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べストセラー精神科医が指南!60歳・70歳から人生が楽しくなる7つの習慣その①「がまんしない」

心身が老いない7つの習慣
その❶「がまんしない」

心と体の大敵はストレス。生きたいように生きよう

私が高齢者専門の精神科医として患者さんの診療を始めたのは、三十数年前のことです。以来、6000人以上の高齢者を診てきましたが、同じ70歳でも、60歳そこそこに見える人もいれば、ヨボヨボで80代としか思えない人もいます。老いに負けず、心身ともに若々しくいるためには、どのような生活を送ればいいのか、長年考えてきました。

今回は、60代以降の人生を元気に若々しく過ごす秘訣を「7つの習慣」にまとめて紹介します。40代、50代の人にとっても、この先の生き方を考えるヒントになるでしょう。

第1の習慣として勧めたいのが、「がまんしない」こと。

現役時代は、いろんなことにがまんを重ねてきたと思います。がまんして苦手な人とつきあう。がまんして自分の言いたいことも言わない。がまんして欲しいものも買わない。嫌な仕事もがまんしてやる。そうした「がまん」は全て、非常によろしくありません。

高齢世代にとって、心と体のいちばんの大敵はストレスです。

そして、ストレスは往々にして「がまんすること」から生じます。

現役時代は、子どもや家族のため、世間体のため、社会的な立場があるから……と、がまんする理由があったでしょう。

しかし、年を取ると、がまんの意味も薄れてきます。仕事相手や上司から嫌われたら実害がありますが、近所の人から変わり者と思われても、大して害はありません。子どものためのがまんも、子どもが巣立ってしまえば必要ありません。

年を取ったら、もう遠慮や気がねはいりません。自分の生きたいように生きればいいのです。言いたいことを言っていいし、好きな服を着ればいい。嫌いな人には関わらず、好きな人、一緒にいて楽しい人とだけつきあえばいい。後半生の人生はできるだけがまんをしない生き方を心がけ、ストレスやフラストレーションをためないようにするのが、アンチエイジングと長寿の鉄則です。

コレステロール値やや高め、やや小太りの人が長生き

ダイエットのために食事をがまんしたり、高血圧のため塩分を控えたりと、健康のためにがまんを続けている人も多いでしょう。しかし、健康のためのがまんも、年を取れば取るほど意味が薄れていきます。

血圧や血糖値、コレステロール値、体重などをコントロールする目的は、動脈硬化の予防です。けれども、高齢になれば、誰でも加齢とともに動脈硬化が進みます。

コレステロールは、世間では悪者にされがちですが、細胞膜やホルモンの原料で、人間が生きていくうえで欠かせないものです。日本人を対象にした長期間の大規模追跡調査によると、コレステロール値がやや高めの人、やや小太りの人のほうが長生きすることがわかっています。

脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化が原因の病気が心配な人は、日々の数値コントロールに汲々とするよりも、定期的に脳ドックや心臓ドックを受けたほうがよほど効果的です。

そもそも、日本人の死因の第1位は、がんです。がんのリスクを高める大きな要因の一つが、ストレスです。がん大国の日本では、健康のために節制することによって得られるメリットよりも、がまんするストレスの害のほうが、はるかに大きい。体の健康を守るためにも、ストレスは避けるべきなのです。

食事、お金、恋愛、薬、元気でいられるほうが正解

長年、多くの高齢者を診てきて実感しているのは、心の元気や若々しさが、体の元気や若々しさに直結しているということです。

老化は、心から始まります。「もう年だから」と消極的になってしまったり、意欲や活力が低下したりと、気持ちが老け込んでしまうと、外見や体も老け込んでいきます。

ですから、高齢期にはぜひ、他人がどう思うか、世間の常識はどうか、といったことよりも、自分が楽しいか、快適か、毎日を生き生きと過ごせるかどうかを基準にしていただきたいと思います。

自分が好きなものや、食べたいものを食べる。お金だって、自分の好きなように使う。楽しく元気になれることに時間を使う。好きなところに出かけ、好きな仲間と交際する。ときめく相手が現れれば、恋愛を楽しむ。薬も、それを服用して体調がよいと実感できないのなら飲まない。何にせよ、自分が元気でいられることが、自分にとっての正解なのです。

この記事は『ゆほびか』2022年11月号に掲載されています。