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【坂本屈伸道】大実業家・渋沢栄一の長生きの秘訣!1日5分で健康力アップ!(その②)

昭和4年6月1日に撮影された渋沢栄一(右)と坂本謹吾(左)

2021年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』でも話題となり、2024年からは新1万円札の肖像になる明治・大正・昭和の大実業家・渋沢栄一。彼が82歳から毎日実践し、88歳のときに「そのおかげで健康を保っている」と推奨した健康体操があります。
それは、東京・小石川で小さな寄宿舎を営んでいた坂本謹吾という人が開発し、さまざまな病気や症状の回復に効果を発揮した健康体操「坂本屈伸道」。体を屈めて、おなかをめいっぱい凹ませて、ゆっくり戻し、上体を天に伸ばします。「自然治癒力が高まる」と、現代の医師も太鼓判を押します。

仕事の能率アップ!やわやわと屈んでおなかを凹ませる「坂本屈伸道」のやり方

『坂本屈伸道』第2章「修行法」の序文には「この道は、体操にもあらず、武術にもあらず、また座禅にもあらず、寒中水泳が基で、腹の謎を解いて生まれたもので、人体自然の生存法である。従って、その修行もまた人により、自然そのままを標準とすることがなによりも肝要である」と記されています。

そして、動作の説明だけでなく、心構えについても詳しく書かれています。

坂本屈伸道は、健康な人から病に伏せている人まで、誰でも行えるよう、座って行う基本のやり方(正式法)と、立って行うやり方、いつでもどこでもできる簡易的なやり方があります。ここでは、それぞれのやり方について詳しく説明します。

いずれの方法も、体を屈めて、伸ばす(屈伸)、おなかを凹ませて、ゆるゆると元に戻す(虚実)という動作は変わりません。力を無理に入れない、無理をしないことが、最大のポイントです。

リラックス法としても非常に効果的

坂本謹吾は、応用編として、日常生活のさまざまな場面で屈伸道を行うことを勧めています。

その一例として、「大事に臨む直前には、とかく心臓の鼓動が高くなりやすいが、難しい交際や談判、あるいは真剣勝負などというような大事のちょっと前に、この法を2回なり3回なり行えば、心臓の鼓動が治まって、精神が非常にゆっくりして落ち着いてくる」と説いています。つまり、緊張する場面でのリラックス法として非常に効果的なのです。

また、「どういう場合でも、これを実行しさえすれば、体の疲労や精神の倦怠に悩まされることは微塵もなく、心身ともに活躍して、仕事の能率を上げることができる」と、多忙な人ほど屈伸道を実行するよう勧めています。

長時間のデスクワークで疲れたとき、イライラやストレスを感じたときなどにも、屈伸道を試してみるとよいでしょう。

「坂本屈伸道」基本のやり方

座り方は、前後左右に偏らないように、皮膚や筋肉に伸びやたるみがないように座ります。足は左右を重ねても重ねなくてもけっこうです。両肩が水平になることがたいせつです。目は開けていても閉じていてもけっこうです。口はほんの少しだけ開けているのがいいでしょう。

体も心も、非常に柔らかい状態にすることです。首や肩、下腹などは緊張しやすく、それが屈伸の妨げになるので、体は全身がこわばらないようにスラリとした形になるようにします。気持ちも、体と同じように、とても平静にしていなければなりません。喜怒哀楽の感情に動かされると、すぐ血管や神経の働きに影響を及ぼすので、穏やかな気持ちでいることが最もたいせつです。

服を脱いだり、真っ裸になったりして行うのもいいでしょう。服を着ている場合は、首や腰の周囲を、なるべく緩やかにすることがたいせつです。パンツのひもなどもゆるめるといいでしょう。体のどの部分もきつく締めつけないよう、圧迫を受けないようにすることを忘れないでください。

