人もいます。

ネガティブな形で出る課題とは、例えば、自分が病気になるといったことです。ポジティブな形で出るとは、成功したけれどすごく空虚な人生になってしまうといったことです。これは、両方とも大変だといえます。

 人生のポジティブな要素とネガティブな要素を統合し、課題がある中で進んでいくことは、誰もが避けることはできません。そして私たちが問われるのは、「その課題にどう対処するか」だと思います。

 今回の人生、黒で行くのか白で行くのかは選択の問題で、私自身は、それと同じような感覚でポジティブとネガティブをとらえています。

 どちらの現実に直面しても、冷静に人生全体を見通して、「自分はどう生きたいか、何をしたいのか」という観点から対処していく知性と感性があれば、乗り越えていけるでしょう。

 これからも激動の時代が続くと思いますが、何が起きたとしても、どう対処するかは自分で選べるのです。

●本記事は『ゆほびかGOLD』vol.34(2017年刊)からの抜粋です。