片づけで悪循環に陥ってしまう理由は?
【1】では、片づけが幸せを呼ぶしくみについてお話しましたが、1つ、押さえておいてほしい重要なことがあります。
それは、せっかく片づけようとしても、悪循環に陥ってしまう人がいるということです。図をご覧ください。片づけで悪循環に陥る人は、およそ、こうしたパターンをたどります。
さて、この悪循環の中で、最も問題となるポイントはどこでしょうか。答えは、「つい完璧を目指す」ところです。
なぜなら、それが片づけを「楽しくない行為」にしてしまうからです。家や部屋を完璧に片づけようとするのは、かえってよくありません。適度にゆるくやるのがいいという認識が大事なのです。
寒々しいほどに完璧に片づいた部屋は、かえって緊張感が増し、くつろぐことができません。まるで、毎日タキシードを着ているようなもので、息が詰まってしまいます。
”いいかげん”に するのが片づけのコツ
あなたが家庭の主婦なら、リビングやダイニングにぬくもりを感じられるよう心がけてください。緊張感のある家に、夫は帰ってこなくなります。
「いいかげん」という言葉がありますが、これには、ほどよい程度だという意味もあります。「いいかげん」な片づけこそ、幸せを呼ぶのです。家の心地よさというのは、このゆるさ、あいまいさからやってきます。
部屋をちょっとでも散らかすと、すぐに怒る人がいますが、それはむしろ、病的だといえます。家族からも疎まれかねません。別の言い方をすれば、そういう人は片づけのハードルを上げすぎて、自ら不幸を招いているのです。
ですから、片づけはハードルを下げて、ゆるくあいまいに行えばいいのです。そうすれば、楽しく継続できるようになります。
ハードルを下げると幸福感が上がっていく
「幸福になるためには、努力し、成功しなければならないと思われていますが、逆だとしたらどうでしょう?」これは、ハーバード大学の心理学者、ショーン・エイカーの問いかけです。
彼の研究によれば、私たちが教わってきた「一生懸命がんばれば成功できる。成功すれば幸福になれる」という考えは、科学的に間違っています。人は成功するから幸福になるのではなく、幸福感を持っている人が成功するのです。
つまり、何ごともハードルを下げ、達成度を上げて幸福感を高めることが、成功につながるのです。片づけも同じです。
そもそも、楽しくなければ、脳の実行能力は高まりません。「やらなければ」という強迫観念だけで行うと、苦痛にしかならないのです。
脳の実行能力を高めるポイントは「健康になりたい」とか「もっと稼ぎたい」とか、片づける動機を楽しさと結びつけることです。そうすると、脳から神経伝達物質が出て、ワクワクし、やる気が出ます。
高度成長の時代をとうに過ぎ、成熟期に入った日本には、「モチベーション型」ではなく「ハピネス型」の行動がふさわしくなっています。モチベーション型というのは、昔よくあった「気合いで頑張る!」といった地獄の特訓のようなやり方ですが、これは、もはや古いのです。
片づけも、ハピネス型、すなわち幸福感が高まるようなやり方をするのがいいでしょう。その意味でも、ハードルを下げた「ゆる片づけ」が最適です。人が集まってくる、くつろげる部屋というのは、完璧には片づいていないものです。
●片づいていてもくつろげない家