糖尿病はなぜ標準治療で治らないのか?
血糖値が高めなのが気になるかた、すでに糖尿病を患っているというかたにぜひ知ってほしい食事法があります。
内科・高齢者医学が専門の水野雅登医師は、従来の糖尿病治療に違和感を感じていました。
高血圧や脂質異常症などの病気は、学会などが定めたガイドラインに従った標準治療で数値が改善し、病気がよくなっていくのに、糖尿病だけは違う。なぜ、糖尿病の患者は治らないのか。今の日本で行われている糖尿病の治療に問題があるのではないか。
そんな水野医師が、8年前に自ら糖尿病になりかけたことがありました。
両親とも糖尿病家系で遺伝的にも糖尿病の発症リスクが高いうえ、不摂生も影響して、BMI値30の「2度肥満」(重症度が上から3番目の状態)になり、ヘモグロビンA1cの数値は糖尿病の境界値すれすれ、肝臓は脂肪肝を超えて「非アルコール性肝炎」と診断されたのです。
水野医師は「このままではいけない」と痛感し、ダイエットを決意しました。
最初に取り組んだのは、教科書通り、「カロリー制限食」でした。しかし、空腹感に耐えられず間食をしたり、反動で大食いをしたりで、失敗の連続。
そんな中で出合ったのが「糖質制限食」でした。
当時、アメリカ糖尿病学会が、糖質制限食を糖尿病治療の選択肢の1つとして認定し、日本でも糖質制限食を糖尿病治療に取り入れて成果を上げている医師が何人も出てきていました。
そこで、糖質制限食を実践してみると、1年間で体重は14キロ減り、肝臓の数値も正常化。上昇し続けていたヘモグロビンA1cも基準値ギリギリの5.5%から5.2%に下がり、完全に正常化したのです。
自らの経験からその効果に確信を持った水野医師は、糖質制限を糖尿病の治療に取り入れ始めました。
すると、みるみる患者さんたちの血糖値やヘモグロビンA1cが改善しました。糖尿病歴が長い重度の患者でも、糖尿病の治療薬やインスリン注射をやめられた人が続出したのです。
2014年からの5年間、インスリンを自己注射していた2型糖尿病患者さん84例の全員が、脱インスリンに成功。インスリン離脱後も、糖尿病の合併症は出ていないといいます。
カロリー計算は不要!肉・卵中心の「タンパク脂質食」がお勧め
では、どんな食事法を指導したのでしょうか。それは、水野医師が「タンパク脂質食」と名付ける食事法です。
具体的には、
●カロリー計算はしない。
●タンパク質を主食にする。
●そのために、肉・卵中心の食事にする。
●足りないタンパク質量は、ホエイプロテインで補う。
●糖質はなるべく減らす。
●鉄・ビタミンをサプリで補給する。
というもの。
水野医師と患者さんとの合言葉は「肉、卵、ホエイプロテイン」だといいます。
「ホエイプロテイン」や「サプリ」と聞くと、めんどうに感じるかたもいるかもしれませんが、実際は、治療に必要とされる栄養素の量を手軽に摂取できて、とても便利だといいます。
『ゆほびか』2021年11月号では、水野医師による「タンパク脂質食」の詳しい内容を紹介しています。ご興味のあるかたは、どうぞお近くの書店、インターネット書店でお買い求めください。