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腰痛ひざ痛があっても簡単【座ったまま歩き】でウォーキングのうれしい効果が得られる!

精神の安定や睡眠に役立つホルモンが分泌される

 私は著作をはじめさまざまな場で、歩くことが心身の健康にとっていかに重要かをお伝えしてきました。きっと皆さんは、私がさぞたくさん歩いているんだろうと、お思いになっているかもしれません。

 しかし実際は、恥ずかしながら仕事に忙殺され(事実ですが言い訳でもあります)、ほとんど歩いていません。「偉そうに勧めておいて、ええかげんにせえよ」と、友人からも失笑を買っています。

 私の本は、そんな情けない自分にプレッシャーをかけたくて書いたようなもの。でも、理由はそれだけではありません。たくさんの患者さんをていると、よく歩く人は幸せであることがわかります。

 現状に満足されていて、おおらかで自然体。イライラ、クヨクヨしている人は、見当たりません。ここから自信を持って言えるのは、「ただ歩くだけで、人生は幸せになる」ということ。

 単純ともいえるその事実を知って、幸せをつかむ人が一人でも増えてほしい。そんな思いも、執筆の大きな動機となりました。

 歩くと、なぜ幸せになるかというと、脳内のホルモンバランスが整うからだと考えられます。特に、精神の安定や睡眠に役立つ「幸せホルモン」のセロトニンは、歩くことでどんどん分泌されます。

顔を見れば歩いているかそうでないかわかる

 長年の経験で、私は顔を見ただけで、その患者さんが歩いているか、そうでないか、見当がつくようになりました。なぜなら、歩いている人は、セロトニンのもたらす幸福感が顔に表れ、ご機嫌な顔つきとなるからです。

 これを私は「セロトニン顔」と呼んでいます。セロトニン顔の人は、人生における成功をつかむ確率も高くなります。これはある意味、当然のことといえます。

歩いている人は幸せホルモンがたくさん出てニコニコ顔になる

 すでに説明したように、歩くと脳の血流がよくなり、神経細胞も増えるからです。また、歩くことで目や耳などの感覚器官から、脳に刺激が入ります。手足をスムーズに動かすことも、脳のトレーニングになります。

 つまり、歩くと頭がよくなるのです。頭がいいうえに、おおらかで、前向きな人は、仕事も人間関係も、うまくいくに決まっています。

 その結果として、お金持ちになれるなど、人生の成功がつかめるのでしょう。それでも、高齢になると、誰もが退職してやることがなくなり、体も弱ります。 でも、歩く人は、やはりセロトニン顔で、実年齢より若々しく、いきいきとされています。

 腰やひざが痛くなると、「歩くのは無理」と思われるでしょうが、そんなことはありません。サポーターやコルセットなどで弱った部分を支えたり、つえや手すりにつかまったり、家族や介護士さんに支えてもらったりして、できる範囲で歩くことはできます。

 2本のポールを使って歩く「ノルディックウォーキング」もお勧めです。ちなみに、骨折したとしても、鎮痛薬で痛みを和らげつつ、歩いたほうが、骨は早くくっつきます。イスに浅めに座って、下腹に力を入れて、左右の足を交互に上げる「座ったまま歩き」でもいいと思います。

 そうやってなんとか歩こうとしていると、不安や心配事をいつの間にか考えなくなっていることに気がつくでしょう。

理想の死に方「ピンピンコロリ」を実現するには

 高齢のかたからは「ピンピンコロリで逝きたい」という言葉をよく聞きます。人生を最期までし、ある日「コロリ」と死んでいく。

 私もそれが理想的だと思います。この「ピンピン」という言葉に当たるのが、「歩くこと」ではないでしょうか。

 いつから人間は、寝たきりになってベッドにいるだけの長い時間を過ごしてから、最期を迎えるようになったのでしょう。

 私はずっと以前から、過剰な医療を控え、穏やかに最期を迎える「平穏死」を推奨しています。しかし、現在の医療では、自分から求めて勝ち取らないと、平穏死を迎えることが難しくなっています。

 では、平穏死を迎えるために何をしたらいいかというと、やはり「歩くこと」なのです。最後まで歩ける体でいることが、ピンピンコロリを実現する最強の手段なのです。

 最後に、ある患者さんのエピソードをご紹介して、本稿の締めくくりとしたいと思います。

 Bさん(60代・男性)は、肺がんが骨に転移し、医師から余命が短いことを告げられました。入院して抗がん剤治療をすれば、少しは余命が伸ばせると提案されたそうです。

 しかし、Bさんはをそれを拒否して「自宅で最期を迎えたい」と、当院に来られました。初診時のBさんは、顔色は悪く、食欲もないと言って、今にも消えてしまいそうな様子でした。

 そんなBさんに、私は毎日、歩くことを勧めました。すると、その後のBさんは見るたびに、元気な様子になっていきました。見た目だけでなく、2カ月後には、腫瘍マーカーの値も10分の1ほどに下がっていたのです。

 Bさんは野菜作りが趣味で、農園に通い、できた野菜は近所の人や友人にあげるなどして、日々を過ごしていたようです。日焼けして顔つきもになり、末期がんの患者さんには、とても見えませんでした。

 4カ月後、Bさんは農作業中に息苦しさを感じて倒れ、1週間後に、自宅で穏やかに息を引き取られました。ちなみに、腫瘍マーカーの値は変わらず低いままでした。

 末期がんであっても、ピンピンコロリを自らの手で勝ち取られたBさん。最期まで、好きな農作業と友人との付き合いを楽しみ、旅立たれたBさんは、お幸せだったのではないかと私は思います。