片づけが苦手なのは脳のバランスの悪さが原因
「私は生まれつき片づけが苦手なので……」こう思っている人が多いのではないでしょうか。
実は、私もそうでした。片づけができないせいで、よく母親から「だらしない」と怒られていました。「だらしない人は、世の中に出るとバカにされるよ」と脅かされるのですが、「よし、片づけよう」と奮起してもなかなか片づけられませんでした。
勉強ができる友人の家に遊びに行くと、部屋がきれいに整理整頓されていました。彼のノートを見ても、ものすごくきれいにまとめられています。
それに比べて、私は部屋もグチャグチャでノートもメチャメチャ。教科書を開いて勉強しようと思っても、すぐに気が散って10分も集中できません。
「自分は頭が悪いから片づけが苦手なんだ」と思っていました。
しかし、大人になり、心理学を勉強するようになると、「頭が悪いから片づけられないのではない」ということがわかりました。
一般的には、計算や記憶、物事を理解する力が優れていると「頭がいい人」と思われます。このような人は知能テストでいうところの「言語性知能」が発達しています。
一方で、「パズルを組み合わせる」とか「仕事の優先順位をつける」などが得意な人は、「動作性知能」が優れています。
この2つの知能のバランスが悪い状態、つまり、どんなに言語性知能が高い、頭がいい人でも、動作性知能が発達していなくて物事の優先順位がつけられないと、片づけられなくなってしまうのです。
例えば、私の場合、「片づけよう!」と思っても、そこに雑誌や本が落ちていると、「雑誌や本に対する興味」のほうが上回ってしまって、片づけができなくなります。
心当たりのある人も多いのではないでしょうか。このちょっとしたことで集中力が保てなくなってしまう状態が、自分の中で上手に優先順位をつけられていない状態なわけです。
こういう人は、「たいせつな物と捨てる物の優先順位」をつけるのも苦手です。「いつか必要になるかも?」と思ってしまい、ゴミのような物でも捨てられません。
実は完璧主義者は片付けられない
あと、片づけられない人に意外と多いのが「完璧主義者」です。私はこれにも当てはまります。
「えっ、完璧主義なんだから、片づけないと気が済まないんじゃないの?」と疑問に思うかもしれませんが、それはこういうことです。
例えば、「本が本棚からあふれているので片づけよう」と思ったとします。その中にまだ読んでいない本もある場合、完璧主義者は一気に処分できません。きちんと「いる本といらない本を選別する」必要があり、それには「本を開いて内容を確かめないと無理」となります。
さらに、「いらない本も捨てるのはもったいない。古本屋に売りたい」「こんなに大量に売るとなると、引き取りに来てくれるところを探したい。できれば、なるべく高く売りたい」などと、頭の中で計画しているうちに疲れてしまう。
こういうパターンです。「完璧にできない」と頭で考え、疲れてしまい、いつまでも部屋は汚いまま、となってしまうわけです。
優先順位を考えてもチンプンカンプン
こうしたことが当てはまり、「片づけられない!」という人は、知能のバランスの問題なので、いくら「優先順位をしっかり決めましょう」と言われても、うまくいきません。
優先順位を判断しようとすると、脳は勉強したことのない化学式を読んでいるように、チンプンカンプンな状態になってしまいます。
「いらない物から分別しましょう」と言われても、脳が「全部いるもの」と自動的に判断してしまうので、同じことなのです。
しかし、そんな私も、今は片づけられるようになっています。このような人でも、片づけられるようになる方法があります。その話をする前に、もう少し脳の仕組みについて、お話ししたいと思います。
脳のネットワークから嫉妬が伝わる
「片づけられない人には、完璧主義者が多い」という話をしましたが、もう一つ、「完璧主義者は嫉妬を受けやすい」というのも、片づけられない理由です。
実は、私は大学時代、実家から離れて母親の意識が届かないところに住んだら、一時的でしたが、急に片づけができるようになるという不思議な体験をしました。あれほど捨てられなかった物や本が、なぜかどんどん捨てられるのです。
部屋には無駄な物がいっさいなくなり、人が歩いた跡がすぐにわかるほどの絨毯の目がきれいに揃う、それこそ完璧な部屋の状態になりました。
大人になった後、「なんで実家にいるときはできなかったんだろう?」と考えると、「脳のネットワーク」と「嫉妬」ということが自分の中でつながりました。
私を「だらしない」と怒る母親も、実は物を捨てるのが苦手で、家の中はいつも物であふれていました。そんな家の中で、私が「母親よりも完璧に部屋を掃除しよう」とすると、言葉で伝えなくても、無線LANのような「脳のネットワーク」を通じて、母親に伝わってしまいます。
