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【鞍馬寺】【五月満月祭】【ウエサク祭】京都の古刹に伝わる神秘の力で願いが叶う! 心身が癒される!(その③)


京都の名刹のなかでも歴史が深く、ひときわ神秘的な雰囲気が魅力の鞍馬寺。毎年5 月に開催される秘儀・五月満月祭には1000 人を超える人々が訪れます。40年もの間、鞍馬寺にお勤めしている曽根祥子さんに、鞍馬寺特有の尊天信仰について、そして大人気の五月満月祭について伺いました。

●本記事は『ゆほびかGOLD』2020年6月号の記事を再編集したものです。

鞍馬寺の五月満月祭(ウエサク祭)の開催日
5月の満月日(満月になる前)に執り行われます。2023年は5月5日(金)19時~ 開催の予定です。
●公式サイト https://www.kuramadera.or.jp/

●語り
鞍馬寺学芸員 曽根祥子

③室町時代から続く秘儀・五月満月祭

生命力あふれる新緑の季節、5月の満月の夜に鞍馬山のパワーは最高潮に達します。この特別な夜に開催されるのが、すべての目覚めと平安を皆で共に祈る「五月満月祭(ウエサク祭)」です。

当日は夜も開門され、本殿金堂付近が夕方から多くの人でにぎわいます。「以前は密教的な秘儀とされていましたが、大杉権現を刻んだ護法魔王尊像のお披露目とあわせて昭和29年から一般にも公開し、共にお祈りすることになりました。

祭事の歴史は古く、寺に『宝徳二年卯月十五日』(新暦の5月の満月)と銘の入った青銅の水器が残っておりまして、五月満月の秘儀に使われていた器だろうと言われています。満月に灯を捧げ、器に満たした清水をいただく祭事として室町の頃から行われていたようです。

戦後になって、東南アジアの仏教諸国やヒマラヤ、チベットなどでも、少し形式は異なりますが、5月満月の夜にお釈迦様を讃えて祝う祭りが行われているという情報が入ってきました。

ウエサカー、あるいはヴィサカの祭りと呼ばれるものですが、鞍馬のこの地で行われてきた五月満月の秘儀と相通じるものがあると初代貫主が考え、五月満月祭と呼称し、一般にも公開するようになりました」

公開当時は少人数の信者中心に行われていた五月満月祭ですが、ブログやSNSなどで情報発信が盛んになるにつれ、評判が評判を呼んで規模がどんどん膨らみ、現在では最大1500人もの人が集まる祭事になっています。

自己の内面と向き合いたい人やスピリチュアルな世界に魅ひかれる人などが日本各地から集まり、外国からの参列者や、リピーターも少なくありません。

以前は儀式が深夜に及んでいましたが、最近では22時過ぎに終了し、叡山電鉄の最終電車に間に合う構成になっています。

天界と最もつながりやすい一夜に一心に願う

五月満月祭の様子。厳かな雰囲気が魅力

祭儀はまず、大地の力の象徴である護法魔王尊への祈りで自分自身や大地を清めます。
続いて、本殿内陣の不断の灯を各々のロウソクへ移します。内なる尊天を象徴する「心のともし灯」は毘沙門天王の象徴でもあります。

全員に灯が行き渡ると、瞑想が行われ、灯を高く掲げてお加持が始まります。月下のもと、会場には声明が響き、ロウソクの灯が広がり神秘的な空気に包まれます。皆の祈りが一つにつながり、天空を越えていくかのようです。

最後に満月の光を受けた明水を皆で分かち合い、これで儀式は終了です。観音様の慈愛に満ちた明水を頂くことで、自分たちの心を慈愛で満たします。

5月の満月の夜は天界から強いエネルギーが降り注ぎ、ダイレクトに各々の身体に入ってきます。その力をプラスの方向に増幅させるべく、参列者は身を慎しみ、尊天様の御心に近づけるよう祈るのです。「皆さん真剣な気持ちなのが伝わってきます。厳粛な雰囲気に包まれるので、それぞれに何かを感じておられるのでしょう。

五月満月祭の日は、『清らかな心にある願いを一つだけ一心に願えば叶えられる』と言われています。

自らの霊性を高めるべく自分自身と向き合う時間

「お配りしているお願いごとを書く用紙には、世界平和、皆が仲良くなるように、つながりますようにといったお願いごとを書くかたも多いですね。それが内なるご尊天の心や霊性への気づきそのものですから、その気持ちを日々の生活に持ち帰っていただきたいです」

自分の霊性と向き合い、高めたいという真摯な思いが、尊天様へと祈りを届けるのでしょう。また、たいせつなのは、祈りを捧げた後はすべてをお任せすることです。

「ご尊天は広大無辺な力をお持ちなので、衆生のお願いをお聞きくださいますが、願いの成就に執着を持たないことです。自然のなすに任せるようにご尊天にすべてを委ねれば、もっともよいようにしてくださるのです」

鞍馬寺が説く羅網の教えとは?

本殿金堂のご本尊の前に、ひし形のモチーフが縦横につながった飾りが連なっています。これは羅網と呼ばれており、鞍馬寺ではこれに深い教えを込めています。

本殿内部の羅網(らもう)。森羅万象が響き合うさまを表している

「鞍馬寺では、羅網は万物がつながり合い、響き合っている宇宙の姿を表しています。つながり合ったものは、一つを動かすと全体が動きます。森羅万象のいのちがつながり、時空を超えて結ばれ、生かされている。
その一つである私たち一人ひとりが強い輝きを放てば、世界全体が輝く方向へ進みます。その理ことわりを、鞍馬寺の理念としているのです」

五月満月祭はその羅網の教えを体現した祭事だと言えるでしょう。羅網の一つである、個々の祈りがつながり響き合う。その祈りはすべてのいのちが輝く世界に通じているのです。


最後に、コロナ禍の折に伺った、自宅からでも五月満月祭に参加する鞍馬寺直伝の方法をご紹介いたします。