長時間の手術でも疲れなくなった
私は脳神経外科医として治療にあたるとともに、脳の健康維持に役立つ食べ物や生活習慣を積極的に試し、よい方法を患者さんに勧めています。
そんな私が毎日欠かさず取り、多くの患者さんにお勧めしているのが、すりおろしたニンニクをオリーブオイルに浸して作る「ニンニク油」です。
ニンニク油を知ったのは、今から十数年前のこと。外来に通院されていた患者さんが、「これを飲んで記憶力が改善しました」と、持って来てくれたのです。
当時の私は、深刻な体調不良に悩まされていました。
年のせいか、不摂生のせいか、体力も気力も衰え、日々の仕事をこなすのが精一杯。脳の手術は短くても３～４時間、長ければ半日がかりになることもあります。長時間の手術を終えると疲れ果てて、引退の二文字が頭をよぎったこともあるほどでした。
ところが、ニンニク油を飲み始めたとたん、気力・体力ともに充実し、疲れなくなりました。長時間の手術でも疲労を感じたり、集中力が途切れたりすることなく、朝から晩まで元気に働けるようになったのです。
そこで、患者さんたちにニンニク油をお勧めしたところ、頭痛、めまい、高血圧、認知症の初期症状、脳梗塞（脳の血管が詰まって起こる病気）の後遺症などが改善した例が続出。画像検査で脳の血流改善が認められた例や、手術で取り切れなかった脳腫瘍が消失した例もあります。
今では、脳の手術を行う前後に、患者さんにニンニク油を飲んでもらいます。術後の感染症の防止や体力の回復、放射線療法や化学療法の副作用の軽減に役立つからです。
ニンニク油を飲んでもらうことで、治療成績の向上にもつながっています。「脳の特効薬」と言っても大げさではないほど、ニンニク油には多大な効果があります。
アホエンには抗酸化作用や抗がん作用がある
ニンニク油が脳や体に効く秘密は、ニンニクに含まれる「アホエン」という物質にあります。
アホエンについては、多くの研究があり、病気や老化の元凶といわれる活性酸素を消去する抗酸化作用、血液成分の一つである血小板の凝集を抑制して血流を改善する作用、血中コレステロール値の改善作用、殺菌・抗ウイルス作用、抗がん作用など、多彩な健康作用があることがわかっています。
脳に対する注目すべきアホエンの効果は、脳機能の改善作用です。これは動物実験でも、実証されています。薬物で記憶力を低下させた認知症のモデルマウスに、アホエンを与えたところ、記憶力が改善し、迷路を通過する時間が短縮されました。
アホエンには、記憶や学習に関連する、アセチルコリンという神経伝達物質が脳内で減少するのを防ぐ作用があると報告されています。これが、記憶力の改善や、認知症の予防、症状の進行を遅らせることにつながると考えられます。
さらに、アホエンが脳によい影響をもたらすメカニズムとして、脳の微小循環（毛細血管の血流）の改善も大きいと私は考えています。
ストレスを受けると脳の血流が低下し、血流が悪くなれば当然、脳の働きも低下します。アホエンには全身はもちろん、脳の血流をよくする効果があります。そのため、ニンニク油を継続して取ることで、脳の血流が改善して脳機能が底上げされ、ストレスに強い脳になるのです。
料理に使うならサラダなど加熱しないものに
アホエンは生のニンニクそのものには含まれません。アホエンは、ニンニクのにおい成分であるアリシンが変化して得られる成分です。
アリシンは、ニンニクを刻んだり、すりおろしたりすることでアリインという酵素と反応し生成します。そのため、ニンニク油を作るときは、少々手間がかかっても細かく刻むか、すりおろすことが重要なのです。また、アリシンは油によく溶ける性質があります。
アリインがじゅうぶんに蓄積されるには、ニンニクを粉砕後に室温で少なくとも２時間置くのがよいこともわかりました。そのため、ニンニクをすりおろした後、室温で２時間置き、オリーブオイルを入れたら室温で３～５日置く方法をお勧めしています。ニンニク油は、冷暗所で１カ月を目安に保存可能です。
摂取量は、１日にティースプーン３～４杯がお勧めです。パンやおかずにかけるほか、料理にも使えますが、加熱するとアホエンが壊れてしまうので、サラダなどに使うとよいでしょう。
ちなみに私は、ニンニク油を毎朝ティースプーンに４杯、手術を行う日はスプーン８杯分、そのまま飲んでいます。おかげで、半日がかりの手術で脳と体を酷使しても、一日じゅう疲れ知らずです。
ニンニク油の作り方
■材料（作りやすい分量）
オリーブオイル 150㎖
ニンニク 3片
①ニンニクをすりおろす。そのまま室温で2時間置く
②密閉できる保存容器にオリーブオイルを入れ、そこに①のニンニクを加える。そのまま室温で3～5日置く
③ ②をこして、密閉できる保存容器に入れたら出来上がり。冷暗所で保存し、1カ月を目安に使い切る
④1日にティースプーン3～4杯を目安に摂取する。そのまま飲むほか、パンやおかずにかけたり、サラダなど加熱しない料理に使ったりするのもお勧め
