使えば使うほど自分も楽しく
人にも喜ばれる
相続をあてにされるだけ。使えば好かれ、社会も潤う
日本人は、若い頃から老後の不安に備えてコツコツと貯蓄をし、いざ老後を迎えた後も、蓄えをできるだけ使わずに残しておこうとする傾向が強いと感じます。
でも、使わないまま死んでしまえば、貯蓄も意味はありません。文字通り「金は墓場には持って行けない」のです。使わずに残しておいたところで、要介護状態になったり認知症が進んだりすれば、思うようにお金を使えなくなりますし、実際あまり生活にお金がかからなくなります。医療費も公的介護費も自己負担が一定額を超えた場合は払い戻される制度がありますし、年を取って体が思うように動かなくなれば、趣味やレジャーに使うお金も減ります。
「子どもや孫のためにお金を残してあげたい」と考えて倹約生活を送っている人もいるでしょうが、そう思うなら、死後に遺産を残すよりも、自分が生きているうちに子や孫のためにお金を使ったり、会うたびにお小遣いをあげたほうがいい。
ケチな年寄りほど、嫌われる者はありません。反対に、気前よくお金を使う人には、人が集まってきます。孫だって、1000円しかお年玉をくれないおばあちゃんよりも、1万円、2万円くれるおばあちゃんの家に遊びに行くほうが、楽しみに決まっています。お金を使わずにためこんでも、家族から相続をあてにされ、「早く死ねばいいのに」と思われるだけ。ならば、元気で自分のお金を自由に使えるうちに、自分が楽しく、人からも喜ばれるように使ったほうがよくないですか?
日本の個人資産3000兆円のうち、2000兆円超を高齢者が保有しています。日本経済が長らく不況から抜け出せないのは、個人消費が冷え込み、経済の「血液」であるお金の循環が悪くなっているから。高齢者がお金を使うことは、社会と経済を活性化させ、停滞する日本経済を救う道でもあるのです。
「モノ」を買うより「コト」に使う
「お金はどんどん使うべき」と言っても、「無駄遣いをしろ」ということではありません。自分や家族が幸せな人生だと思えるような、充実した時間のために使うべきです。
それも、できれば「モノ」よりも「コト」にお金を使う、すなわち体験のために使うのがよいでしょう。「モノ」はアンチエイジングに影響を与えませんが、「コト」は確実に心身を活性化します。
旅行に出かける、友人との交際、おいしいものを食べる、映画や音楽、美術の鑑賞、学びたかったことを学ぶなど、自分の人生を豊かで充実したものにする「コト」は、いくらでもあるはずです。
世の中に役立つことにお金を使いたいなら、地元や慈善団体に寄付や遺贈(遺言で財産を相続人以外の者に譲ること)をするのもいいでしょう。お金を残すよりも思い出を残したほうが、はるかにいい。有意義にお金を使いましょう。