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【ニクセン】とは? 幸せの国・オランダ発! ”何もしない習慣”で脳が整うと医師も激賞(後編)

前編から読む

何もしない時間には確かな効用がある

私は午前の診療が終わった昼休みの時間に、イスに座って足を前に投げ出し、ぼーっとする時間をとるようにしています。もちろんこのときスマホやパソコンは見ません。

また、月1回、あえて何も予定を入れない休日をつくり、積極的に何もしないことを心がけています。これはまさに「ニクセン」と言えるかもしれません。何もしないことは、実は脳にとてもいい影響を与えてくれます。

例えばモノでいっぱいの部屋には、新しいモノを入れることができません。脳もそれと同じです。やらなければいけないことがいっぱい、考えなければいけないことがいっぱいの脳には、新しいこと、楽しいことがひらめく余裕がないのです。

だから、何もしない、何も考えない時間を積極的に作ることがたいせつなのです。短時間でも何もしない時間を挟むと、考えることと考えなくていいことの取捨選択がなされて、脳に空間が生まれ、新しいアイデアが入ってきたり、何かをひらめいたりしやすくなるのです。

何もしないことはいけないことだとネガティブにとらえる人も多いようですが、確かな効用があるのだとわかれば、罪悪感を手放すことができるのではないでしょうか。

私はあえて何もしない」ととらえてほしい

忙しくて余裕がない毎日を送っていると、疲れ果てて、脳や心身に不調をきたし、結果的に長い休養が必要になることもあります。

ニクセン、すなわち何もしない時間を取り入れるのは、脳と心身をメンテナンスして、前に進むエネルギーを蓄えるためのアクションなのだと、ポジティブに考えてみてはいかがでしょうか。

休むのを「他の人は前に進んでいるのに、私は何もしていない」ではなく、「他の人は前進しているけれど、私はあえて何もしない」ととらえるのがたいせつ。要は、休む許可を自分で自分に出してあげるということです。

セロトニンが放出され免疫力も上がる

ニクセンは医学的な視点からも、よい影響が期待できそうです。脳が休まると、リラックス感をもたらす神経伝達物質のセロトニンが放出され、自律神経のバランスが整います。

自律神経には、主に日中の活動時に優位になる「交感神経」と、主に夜間などの休息時に優位になる「副交感神経」とがあり、両者がバランスをとりながら、血液循環、呼吸、消化吸収、免疫、代謝、内分泌などの体の機能を調整しています。

セロトニンによって、交感神経が落ち着き、副交感神経が優位になると、血流がアップし、呼吸も深くゆっくりになります。その結果、不安やイライラ、腰痛や肩こりなどの痛み、冷えなどの不調は改善。免疫力も回復するので、感染症の予防に役立つ可能性もあります。

また近年では、ぼーっとしていると、脳のDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)という神経活動が活性化することが明らかになってきました。DMNが活発になると、直感力・創造力が高まり、いろいろなアイデアが浮かんできやすいといわれています。ぼーっとした時間を取り入れると、その後のパフォーマンスが各段にアップしそうですね。

自然の風景を見るのがお勧め

 短時間でも効果的に、脳をぼんやりした状態に持っていくには、手つかずの自然に触れるのがお勧めだと考えます。

自然の景色を眺めるなら、人工的に整えられた庭園よりも、人間の手が加えられていない、草木が自由に生えているような景色のほうが、ぼーっとするには適しています。あるいは、目を閉じて波の音を聴いたりするのもいいですね。ほかには、踏み台昇降やスクワットのような単純な動作の運動もいいでしょう。

なお、ぼーっとするというと瞑想を思い浮かべる人もいらっしゃるかもしれませんが、呼吸や今この瞬間に集中するような「マインドフルネス」と呼ばれるタイプの瞑想は、リラックスしづらく、DMNが長期的には低下する可能性が示唆されています。それよりは、考えが浮かぶままに心をさまよわせる「マインドワンダリング」のほうが、ニクセンらしいと考えます。

また、前編で山本直子さんも指摘している通り、脳を疲れさせないためには、スマホを見ない時間を確保することもたいせつです。夜間はスマホの電源をオフにするなど、デジタルデトックスを心がけましょう。

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