すると、母親は「私よりきれいに片づけるなんてずるい!」と「嫉妬の発作」を起こします。
嫉妬の発作とは、脳内の電流が「ビビビッ!」と過剰に発電しているような状態です。それが脳のネットワークを通じて私にも伝わってきて、「ビビビッ!」と母親の嫉妬の電流に感電してしまいます。
嫉妬の電流に感電した私は「めんどうくさい」という思考状態に陥り、「片づけができない」となっていたわけです。
これが、母親から離れることで、脳のネットワーク圏外になったようで、「完璧に掃除しよう」と思っても、嫉妬の電流が飛んで来なくなりました。すると、片づけようとしたときに「めんどうくさい」という状態にならず、部屋を完璧に片づけられたというわけです。
嫉妬の発作は本人は自覚できない
人間の脳には、相手に注意を向けたときに、相手の脳の状態をマネする「ミラーニューロン」という神経細胞があります。
例えば、教室で隣の席の子が先生から「ダメでしょ!」と怒られたとします。すると、私も怒られたようなダメージを受けて、ショボンとなってしまいます。このような状態のことで、これが「脳のネットワーク」と呼ばれるものです。
ある方が、こういう話をしてくれました。テレビでアメリカの有名な女性歌手が「自分が嫉妬するようなコンサートを作るように心がけている」と話しているのを見て、「なるほど!」と思ったそうです。
他人のことを気にしないためには、「自分が嫉妬するようなことをすればいいんだ!」と気がついたのだそうです。
ここで、その女性歌手が「みんながびっくりするくらいのものすごいコンサートをやろう!」と頭の中でイメージしたとします。すると、その歌手が「みんな」と思い浮かべた人たちへ、脳のネットワークを通じてそのイメージが流れていきます。
すると、そのイメージを受け取った人たちは、「そんなすごいコンサートをするなんてずるい!」とばかりに、「ビビビッ!」と脳の発作を起こしてしまいます。
これは、脳のネットワーク内の話なので、本人たちは自覚できません。でも、この嫉妬の発作が女性歌手に伝わってしまうと、女性歌手の頭の中で「こんなことをやったらマスコミにたたかれる!」とか、「インターネットで批判されて参加者が減る」などの不安が浮かんできてしまい、あれもダメ、これもダメとなって、魅力的なコンサートができなくなってしまいます。
意識をほかの人に向けないのがコツ
片づけも、これと同じです。私の場合、「母親に怒られないように片づけよう」と思ったので、「完璧にきれいになった部屋のイメージ」が脳のネットワークで母親に伝わり、それが母親の嫉妬の発作を起こしたのでしょう。
「私より部屋がきれいになるのはずるい! ビビビッ!」となるのは、脳のネットワークなので、本人は意識できないのです。
「親は子どもが片づけるようになったらうれしいのでは?」と普通は考えそうですが、実は逆です。子どもは親から怒られるほど「完璧に片づけなきゃ」となり、「母親が片づけたよりもきれいな部屋にしないと」とイメージしますから、余計に母親の嫉妬の発作は強くなるのです。
この嫉妬の発作には、じゅうぶん気をつける必要があります。片づけに限らず、あなたが「めんどうくさいな」「うまくいかないな」と思ったら、たいていの場合、「脳のネットワークで誰かに嫉妬されている」と思って間違いありません。
例えば、きれいな格好で友達に会いに行きたいと思うのに、「めんどうくさい」と感じたとします。これは脳のネットワークから「私よりもきれいな格好をするなんて!」という友達の嫉妬が「ビビビッ!」と伝わってきて、感電してしまっている可能性があります。
嫉妬の発作に感電しないためには、何事も「自分に嫉妬するような」ということにフォーカスすることがポイントになってきます。先ほどの女性歌手のように「自分が嫉妬するようなコンサート」とすることで、「みんな」という脳のネットワークではなく、「未来の自分」だけに注目し、みんなからの嫉妬の発作を避けられるわけです。
次に、嫉妬の発作による感電を防ぐ「魔法の口ぐせ」を紹介していきます。
片づけ上手になると人生も大好転!部屋が勝手にキレイになる「魔法の口ぐせ」
これまで話してきたように、私はほんとうに片づけられない人でした。その理由の一つに思い当たるのは、自分でわざわざ「片づけられなく暗示をかけていたのでは?」ということです。
私は子どもの頃から友達に「お前の母ちゃんは家をきれいにしてそう!」とうらやましがられると、なぜか「そんなことないよ。家の中、けっこう汚いから」と言っていました。
