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べストセラー精神科医が指南!60歳・70歳から人生が楽しくなる7つの習慣その④「散歩する」

気分が晴れ晴れし
足腰が鍛えられリアルな発見がある

日光を浴びるとうつになりにくい

家に閉じこもってテレビ漬けになる代わりに、何をすればいいか。

私は、散歩をお勧めします。

外に出て太陽の光を浴びると、脳内でセロトニンの生成が盛んになります。セロトニンは、幸福感や精神の安定をもたらす脳内物質。朝に散歩をすれば、体内時計がリセットされ、セロトニンの分泌によって自律神経(※)が交感神経優位に切り替わり、体が活動に適した状態に整います。睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンも、朝から昼過ぎに作られたセロトニンを材料に、日没後から作られ始めます。

※自律神経とは、無意識のうちに体の機能を調節している神経で、興奮状態を示す交感神経と、リラックス状態を現す副交感神経から成る。

つまり、朝の散歩は、朝シャキッと目覚めるだけでなく、夜ぐっすり熟睡するためにも有効なのです。

セロトニンが不足すると、気分がうつ状態になります。秋から冬にかけて日照時間が短くなり、日光を浴びる時間が減少することでセロトニンが不足し、うつ状態になる「冬季うつ病」という病気があるほどです。それでなくても、高齢者は気分が沈んだり、不安を感じたりしがちです。外に散歩に出かければセロトニンの分泌によって気分が晴れ晴れとし、メンタルの安定にも役立ちます。

もちろん、散歩には足腰の筋肉を鍛え、要介護の入り口であるフレイル(加齢に伴い心身の活力が低下した状態)を防ぐ効果も期待できます。

また、外に出て散歩をすると、周囲の景色や、肌に触れる空気の温度や風の感触、道端の花の香り、鳥や虫の鳴き声、民家からもれる生活音など、さまざまな感覚情報が入ってきます。こうした外界からの五感の感覚情報の刺激が、脳の活性化にとても役立つのです。

テレビではわからない社会の現実が見える

街に散歩に出かけると、ふとした瞬間に、いろいろな気づきがあるはずです。例えば、歩道に段差や障害物が多くて歩きにくいと感じたり、コロナ禍で閉店した店舗に新しいテナントが入っているのを見つけたり。物価が上がったといっても、スーパーの特売品の値段は変わっていないと気づくかもしれません。

こうした情報は、テレビのニュースにはなりません。テレビは「珍しいこと」を伝えますが、街を歩いていて見かけるのは「よくあるあたりまえのこと」だからです。しかし、よくあるあたりまえのことの中にこそ、社会の現実が映し出されているのです。街に出て散歩を楽しみながら、テレビが報じないリアルな発見をしていただきたいと思います。

散歩をして気づいたことや自分の足で稼いだ情報は、人との会話でも役立ちます。テレビで見聞きしたような話をされてもつまらないだけですが、その人のオリジナルな情報や話題であれば、相手はもっと聞きたい、話がおもしろいと思うはずです。

つまらない年寄りになりたくなければ、テレビを捨てて街に出ましょう。さまざまな発見があり、いろいろな刺激を受け、きっと毎日が、ちょっと楽しくなるはずです。

この記事は『ゆほびか』2022年11月号に掲載されています。

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