【六道輪廻】輪廻転生を経て次に住む六つの世界
ここではまず、仏教の世界観をおさらいしましょう。日本の仏教では、人間をはじめとするすべての衆生は、死後、中陰という存在となって十王の裁きを受け、輪廻転生して次に住む世界が決められるとされています。その世界は地獄を含めて六つあり、これを六道輪廻といいます。
人間道に決まれば再び人間として転生することになりますが、行いが悪ければ地獄道に落とされ、まさに気が遠くなるほどの長い間、とてつもない痛みや苦しみにさらされ続けるというわけです。
もっとも、実はこの六道は、現世での心の状態を示すともされます。人として生きるうちには、心がさまざまに揺れ動き、移り変わります。罪を犯したり、心ないことをしてしまったり、享楽にばかり興じてしまったり、食べて寝るばかりの生活や暴飲暴食をしてしまったり、もろもろの欲に翻弄されてしまったり。
つまり、いわゆる輪廻とは生まれ変わりばかりを指すのではなく、自分の心の状態が移り変わることをも示すのです。自分は今、どこにいるでしょうか。その問いを、常に心に置くといいでしょう。
輪廻の六道はいずれも苦の世界
六道の中では、一見すると天道がよさそうに思えます。が、これも煩悩という苦から逃れられているわけではありません。仏教では、輪廻の六道はいずれも苦の世界ととらえられ、この輪廻の繰り返しから、涅槃や彼岸と呼ばれる悟りの世界への脱出、すなわち解脱することを最終的なゴールとしています。
そして、悟りを得られる、言い換えるとゴールへの道があるのは、仏の教えと出会うことのできる人間道だけなのです。
日本の仏教のなかで浄土真宗は、信者は死後ただちに阿弥陀如来のお力で浄土に導かれると説きますが、六道などの世界観は同じです。没後の法要も、阿弥陀如来に感謝し生き方を考える機会として営まれます。
さて、その六道の中でも、もっとも下位に位置付けられ、悪行をなした者が罰を受ける世界とされるのが地獄です。次回は「八大地獄」について見ていきます。
(次回④に続きます)