今日からカロリーは気にしない
前回の記事で私が提唱する「インスリン節約ダイエット」で痩せる仕組みについて解説しました。今回の記事では、具体的なや方を説明していきますが、最も重要なポイントがあります。
それは、「カロリーを気にしない」ことです。
一般的にカロリーの低いものは量が少なめだったり、脂質が抑えられたりしているぶん、あっさりした味つけになっています。このため、食事の満足感が得られず、どうしても空腹との戦いになってしまいます。けっきょく、空腹に耐えられずにリバウンドしてしまい、継続するのが難しいのです。
インスリン節約ダイエットでは、文字通り、食後のインスリンの分泌を抑えること一点に目標を定めます。その点だけに気をつければ、食べたいものを我慢する必要もなく、空腹を感じることもなく自然とやせていきます。
実は、インスリンの分泌は、過酷な糖質制限をしなくても、ふだんの食事やおやつを食べながらでも、ちょっとした食べ方の工夫で節約することができます。以降、その具体的なやり方を説明していきます。
インスリン節約法❶
糖質のみを食べない
ご飯、パン、ラーメン、パスタなどには糖質が多く含まれています。これらを食べるとき、それ単体で食べるより、たんぱく質や脂質などをプラスして食べてください。
例えば、白米だけで食べるよりも、卵かけご飯や肉の入ったチャーハンにする、和風さっぱりパスタよりもチーズやクリームのかかったカルボナーラにする、などです。
ある日本の研究で、以下の3つのパターンで、食後の血糖値の上がりやすさを比べました。
①糖質食(180g) 302㎉
②糖質(180g)+たんぱく食(240g) 602㎉
③糖質(180g)+脂質(41g)+野菜(100g) 604㎉
結果、食後の血糖値は、①の糖質食が断トツで高く、②と③のパターンでは上昇幅は緩やかでした(グラフ参照)。できれば主食の量も控えめにするとなおよいですが、食べる場合でも肉や魚などといっしょに食べるようにしましょう。

インスリン節約法❷
最初に野菜を食べるベジタブルファースト
近年は「ベジファースト」とも呼ばれますが、糖質よりも先に野菜を食べることで、食物繊維が腸管でブドウ糖の吸収を抑え、血糖値の急上昇を防ぐことができます。
ただし、野菜は食事の最初に食べることが重要です。食事中や食後に野菜をとっても、食後の血糖値の上昇を抑えることはできません。
インスリン節約法❸
糖質を最後に食べるカーボ(炭水化物)ラスト
節約法②にも近いですが、野菜またはたんぱく質を先に食べ、主食を最後に食べるという食べ方です。
アメリカのウェイル・コーネル医科大学の研究で、2型糖尿病患者を対象に、以下のグループに分けて食後血糖値を測る調査を行いました。
①カーボファースト(最初にパンとオレンジジュースを食べ、10分休憩後、鶏肉とサラダを食べる)
②カーボラスト(最初に鶏肉とサラダを食べ、10分休憩後、パンとオレンジジュースを食べる)
③サンドイッチ(最初にチキンサラダのサンドイッチとオレンジジュースを半分食べ、10分休憩後、残り半分を食べる)
すると、②のグループだけ、血糖値が急激に上がらず、ゆるゆると上昇したそうです。
この報告から、ご飯を最後に食べるのがベストですが、例えば、先に野菜とおかず半分を食べ、最後に残りのおかずとご飯を食べる、などの工夫をするだけでも、インスリンをかなり節約できると言えます。
インスリン節約法❹
朝食は食べる
朝食は「食べるほうがいい」「抜くほうがいい」、いろいろと言われていますが、ダイエットには明らかに「食べるほうがいい」ようです。
私が2007年に行った試験では、肥満で、かつ朝食を抜いている11人に、生活習慣病の患者さんに用いるフォーミュラ食(170㎉)(※)を2カ月間、朝食に摂取してもらいました。すると、そのほかの食事制限、運動指導なしでも、平均1・3㎏の減量が確認できたのです。
※糖質・脂質を抑え、必要十分量のたんぱく質・ビタミン・ミネラルを含む完全栄養食
朝食を食べているぶん、カロリーは増えているのにも関わらず、メタボ関連の検査データの数値も改善されていました。
しかし、試験をやめて、また朝食を抜く生活に戻ると、体重も元に戻りました。朝は、たんぱく質多めで、糖質を控えた食事を毎日食べることがお勧めです。
インスリン節約法❺
糖質は冷やして食べる
米や小麦、イモ類に含まれるでんぷんの中で、小腸で消化されず大腸まで届くものを「レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)」と言います。レジスタントスターチには食後の血糖値の上昇を穏やかにし、満腹感を持続させる作用があることがわかっています。
このレジスタントスターチは、もともと穀類やイモ類に少量含まれているものですが、加熱すると構造が変化し、小腸で吸収されやすくなります。しかし、冷めると再び消化されにくい繊維質に変化します。
つまり、炊き立てのご飯よりも冷めたご飯のほうがレジスタントスターチは豊富なのです。熱々ご飯よりも冷めたおにぎりやすしのほうがお勧め、ということになります。
インスリン節約法❻
食後15分以内にこまめに動く
食事を食べて少し経つと血糖値が上昇し始めますが、食後15分以内に体を動かすことで、血糖値の上昇を抑えることができます。子どもの頃に教えられた「食後はしばらく安静に」は、太る習慣だったのです。
例えば、「朝食を食べたら、15分以内に後片づけや掃除をする」とか、「ランチは少し遠くに食べに行き、食べたらすぐに歩いて帰ってくる」とか、「夕食を食べたらすぐに食器を洗う」など、食後すぐに体を動かすようにしましょう。
インスリン節約法❼
毎食30分前に500㎖の水を飲む
イギリスのバーミンガム大学の研究では、毎食30分前に500㎖の水を飲むことで、12週間で平均4・3㎏の体重が減少したことが報告されました。
この理由はまだ詳しくはわかっていませんが、食事の30分前に水を飲むことで、血液が薄まり、食後の血糖値の上昇が抑制されたのではないかと推測されています。
これは医学誌にも掲載された確かなデータですが、「朝昼晩の毎食30分前に水を500㎖飲む」というルールを厳密に守った人のみに現れた効果だそうです。食間や食事中、食後にいくら大量の水を飲んでも、ダイエット効果はほとんど得られないようです。

以上の7つの手法は全部実践しなさい、ということではありません。それぞれ食後のインスリンの分泌を節約できる効果があるので、自分ができそうなものをいくつか選んで実践してください。一つひとつの方法は単独での減量効果はそれほど大きくはありませんが、複数の方法を組み合わせることで、より大きな減量効果が期待できます。
カロリー制限や厳格な糖質制限と違って、インスリン節約ダイエットは1カ月、3カ月などの短期間で劇的にやせる方法ではありません。しかし、食べたいものを我慢することなく食べ方を工夫することで、少しずつですが確実に減量することができます。
ストレスも感じにくいので続けやすく、リバウンドもありません。自分のライフスタイルに合わせて、自分に合った食べ方の工夫をいくつか組み合わせることで、自分だけのオリジナルなダイエット法を作りあげてください。