両手を軽くひざの前に置き、頭を中くらいに下げて行います。「坂本屈伸道」を行う始めと終わりに、心身をじゅうぶん落ち着けてから行うようにしてください。
天地、大自然の偉大な恩恵に感謝します。体は正しく天地に対するように、心は清らかに大自然に接するようにしてください。宇宙の本体のはたらき、そのままの、無限の屈伸道に入るのだと信じて念じてください。

下あごを下げ、背骨がいくらか丸くなる感じで前へゆっくり体を屈めます。そして、体と相談しながら無理せずに屈められるだけ屈めます。両手は股の上に軽く置き、屈めたときには両ひじが外のほうに開くようにします。

屈めた体をそのままにして、へそを中心にして、おなかをやわやわと凹められるだけ凹ませます。

凹ませたおなかを、なるべく力を入れないようにして、ゆっくりと元の位置に戻します。

屈めた体を静かに伸ばして、最初座っていたときの元の位置より少しだけ(首筋が柔らかに両肩がくつろぐ程度に)首を後ろに反らせます。

一〜四を30秒から1分くらいかけて行う。これを5分から10分間繰り返す。毎日、朝夕、時間を決めて行うといい

イスに座ってもできる

やり方は基本と同じ

立って行うやり方

両足をくっつけないで、両手は左右同じように下げ、目は開き、無理に姿勢を保とうとしないで、なるべく自然な体形で立ちます。体と精神は、なるべくスラリとして、こわばらないで、柔らかく穏やかな状態にします。

ひざを曲げないで、ゆっくり上体を前に屈めます。そして、屈められるだけ屈めます。両手は自然に前に垂らします。頭部も首に力を入れないようにして前へ下げます。

屈めた体をゆっくり起こして後ろへ伸ばし、頭を天を仰ぐようにして、首を反らせます。両手も、それと同時に挙げながら後ろに伸ばします。

二~三 を20 秒くらいかけて行う。これを5 回から15回程度繰り返す。毎晩、就寝前に行うといい。

いつでもどこでも行えるやり方

背骨を少し前に屈め、おなかを静かに凹められるだけ凹めます。

凹んだら、そのおなかを、やわやわと元の位置に戻すのですが、このとき屈めていた背骨は、始めの位置に伸ばします。

一〜二を、2回でも3回でも、また5回でも10回でも、その場の状況に応じてなるべく静かに、そして、ゆっくり繰り返します。

寝たままでも行える (あおむけでも横寝の体勢でもいい)

これをなるべく静かに、そして、ゆっくり繰り返し繰り返し行います。

やり方のポイント

●一日のうち、いつ行うのがいい?

 行う時刻は朝晩がいいでしょう。そして、朝晩とも必ず行うのがいちばんいいのです。とはいえ、そのほかの時間は、いつ行ってもかまいません。しかし、食後すぐはよくないので、なるべく1時間くらいたってから行うようにしてください。
 朝はなるべく食前に行うようにしてください。これは、その日の仕事をする準備のために、神経、血管、内臓および全身の活動力を喚起し、元気を盛んにするためです。
 夜はなるべく寝る前がいいでしょう。これはその日に使った心身の疲れをとるために、神経、血行、その他の乱れたバランスの働きを正しく整え、回復させるためです。

●呼吸のしかたは?

 呼吸は自然に任せて、なるべく気にとめないようにするのがいいでしょう。

●体はどんな感じで動かすのがいい?

 体の動かし方は、すべて静かにやわやわと、潮の満ち干のような気持ちでやるのがいいでしょう。

●やりすぎということはない?

 行う時間が長くなっても、有益無害です。場合によっては、多くの時間行うのもいいでしょう。

●どこで行うのがいい?

 行う場所は、晴天で風が激しくなければ、戸を開けて外で行うのが最もいいでしょう。

●やってはいけない人は?

 慢性病の人は病状、年齢、体質などにより、やり方の程度はそれぞれ異なるので、できるだけ細心の注意を払うようにしてください。
 高熱、ひどい痛み、出血がある場合、出産の前後、急病その他、特に安静を要する場合などには、行わないほうがいいでしょう。