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【肝臓をいたわる食事】たんぱく質を多くとり野菜を2倍摂取しよう!節酒・断酒もおすすめ

たんぱく質の1日の摂取量を決める

肝臓をいたわる食事は、たんぱく質と野菜を優先的に食べる食習慣が重要です。

たんぱく質は、体の維持に欠かせません。

ダイエットは、単に摂取カロリーを減らせばいいと思いがちですが、食品を選ばずに制限すると、たんぱく質不足に陥る恐れがあります。

私たちのデータでは、肥満のかたは総じて糖質を多くとりすぎで、たんぱく質は不足傾向です。糖質は減らし、たんぱく質はしっかりとるダイエットが適切です。

ただし、たんぱく質も過剰にとると、長期的には健康を害すると報告されています。

私たちは「現在の体重(㎏)×1・0〜1・3=1日の適正なたんぱく質摂取量(g)」と指導しています。

体重60㎏なら、たんぱく質は1日に60〜78gとるということです。

では、具体的にはどんな食品がいいでしょうか。

まず、植物性たんぱく質を効率よくとれる大豆食品が最もお勧めです。特に、納豆は、食物繊維が豊富な上、腸内の善玉菌を増やすのに役立つプロバイオティクス食材でもあります。豆腐もいいでしょう。

動物性たんぱく質は「①魚、②鶏、③牛・豚」の順位でお勧めします。赤身の牛肉、豚肉は過剰にとると心血管障害、がんのリスクが高まることが報告されているので、魚と鶏を優先的に食べましょう。

卵は、肝臓によい良質なたんぱく質を含んでいるので、私は1日に2個とるのを勧めています。

昔は「卵は1日1個までにしないとコレステロール値が上がる」と言われていましたが、これは古い研究結果に基づく説で、現在は否定されています。

たんぱく質は、一度に多量に摂取しても、すべてを吸収することができません。ですから、1日の必要量を、3度の食事に分けてとるのがよい食べ方です。体重にもよりますが、1回の食事でたんぱく質を20g以上を目安にするといいでしょう。

特に、朝食をパンやおにぎりで済ませ、たんぱく質不足の人も多いでしょう。

納豆1パックには約7〜8g、豆腐3分の1丁に約7g、卵1個は約7g、ツナ缶1缶は約13gのたんぱく質が含まれます。これらの食品を活用しましょう。

たんぱく質の摂取が十分かどうかは、健康診断の数値からもわかります。アルブミン(適正値は3・9以上)が3・5未満、尿素窒素(適正値は10〜20程度)が一桁であれば、たんぱく質不足です。

野菜はこれまでの2倍の量をとろう!

野菜は、これまでとっていた2倍の量にすることをお勧めします。

目安は1日に350g以上です。これだけとれば、食物繊維の目標値である1日20g程度になります。

私たちの研究では、肥満・脂肪肝の人は、野菜の摂取量が日本人の推奨摂取量の約半分であることがわかっています。

また、前項でお米やパンなどの精製糖質は半分に減らすとお話ししましたが、それらにも食物繊維が含まれており、減らした分以上に食物繊維をとらないと、必ずといっていいほど便秘になるのです。

便秘は肝臓の大敵です。便秘で腸内環境が悪化すると、本来は便として体外に排泄されるべき毒性のある物質が肝臓に多く流れ込み、肝臓の負担が増えてしまうからです。

野菜は、必ずしも生でとる必要はありません。

例えば、ビタミンCは、単体では熱に弱く、加熱すると壊れてしまいますが、野菜の細胞内のビタミンCは抗酸化物質と共存しているため、加熱しても壊れにくいのです。

野菜たっぷりのみそ汁やスープを積極的に取り入れてください。

ただし、イモ類、カボチャ、トウモロコシは糖質が多いので、これらを食べる際には、主食の代わりとして食べたほうがいいでしょう。

お酒は肝臓の大敵断酒するのが最も効果的

「飲酒」についても述べておきましょう。

お酒は基本的に、肝臓には毒です。

簡単にいうと、アルコールは脂肪をエネルギー源として使わせなくさせ、一方で脂肪をため込む機能を高めてしまいます。実際、過剰飲酒者(1日にアルコールの摂取量がエタノール換算で60g以上)の90%以上に脂肪肝が認められます。

肝臓のことを考えれば、お酒を飲まないに越したことはありません。肝臓に異常のない人でも、1日にビール中びん1本程度にとどめるのをお勧めします。

すでに脂肪肝や脂肪肝炎になっている人は、一時的にでも断酒するのが、改善に最も有効です。

最近は、減酒(酒量を減らす)に有効な薬があります。

アルコール依存症患者の飲酒量を低減するために使われる薬「セリンクロ」

脳内のオピオイド受容体に作用して、「お酒を飲んでもさほどおいしく感じられない」「酔って心地いいという気持ちが抑えられる」などの効果を発揮します。

自分の意志でお酒を控えられない人は、医療機関で相談されるといいでしょう。

ところで、健康診断で肝臓の異常を指摘されておらず、「自分はまだ平気!」と思っているかたにも、落とし穴があります。

肝機能の検査値、AST(GOT)とALT(GPT)の数値は、通常はASTのほうがALTより高いのですが、脂肪肝になると、これが逆転するのです。

ASTやALTが正常範囲内でも、ALTのほうが高ければ、脂肪肝である可能性が高いといえます。

肥満や脂肪肝を指摘されているかたはもちろん、ALTのほうが高い人も、肝臓をいたわる食事を、ぜひ実践してください。

この記事は『ゆほびか』2023年2月号に掲載されています
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