自分では気づいていないかもしれませんが、私たちは誰でも、すごーくがんばって生きています。
「きちんとしなくちゃ」「家族のために」「しっかりしないと」……そんなふうに、自分にプレッシャーをかけているうちに、体は緊張でガチガチになってしまうのです。
肩こりや頭痛、腰痛、ひざ痛から、ネコ背やO脚などの不良姿勢、高血圧やめまいなどの病気も、そういった緊張から起こっていることも少なくありません。
そこで今回は、唱えるだけで緊張をふわっと緩める「魔法のフレーズ」をご紹介します。
緊張が緩んで体がふわっとすると、姿勢は自然と美しくなり、楽に維持できます。ぜひお試しください!
体の緊張を解きほぐす「魔法のフレーズ」で姿勢がよくなる!ネコ背や頭痛、腰痛も大改善
あるフレーズを唱えることで、姿勢がよくなり、さまざまな不調が改善する——と言ったら、皆さんは信じますか?
試しに、「頭の中で小舟が静かにゆれています」と唱えてみてください。唱えるときは、声に出しても出さなくてもいいし、目はつぶっていても開けていてもいいし、立った姿勢でも座った姿勢でもかまいません。言葉をイメージしてください。
どうでしょう?少しだけ頭の中がふわっと緩んだ気がしませんか?今回ご紹介する「魔法のフレーズ」は、私がふだん施術のときやスタジオで多用している、とっておきの言葉です。
私は現在、理学療法士と太極拳、そしてアレクサンダー・テクニーク(後述)の指導者として、いわゆる難病や難治性と診断された人が日常生活に復帰できるお手伝いをしたり、不調に悩むかたがたの体を解きほぐすサポートをしたりしています。
魔法の言葉は、ふだん気づかないうちに自分を縛っていることから解放する手軽な方法です。これの元になっているのは、私がドイツで出合い、国際認定教師の資格を取得している「アレクサンダー・テクニーク」という身体技法になります。
アレクサンダー・テクニークとは、簡潔に言うと、「よりよく生きるために体と心の扱い方を学ぶ学問」です。演奏家や俳優がボディワークとしてとり入れていて、著名人ではポール・マッカートニー、キアヌ・リーブス、松任谷由美なども実践しているそうです。
私は以前、楽器のチェロを弾いており、ドイツに留学していたときにアレクサンダー・テクニークに出合いました。ドイツの音大では、授業の一つに組み込まれているのです。
アレクサンダー・テクニークの大きな特徴の一つに、「思い込みを外すことによって、体を解きほどいていく」というものがあります。
人は大人になるに従って、いろいろな思い込みに縛られていきます。なかでも体に縛りをかけるのが言語活動、つまり言葉です。
例えば、「仕事に行きたくない」と思ったら、その言葉に反応して体が緊張します。そして、発熱したり不調を起こしたりして、体は実際に仕事に行けない状態を作り出してしまうのです。
このように、言葉や思い込みによる縛りは、筋肉を緊張させて、さまざまな不調を招きます。
逆にいえば、縛りを解くことができれば、筋肉が緩み、体が自由に解き放たれて、姿勢をよくすることはもちろん、不調を改善することもできるのです。
余計なものをとり払って楽な体を目指す
アレクサンダー・テクニークでは、さまざまな技法を使って思い込みを外していくのですが、その根本は「マイナスの技法」といわれています。壁の落書きを消すために、ペンキを上塗りするような「プラスの技法」ではなく、例えて言うなら、「しょっている余計な荷物を下ろそう」という感じでしょうか。
私は10代の頃からチェロの練習を1日6~8時間しており、いつも背中が痛かったのですが、それはあたりまえだと思い込んでいました。
アレクサンダー・テクニークの授業でその思い込みが外れたとき、自分の体がいかにひどい状態だったかということに初めて気づき、衝撃を受けました。
「これはすごい!」と思った私は、帰国してから理学療法士となって、アレクサンダー・テクニークを医療に活用することにしたのです。
姿勢がよくなれば体調も改善する
今回ご紹介する5つの魔法のフレーズは、どれも、姿勢の改善に役立ちます(それぞれ姿勢の改善以外にも有効な症状があります)。
「頭頂部を天に向け、背すじを伸ばし、肩はリラックス」などと言われても、多くの人はその姿勢を5分と維持できないでしょう。
ところが魔法のフレーズには、そういった具体的な指示はありません。ただ言葉を唱えて、それをイメージするだけです。それだけで、いとも簡単にネコ背や不良姿勢が改善され、その姿勢が楽に維持できるようになります。
心地よい姿勢が楽に維持できるようになると、首や腰、ひざの痛みが解消したり、頭痛や不眠がよくなったりします。また、うつ症状や不安症の改善なども期待できます。
痛みに困っている人や、精神的な悩みのある人で、心地よい体の状態の人はいません。心地よい体とは、体の緊張がなく、ほぐれていて、楽な状態の体ではないでしょうか。
魔法のフレーズは、体の緊張だけでなく、心の緊張もほぐす効果があります。自分で言葉を唱えて、それをイメージする。すると、体はそのイメージを表現しようとします。
冒頭でご紹介した言葉でいえば、実際に「頭に小舟を浮かべる」ことはできませんが、イメージできればそれでいいのです。
それが、ラクで楽しいと感じる体になる手助けになるからです。
(次回その②に続きます)