CDを聴いたら私はすぐに催眠状態になった
私は長年、大学病院で消化器外科医として主にがん治療に携わってきました。しかし、手術・抗がん剤・放射線治療の三大治療だけではよくならない患者さんも多く見てきました。これらは原因に基づいた根本治療ではなく、あくまで発生したがんを取り除く対症療法であり、自ずと限界があります。
がんの根本原因を突き詰めれば、それは「心」にあると今では考えています。体だけでなく、心へのアプローチが重要だと考え、催眠療法を取り入れるようになりました。
催眠状態とは、眠っているのではなく、意識はちゃんとあります。わかりやすく言えば、極度にリラックスした状態です。「我を忘れた状態」とも言えるでしょう。例えば、美しい景色を見てハッとしたとき、人は一瞬、我を忘れています。そんなふうに、日常で誰もが大なり小なり催眠状態を経験しています。
催眠状態に入ると、その人がふだんは意識していない心の奥底、「潜在意識」の領域にアクセスしやすくなります。その人が病気になった本当の理由や、本当の望みを潜在意識の奥深くに探しに行くのが催眠療法だと言えるでしょう。
催眠状態に入ると、体にも変化が現れます。私の場合、指先がしびれるような感覚がするのです。青山雅明さんの「虚無僧尺八CD」を聴いていると、すぐにその状態になります。これには私も驚きました。

潜在意識下の問題や解決にもつながる
私はCDをすっかり気に入り、何度も聴いていますが、聴くたびに新しい発見があります。尺八の音が、あるときは「川の流れ」のように聞こえたり、その流れがまた途中で変わるように感じたりして、飽きることがありません。とても自由にイメージが湧く音だと思います。おそらく倍音の揺らぎがあるのがいいのでしょう。また、メロディーもあるような、ないような、予測のつかない不安定な感じが逆に新鮮でした。
私たちはふだん、顕在意識(自分で明瞭に認識している意識)で思考や判断をしていますが、これはいわば「オン」の状態で、それがずっと続いていると脳が疲れます。先に述べたように、このCDを聴くと自然と催眠状態に入り、潜在意識につながりやすくなると思います。すると脳が休まるとともに、潜在意識下の問題の発見や解決にもつながっていくのではないでしょうか。
私自身、これからもCDを聴き続けて、この幽玄な音の世界を楽しみたいと思っています。