Q④「稲荷神社」の基本的な参拝の作法について、一般的な神社との違いを含めてお教えください。
お願いごとだけでなく決意表明を忘れずに
参拝方法は、稲荷神社とそれ以外の神社とで特に違いはありません。私が推奨する参拝方法は、
①前日までに心の中で予約
参拝する神社を思い浮かべ、心の中で住所と名前、参拝日時を伝えておく
②自分の努力も必ず誓う
お願いごとばかりでなく、自分が頑張ることも誓う
この二点のみです。
神様も、他人の力でなんとかしてもらおうと思う人より、自力で頑張った先の、あと一押しを願う人への協力を好むということを忘れないでください。
また、「参道は端を歩く」「手水舎は左手から」などの参拝作法が言われますが、これらは人間が神様に失礼のないよう考えた作法です。実践するに越したことはないものの、間違ったり忘れたりしたからと言って罰が当たることはありません。それよりも、お願いごとと同時に決意表明も行う心がけがたいせつだと私は思います。
稲荷神社に限ったことではありませんが、可能な限り定期的にご挨拶するほうがいいでしょう。
特別なお願いをするのであれば、旅行のついでに立ち寄った著名な神社よりも、お参りに行きやすい場所の神社を選びましょう。
もちろん、観光や日頃の感謝を伝えるためということであれば、旅先の神社にもどんどん参拝してよいと思います。
願いが叶ったら、お礼の奉納をします。叶えてくださった神社に行けない場合は、近くの同系統の神社でもかまいません。神様どうし、連携していらっしゃるので、行いはきちんと伝わります。
Q⑤「稲荷神社」を調べると、「怖い」「軽々しく行ってはいけない」という噂がありますが、これはどういう理由があるとお考えでしょうか。
豊川稲荷の荼枳尼天様は祈願を成就する力が強い
「稲荷神社は怖い」「お狐様の祟りがある」などの噂をよく耳にします。
これらはおそらく、仏教系の神様を言っているのだと思われます。願いと見返りの約束があれば命をとることも辞さないほど、はっきりと目に見える結果をもたらしてくださることからそう思われるようになったと想像します。
特に豊川稲荷の荼枳尼天様は、その力が明確に現われるといわれています。なぜでしょうか。
もともと荼枳尼天は、インドの破壊神カーリーの侍女でした。その頃は人食いの性質があり恐れられていましたが、大黒天様の教えで福の神へと昇華し、今では人々に福を授ける神様になりました。その祈願成就力は強く、そのぶん大きな見返りを要求されるのではないかという説があるからです。
願いの内容に見合う約束のものを奉納する
願いごとをする際、お礼を何にするかは、祈願者ができる範囲で、願いの内容に見合うものを約束します。願いが叶ったらお礼の品を奉納し、それ以降も定期的に参拝すれば、ずっとご加護してもらえますが、お礼をしなかったり不義理したりすれば、それなりの形で返ってきます。
最近は核家族化や宗教観の変化で、代々祀ってきたお稲荷様をやむを得ず放置する家庭が増えているといいます。実際、家庭内トラブルに関する鑑定依頼のなかには、お稲荷様を放置しているかたが少なくありません。こうした背景などもあって、「お稲荷さんは怖い」というイメージが一人歩きしたのではないでしょうか。
「軽々しく行ってはいけない」と言われる由縁も、とりわけ仏教系の神様に一度お願いごとをしたらずっとおつきあいをする覚悟が必要なので、気軽な気持ちで行かないようにという戒めからかもしれません。お願いするときだけでなく、日頃からご挨拶するようにしましょう。
Q⑥「稲荷神社」にお礼参りに行く際の作法について、これだけでは注意しておくべきというポイントがあればお教えください。
願いを叶えていただいたらその後もおつきあいする
願いごとが叶ったら、お礼参りに行くということです。神道系の神社は一度お礼するのでもじゅうぶんですが、定期的に続けると今後もよい関係を築いていけます。
強力にお願いごとを叶えてくれる仏教系の神社は、一度願いを叶えていただいたら、生涯おつきあいすることをお勧めします。
たまに、「神様にお願いを叶えてもらうと子孫世代の幸せを先取りしたことになるのでは?」という質問をいただきますが、そんなことはありませんのでご安心ください。
神様との約束は絶対であることを肝に銘じる
また、できない約束は最初からしないこともたいせつです。
神様は、願いを叶える前から人々にお礼を要求するようなことはしません。荼枳尼天様も、お礼が大きいほうがより明確な結果を出してくださるだけで、神様自ら「〇〇をお礼に差し出せば叶えてやる」とおっしゃっているわけではありません。
それにもかかわらず、私たちは「叶えてくれたら一生お酒をやめます!」などと軽い気持ちで宣言してしまいがちです。それが神様との約束であることをいつしか忘れ、願いを叶えてもらったのに、お酒を飲んでしまうのです。
神様との約束は絶対です。約束を守らないから、自分や身の回りに不可解な出来事が起こるのです。
このように話すと、とても怖い話に聞こえますが、「神様との約束を守りましょう」ということだけなのです。
Q⑦自宅に祀ったお稲荷様を、失礼のないように「神じまい」する方法をお教えください。
本家の神社に相談する
墓じまいと同じように、ここ数年〝神じまい〟を希望する人が増えているそうです。私にも家の取り壊しや引っ越しなどの理由で、先祖代々祀ってきた屋敷神のお稲荷様を守り続けられなくなり、どうすれば神様に失礼なく神棚を閉じられるかというご相談はあとを絶ちません。
神じまいでいちばんよいのは、本家の神社にお帰りいただく方法を相談することです。
もし本家がわからない場合は、近くの稲荷神社に相談すれば、何かしらの方法を教えてくれると思います。きちんとした手段を経て神じまいをすれば、お稲荷様の怒りを買うことはありません。