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【ニクセン】とは? 幸せの国・オランダ発! ”何もしない習慣”で脳が整うと医師も激賞(前編)

1分間「ぼーっとする」だけで脳が休まり焦りも不安も解消! 夜もぐっすり眠れる

私はワーク・ライフ・バランスで世界1位、世界幸福度で5位(順に2019年OECD調べ、2021年国連調べ)のオランダに住んでいます。「ニクセン」とはオランダ語で、「何もしない」ことを意味する言葉。最近では「ぼーっとする」オランダ発のライフスタイルを指す言葉としても知られています。

お天気のいい日に芝生の上に寝転がったり、ベランダのイスに座って空を眺めたりして、のんびりとした時間を持つことで、自分を義務感や予定などから解放するのがニクセンです。

1日のうちに短時間でもいいのでニクセンを取り入れると、自律神経が整い、血流がよくなり、体の回復力が向上するといいます。

オランダでは小学校の宿題がなく、部活動もありません。子どもの頃から「休むときは徹底的に休む」習慣が自然と身についているようです。

だから、働くときは集中し、自由時間にはのんびりするという、メリハリをつけるのが上手な人が多い。天気のいい週末には、芝生の上などでのんびり過ごしている人たちをあちこちで見かけます。

2019年に『ニューヨークタイムズ』(アメリカの権威ある新聞)がニクセンについて取り上げると、リラックス法の一つとして、欧米で話題になりました。

心臓のバクバクがすぐに落ち着いた

私自身はというと、当時すでに15年もオランダで暮らしていたにもかかわらず、まったくニクセンができていませんでした。日々、仕事・家事・育児で忙しく、暇な時間ができても、あれこれとやることを探してしまい、ぼーっとする時間なんてなかったのです。

それでも、「私もやってみたいな」とニクセンを意識的に取り入れるようにしたところ、徐々に、日常の中で焦りや不安を感じることが少なくなり、体が疲れにくくなり、仕事での集中力がアップし、夜はぐっすりと眠れるようになってきました。

私が初めて、ニクセンをやってみたときの話です。私はライターをしているのですが、仕事の締め切りが近づくと、心臓がバクバクしてきます。そんなとき、試しにぼーっと窓の外を眺めてみると——空には雲が浮かび、鳥がいました。木々の葉が揺れていることにも気づきました。

仕事から離れられたのは、おそらく1分にも満たないわずかな時間でしたが、それでも心拍数は落ち着き、焦りが消え、その後、また集中して仕事をすることができたのです。

ニクセンを増やすカギはスマホの使い方のルール

このようにニクセンは、短い時間でもできて、効果を発揮します。例えば忙しい人なら、たった1分、仕事の合間に窓の外をぼーっと眺めるだけでもニクセンになります。

ほかにも、最近私が仕事の合間に取り入れているニクセンは、音楽を聴きながらぼーっとする、お香をく、お花を飾る、ちょっとうとうとする、食器を洗ったり洗濯物を畳んだりなどの単純作業、日光浴……挙げだすといろいろありますね。あなたが、日常的に取り入れやすそうだと思える例はありますでしょうか。  

また、朝、家族よりも少し早く起きたときにもニクセン。白湯を飲んで、10分ほど空を眺めるのは至福の時間です。こうして自分と向き合うことで、1日を前向きに過ごせるようになるのです。

一方で、スマホやパソコン、テレビを見るのはニクセンになりません。ニクセンは頭をからっぽにすることなので、画面から情報を得るのは、脳の休息とは真逆です。

1日じゅう、暇さえあればスマホやパソコンを見ている人も多いようですが、画面を見る時間を決める、寝る前と起きてからの30分間は触らない、緊急の連絡がなさそうな日は思い切ってオフにするなど、自分なりのルールを決めておくと、ニクセンできる時間がもっと増えるのではないでしょうか。

日本人には勤勉な人が多いので、ニクセンが苦手な人、何もしないことに抵抗がある人は少なくないことでしょう。何もしないということに最初は戸惑うかもしれませんが、その効果を知ると罪悪感がなくなります。いつでもどこでも、一人でもできて、脳も心も体も整うのがニクセンです。

ぜひご自身のやりやすい形で、日日の生活に取り入れていただければと思います。

(後編:医師解説に続きます)