これは今になって、「友達から嫉妬されて攻撃されるのを恐れていたんだ」ということがわかりました。「お母さんが家事が得意」とか、「家の中が整っている」と友達からうらやましがられて嫉妬され、仲間外れにされるのが怖くて、つい「片づけが苦手」と言ってしまう。
「片づけが苦手」と友達に言うと、それが自分への暗示になってしまい、ほんとうに「片づけが苦手でできない」になります。「片づけが苦手」が口ぐせになると、ずっとそのまま暗示にかかり続けるのです。
この暗示を解く魔法の言葉をお教えします。
「人は私に対して無関心」
こう頭の中で唱えてください。すると、「あれ、なんだか息苦しさがなくなった」となると思います。
前項でもご説明したように、人間の脳は注意を向けた相手とネットワークでつながり、相手の緊張感が伝わってきたり、イライラしている人の不快な感覚が伝わってきたりします。ですから、「嫉妬が怖い」とおびえると、「嫉妬してくる人」に無意識に注目することになり、嫉妬してくるような人と脳のネットワークでつながってしまうのです。
そこで、「人に対して無関心」と唱えます。すると、自分に対して無関心な人と脳のネットワークがつながるのです。あなたに無関心な人は嫉妬しませんから、嫉妬の電気ショックも受けなくて済みます。
体も次第に動くようになり、「片づけが苦手」を克服できるようになるのです。
自然とゴミを拾う自分に気がつく
最初の項で、「頭がよくても、知能のバランスが悪いと片づけられない」という話をしました。次は、その知能のバランスを整える魔法の言葉について、お話しします。
言語性知能だけが高いと、やるべきことはたくさん考えられますが、それに優先順位がつけられなくなってしまいます。動作性知能が言語性知能についていけないと、「何から優先していいのかわからない」状態になり、固まってしまって、片づけができなくなるわけです。
イメージとしては、言語性知能が高ければ高いほど、「ジグソーパズルのピースが細かくてたくさんある」という状態、動作性知能が高ければ高いほど、「視力がよくて、よく見える」という状態になります。
ですので、言語性知能が高くて、動作性知能がそれについていけないと、「細か過ぎてよく見えず、ピースのどれとどれをくっつけたらいいかわからない!」となってしまうのです。
こういうときは、次の魔法の言葉を唱えてください。
「片づけなければをやめる」
これは片づけることを考えることも、実際に片づけようという努力もしない、ということです。
「片づけようと考えなければ、片づけられないでしょ」と思うかもしれませんが、家に帰ってきたときなど、まず「片づけなければをやめる」と唱えましょう。
すると、一時的にでも片づけのことを考えるのが止まるので、「パズルのピースが細かくならない」という感じがすると思います。
こうなると、体が動くようになります。「あれ? いつもだったら部屋にゴミが落ちていても拾わないのに、自然と拾っている自分がいる」などということが起こります。
「片づけなければをやめる」と唱えることで、固まっていた体が自動運転のように動き出すのです。
意識をほかの人に向けないのがコツ
片づけができなかったときと、できるようになったときとの明らかな違いは、「人間関係」にあります。
私自身、片づけができるようになってから、人前でおどおどしなくなりましたし、人から嫌われることを恐れなくなりました。人間関係面で大きな変化があったわけです。
これは「過去の自分と脳のネットワークでつながった」からだと私は考えています。片づけられなかったと悩んでいた過去の私と、片づけられるようになった現在の私とがつながり、過去の私が現在の私の影響を受けて、「こう片づければいいのか!」と、片づけられるようになったからだと思うのです。
そう、片づけられるようになると、「過去が変わる」のです。もう少し正確に言うと、「過去の記憶が変わる」ということになります。
現在の私が「片づけられるようになった!」となると、幼稚園の頃の私の脳がキャッチして、「片づけるのが楽しい!」となります。「片づけが苦手」だった過去の私がいなくなるのです。
過去の自分が変わることで、現在の自分も「どんどん自信がついてきた!」「人前で堂々としていられるようになった!」となり、さらに自信がつくことで、過去もどんどん書き換えられていきます。
自分に自信がついてくると、周りの人の記憶も、それまでとは違ったものに変わっていきます。そうすると、仕事面でも恋愛面でも、あらゆる面で人生が好転していくのです。
片づけられるようになると、「片づけられなかった自分」に縛られ、精神的に止まっていた成長が促され、「本来の自信がある自分」に変わる。片づけられるようになることで、「過去の自分」を救うことができるのです。