スマホやゲームによる快楽は長続きしない
精神科医でベストセラー作家の樺沢紫苑(かばさわしおん)先生は、30年間、メンタル患者さんが抱える苦しみと向き合い、どうすれば幸せな状態に導けるのか考え続けてきました。そして、幸せを感じる3つの脳内物質に着目しました。
(以下、樺沢医師のお話)
まず、大事なのは、心と体の健康に欠かせない幸福物質「セロトニン」。そして、愛情やつながりを感じるときに分泌される幸福物質「オキシトシン」。その上に積み上げていくのが、何かを達成したときに分泌される幸福物質「ドーパミン」です。
ドーパミンは「快楽物質」とも呼ばれ、あまりいい印象がないかもしれません。しかし、ドーパミンは、お金。成功・富・名誉・地位・達成感などを得たときの幸せを司っています。
セロトニン、オキシトシンの土台をきちんと固めた上で、ドーパミン的幸福もかなってこそ、長続きしうるバランスのとれた幸福となるのです。これら3つのどれか1つが欠けても、持続的な幸せは感じられません。
例えばスマホやゲームをだらだら長時間やってしまうのは、「ドーパミン」の仕業です。心と体が疲れている(セロトニンの欠如)。愛情を感じられない(オキシトシンの欠如)。そうしたときに、それらの欠如を補うように、私たちはドーパミン的な幸せを求めてスマホやゲームにハマるのです。
でも、そうしたドーパミンばかりが過剰な状態の幸福感は、長続きしません。一時の簡単に手に入る幸福(快楽)は、中毒を引き起こし、本来の幸せからほど遠い状態になってしまいます―――(樺沢医師)
ゲームは「回数や時間を決めてやる」方が幸福度が増す
そこで、樺沢医師が強力に勧めるのが「朝の散歩」と「積極的な親切」です。「朝の散歩」は、セロトニンを分泌させて、心と体が幸せを感じやすい状態にしてくれます。「積極的な親切」は、オキシトシンを分泌させて、愛情やつながりによる幸せを感じやすい状態にしてくれます。
そうしてセロトニンとオキシトシンが充分に分泌されると、ドーパミン的な幸せを追い求める欲求は和らぎ、自然に、スマホやゲームをだらだらやってしまうことがなくなるのです。
ちなみに樺沢医師によると、スマホやゲームは「だらだらやる」よりも「回数や時間を決めてやる」方が、幸福度・満足度とも高まるとのこと。人間が高い集中力を保てるのはせいぜい15分なので、ゲームも15分に区切って行うほうが、依存症になるのを防ぎつつ、喜びが増すそうです。
樺沢医師のお話をもっと詳しく知りたいかたは、どうぞお近くの書店、またはネット書店で『ゆほびか』2021年8月号をお手に取ってみてくださいね。