おなかを押すと痛い場所があるなら要注意
コロナ禍の2年半、当院にも何十人もの新型コロナウイルス感染症にかかったという患者さんが来院されました。
これらの患者さんに共通している体の特徴が「おなかの張り」です。
おなかは、触ったときに適度な柔らかさがあるのが理想的な状態です。しかし、コロナにかかった人は、普段から、おなかに硬く張った部位がありました。
パンパンに張っている、ごく狭い範囲がカチコチに硬いなど違いはありますが、これらは胃腸が悪い、あるいは疲れたり弱ったりしていることを示します。
その度合いが強ければ強いほど、39度を超える高熱が出たり、熱が長引いたりと、コロナの症状が重くなる傾向がありました。
ですから私は、「コロナは胃腸が悪いとかかりやすく、悪化しやすい病気」という仮説を立てています。
糖尿病や肥満の人は、コロナにかかると悪化しやすいことが知られていますが、経験上、これらの人は胃腸がガチガチに硬く張っています。そのことと重症化のしやすさには関連があるのでは、と思います。
これは考えてみれば、当然のことかもしれません。なぜなら、胃腸の働きが低下すれば、食べても栄養は吸収できず、体力が落ちます。その結果、コロナにかかりやすく、症状も重くなりやすいのではないでしょうか。
硬くなった胃腸をほぐすとよくなるのはその反対で、胃腸の働きが正常化して消化吸収がよくなり、体力が戻る結果と考えられます。
要は、体力があれば、本来備わっている自然治癒力が正常に働くので、コロナにかかりにくく、かかっても重症化しにくくなるのです。

胃腸の張りを取れば症状は改善する
胃腸の硬さや張りは、本人に自覚がないものです。現代は、食べすぎで普段から胃腸に負担をかけている人が非常に多いからでしょう。
また、食べすぎとは無縁でも、神経性胃炎のように、ストレスなど精神的な要因で胃腸の働きが悪くなる人も多くいます。
この場合も、やはりおなかが硬くなっており、コロナに感染しやすい点に変わりはないかもしれません。
胃腸が悪いと、倦怠感やブレインフォグ(頭に霧がかかったようにぼんやりして、思考力や集中力が低下する症状)、息切れ、関節痛といったコロナ後遺症も出やすくなります。
しかし、そうした後遺症の症状であっても、胃腸の張りが取れれば、そこから改善が期待できます。
そこで、今回はそれを自分で行えるセルフケア「おなかほぐし」をご紹介します。
やり方は、座った姿勢でおなかの硬い部分に手を当て、呼吸に合わせて、上体を倒して戻すことを数回繰り返すだけです。
おなかの張りが強いと、上半身を倒し切ったときに、強い痛みを感じるかもしれません。しかし、終了後はスッキリして、体が楽になることを実感できるはずです。
効果を得るためのポイントは、以下の4つです。
①刺激する部位をできるだけ正確に探し当てること。実践前に仰向けになり、おなか全体をまんべんなく押して、他と比べて硬い、もしくは痛いところがあれば、そこを刺激します。
ちなみに探すときは、人さし指から小指の4本の指をおなかに軽く当て、もう一方の手で上から押すと、ちょうどいい力加減になります。
②上体を倒すとき、手でおなかを押さないこと。おなかほぐしでは、上体を倒す動きでおなかの深部をほぐすので、手の力は不要です。
③できるだけ長めに息を吐くこと。これはゆっくり上体を倒すことを意識するとよいでしょう。
④部位によって手の形を変えること。おなかの上部は指で、下腹部はこぶしで刺激すると、硬い部位がほぐれやすくなります。下腹部は、おなかと太ももでこぶしを挟むつもりで行うといいでしょう。
なお、行う回数は症状に合わせて調整してください。
症状が重めの人やおなかの張りが強い人は、上体を倒す回数を増やすか、朝昼晩の1日3回行うといいでしょう。
また、おなかほぐしはコロナ後遺症だけでなく、コロナそのものの感染予防や重症化予防にも役立ちます。食べすぎ・飲みすぎの自覚がある人やストレスが多い人は、胃腸の機能を整えるためにも実践するといいでしょう。また、便秘の人にもお勧めです。
胃腸の張りを取る
おなかほぐし のやり方


①ひざを開いて正座をする。正座ができない場合は、足幅を開いてイスに座る


②おなかの痛いところ・硬いところに手を重ねて置き、おなかを押さえ、「ハア~~」と口から大きく息を吐きながら、上半身を倒す。ゆっくり倒すのがコツ

③上半身を倒し切ったら、3秒ほど停止して、ゆっくり上体を起こしながら、鼻から息を吸う
※2~3を7回ほど行う
嗅覚・味覚障害には太ももへの刺激が有効
そのほか、胃腸の働きを整える方法として、「断食」と「足湯」もお勧めです。
断食には胃腸を休めて、疲れを取る効果が期待できます。コロナで入院したAさん(50代・男性)は、人工呼吸器の装着が必要となる寸前まで、酸素飽和度(酸素を体内に取り込めているかを示す数値)が低下。
その時点で電話相談を受け、断食を勧めたところ、酸素飽和度が改善し、その後は大事に至ることなく退院されました。
なお、断食は完全に食を断つ必要はありません。量を少なめにするだけで効果があります。
感染中と感染後しばらくは、脂っこいものや味の濃いものなどを避け、水分は2ℓを目安にしっかりとりましょう。
次に足湯ですが、ひざから下には胃腸のツボがたくさんあります。これらのツボを適温より少し熱めのお湯(45℃くらい)で温めると、胃腸の働きがよくなります。
Bさん(50代・女性)はコロナ感染してから、手足が強烈に重だるくなり、つらくて眠れなくなっていたのですが、足湯をお勧めしたところ、実践して即だるさが解消。その日からグッスリ眠れるようになったそうです。
それから、味覚・嗅覚障害がある人の体の共通点は、滑舌が悪く、胆のうが腫れていることです。そこでお勧めなのが、太もも外側をたたく「太ももトントン」です。
ここには、「胆経」という経絡(生命エネルギーの通り道)が通っています。そこをたたいてほぐせば、胆のうもほぐれます(滑舌もよくなります)。
これまでの私の経験では早い人は3日、遅い人では3週間~2カ月ほどで症状が改善しています。
ぜひお試しください。
滑舌がよくなれば効いている証拠!
太ももトントン のやり方



①ひざを立てて座る。片方の手はひざを押さえる

②ひざから太もものつけ根に向けて、4カ所に分けて10回ずつ叩く