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【血圧は両腕を測る】のがコツ!左右差が10ミリ以上ある場合は心臓病が潜む可能性

心臓からの危険信号をしっかり受け止める

 心臓病の予防と早期治療のためには、まず、自分の体が発している危険信号のサインを見逃さないことがたいせつです。

 心臓病の初期症状として典型的なものは「胸の痛み(胸痛)」「動悸や脈拍の異常」「息切れと呼吸困難」「むくみ」「めまい」「一時的な失神」の6つです。

 心臓病の中でも最も多い狭心症や心筋梗塞の典型的な症状は、激しい胸の痛みです。

 みぞおちのあたりや胸をギュッと握りつぶされるような、あるいは焼けるような痛みが現れた場合は、狭心症や心筋梗塞の恐れがあります。胸だけでなく、あごや左の肩や腕など、心臓の位置とは少し違う場所に痛みを感じる人もいるので、要注意です。

 胸の痛みを感じる病気には、ほかにも急性心膜炎(※1)、大動脈弁膜症(※2)、肥大型心筋症(※3)、大動脈瘤(※4)、解離性大動脈瘤(※5)などがあります。かなり痛みが強く、命の危険を感じるような場合には救急車を呼ぶか、循環器内科のある医療機関をできるだけ早く受診しましょう。

※1…心膜に炎症が起きる病気。胸の痛み、心膜摩擦音、心電図異常などが特徴
※2…心臓にある4つの弁の働きが不十分になることで、血流が滞ったり、逆流したりする病気
※3…心肥大の原因となる高血圧や弁膜症などの病気がないにもかかわらず、心筋の肥大が起こる病気
※4…大動脈の一部がコブのように病的に膨らんだ(30㎜~40㎜以上)状態
※5…中膜に流れ込んだ血液が、新たな血液の流れ道を作ったことによって血管が膨らんだ状態

 脈がときどき速くなったり、脈が飛んだりすることは、よくある生理現象です。しかし、脈拍が不規則になったときに、急にドドドッと激しい動悸を感じるようなことがある場合は、心房細動(※6)などの病気であ
る危険性があります。

※6…心房という心臓の上の部屋が小刻みに震え、じゅうぶんに機能しなくなる不整脈のひとつ

 脈が不規則になったときに、めまいやふらつきを伴う場合も、心臓病の一症状の可能性があります。

 動悸については、動悸を感じるのが緊張時や運動直後で、すぐに治まるようであれば問題ありません。

 ただし、歩いたり階段を昇ったりしたときに激しい動悸を感じ、呼吸も苦しくなるような場合は、心臓病の危険信号です。

 心臓のポンプ機能に問題が生じると、血液を送り出す力も弱くなり、肺静脈に血液がとどまって酸素と二酸化炭素の交換もうまくいかなくなるので、息苦しさを感じます。

 安静にしていても息切れや呼吸困難を感じるような場合は、心臓病になっている恐れがあります。

「心臓さえ元気であれば、新型コロナもほかの多くの病気も怖がる必要はありません」と天野篤先生

 足のむくみも、心臓のポンプ機能が弱くなっているときに起こる症状の一つです。

 体内の水分は血液として心臓から腎臓に送り出され、尿から排出されますが、ポンプである心臓の働きが弱っている人は、腎臓に血液をじゅうぶんに送り出せないため、水分をうまく処理できず、体内にたまってしまうのです。

 このような人は、足のすねの部分でむくみが起きやすくなります。

 夕方になると足がむくんだり、一晩寝て起きたら治っているようなむくみは、通常の生理現象で、特に心配する必要はありません。しかし、午前中の足のむくみや何日も続くむくみは、心臓が弱っている兆しと考えられるので、要注意です。

 めまいは、天井が回ったり、左右に揺れているようものは感覚器官の情報のアンバランスが原因ですが、立ちくらみのように気の遠くなるようなめまいは、心臓病の恐れがあります。

 また、脳貧血による一時的な失神も、心臓病の症状である場合があります。

夜間頻尿が気になる人は検査を受けてみて

 そのほか、意外な症状の陰に、心臓病が隠れていることもあります。その一つが頻尿です。

 一般的には、朝起きてから就寝までの間に8回以上の排尿回数がある場合を「頻尿」といいます。

 就寝後に排尿のために1回以上(50歳以上は2回以上)起きなければならず、生活に不便を感じる場合は「夜間頻尿」と呼ばれます。

 頻尿や夜間頻尿は、過活動膀胱(※7)や前立腺肥大(※8)などの病気が原因のケースも多く見受けられますが、夜間頻尿だけがある場合は、心臓病が隠れていることがあります。夜間頻尿は、心不全の代表的な症状の一つだからです。

※7…尿がじゅうぶんたまっていなくても、膀胱が自分の意思とは関係なく勝手に収縮する病気
※8…前立腺が肥大して、様々な排尿の症状を引き起こす病気

 心不全は、心機能の低下によって体内に血液が十分に供給されなくなった状態のことで、夜間頻尿のほか、息切れ、疲労感、むくみなどの症状が現れます。

 心臓のポンプ機能が低下すると、起立した姿勢で過ごす昼間は下肢から上半身まで十分に血液を戻せないため、下肢に水分がたまって足がむくみやすくなります。

 その状態で就寝時に横になると、重力で下肢にたまっていた水分が循環して、腎臓への血流量が急激に増加します。

 すると尿がたくさん作られるようになり、夜間頻尿が現れるのです。夜間頻尿が気になっている人は、念のため心臓の検査も受けておいたほうがいいかもしれません。

血圧を測るときは両腕で測る

 血圧を測定したとき、左右の腕で血圧に大きな差がある人も、心臓病に用心する必要があります。

 本来、上腕の収縮期血圧(上の血圧)の左右差はほとんどなく、正常な人は5㎜Hg以内に収まります。

 しかし、左右の差が10㎜Hgになると動脈の狭窄(すぼまり)があり、15㎜Hgを超えると心筋梗塞や脳卒中による死亡が多くなるという報告があります。

 腕の左右で血圧差があるということは、心臓につながる大動脈から分岐した鎖骨の下にある動脈が左右それぞれ腕に向かう途中のどこかで狭くなっているため、その下流にあたる上腕部の血圧が低くなるのです。

 左右の腕で血圧差がある場合、右が高くて左が低くなるケースがほとんどです。そうした人は、大動脈瘤や大動脈弁の病気を抱えているケースが多いといえます。

 反対に左が高くて右が低い場合は、大半が動脈硬化です。動脈硬化が進んで血管が狭窄しているところがあるため、血圧に差が生じるのです。

 このように、血圧の左右差からさまざまな心臓病のリスクを判定できるため、医療機関では近年、血圧を両腕で計測することが一般的になっています。家庭で血圧を測る際も、片方の腕の数値だけでなく、もう一方の腕の血圧も測定して、左右差をチェックすることがたいせつです。