ラジオ体操は女性の美容と健康のために生まれた体操
コロナ禍で、自粛生活が長引き、現在にいたるまで在宅勤務を基本とする企業が多いと聞きます。
筑波大学と健康機器メーカーのタニタが東京都内の会社員約100人(平均年齢48歳)を対象に行った調査では、3月以前は一日の歩数平均は約1万1500歩でしたが、緊急事態宣言以降、在宅勤務が中心となってからは歩数が29%減少。中には70%も減少し、一日2700歩程度の人もいたそうです。
これほど活動量が減れば、太るのもあたりまえ。そんな中、自宅で誰でもできる運動不足の解消法として、今、再注目されているのが「ラジオ体操」です。
皆さんも子どもの頃からいろんな場面でやる機会があったと思いますが、実はこのラジオ体操、全身の筋肉や関節をまんべんなく動かすことで、肥満や体の不調、痛みなどの防止・改善が期待できる完成度の高い運動なのです。
日本でラジオ体操が始まったのは1925年ですが、現在行われているラジオ体操になったのは、1951年です。ラジオ体操の動作を決める際には、「女性の美容と健康」が重視されたそうです。
当時は「産めよ増やせよ」の時代でしたから、女性の健康はとても重視されたのだと思います。
そのため、女性の体や好みに配慮し、美しい動きで心地よく、疲労回復と美容にも効果があるように、と工夫されています。つまり、美容体操の役割も担っていたわけです。
使わない関節や筋肉はドアと同じように「サビつく」
ラジオ体操をダイエット目的で活用するのは、とても有効です。「運動は苦手」「運動嫌い」という人も、3分ほどの音楽に合わせて行うラジオ体操なら、無理なく全身運動ができるからです。
無理なくできると言っても、動かしている筋肉や関節を意識して、きちんとした動作で行うと、息が上がるほどの運動になります。3分でも運動効果がじゅうぶん得られる、ダイエットの強い味方になるのです。
また、ラジオ体操には、腕を大きく回したり、体を横に倒したりなど、日常生活では動かさない筋肉の動きが入っています。
筋肉や関節は、使わないと硬くなります。これを私はよく、「ドア」にたとえます。ふだん開け閉めしていないドアは、ちょうつがいがサビついて動かなくなります。
これと同じことは、体でも起こります。ふだん使われず、サビついた関節や筋肉は、痛みや不調、老化につながります。
そうした関節や筋肉をラジオ体操でよく動かしておけば、年を取ってもなめらかな動きをキープでき、肩こりや五十肩、腰痛、股関節痛、ひざ痛などの予防・改善にもつながるわけです。
さらに、横曲げや回旋、ねじる運動など、腹部体幹の筋肉を刺激する動きも複数含まれています。これは内臓の働きを活性化し、便秘解消の効果も期待できます。また、深呼吸や胸を反らす運動は、心肺機能を向上させる効果が期待できます。
骨盤底筋を鍛え尿もれを解消
ラジオ体操はいつ行ってもかまいませんが、特にお勧めなのは朝です。全身をまんべんなく動かすことで血行がよくなり、気持ちよく一日をスタートできます。
一日1回でもよい運動になりますが、眠くなる時間帯の午後3時頃にもう一度行うと、気分も体もリフレッシュできて、一日の後半をアクティブに活動できるでしょう。
最近、よく「女性はを鍛えましょう」と言われます。40代以降の女性の、実に半数以上が尿もれに悩んでいます。尿もれを改善するには、骨盤底筋を鍛えることが大事です。今「トレ」が話題になっているのも、これが理由の一つです。
ラジオ体操には、これに効果的な運動がすでに組み込まれています。2番目と12番目の腕を振って足を曲げ伸ばす運動は、しっかり行うことで骨盤底筋が鍛えられます。ラジオ体操を習慣にすれば、尿もれを防ぐ効果も期待できるのです。
昭和30年代、女学校では「ラジオ体操を行うと安産になる」と推奨されたというエピソードもあります。ラジオ体操は、まさに女性の美容にも配慮された体操なのです。
13の動きからなるラジオ体操は、一つ一つの動作にポイントがあります。ポイントに気をつけてしっかり行うと、3分でもじゅうぶんな運動になることがわかると思います。
ただし、一度に全部やろうとすると混乱して、動きがバラバラになってしまうことがあります。無理せず少しずつ取り入れてください。
ラジオ体操で最もたいせつなのは、「呼吸」です。背骨を伸ばすときは鼻から息を吸って、曲げるときは鼻と口からしっかり吐きます。
ラジオ体操の動作は、一つの動作の終わりが、次の動作の始まりになっています。3分で13の動作を流れるように、吸って吐いてのリズムで続けることが重要なのです。