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【怒り・イライラが消える】女性僧侶が教える成熟した魂の作り方(その③)

先の見えない時代に怒らない人になるには感性や直感が大事

怒りの感情の根本には、現実が自分の思い描いていたものとは異なることにあると、先にお話ししました。目標や計画を強く求められる現代社会において、目標や計画が狂ったときに、人は腹が立つのです。

しかし、現実が自分の見立てとは違っていたとき 「こんなこともある」と呑み込める感性を持っていると、怒りの感情はおとなしくなります。

現代人の多くは、理論や科学、技術といった心のエンジンばかりを鍛えています。ロジックを語れない感性や直感といった心のエンジンは使わない傾向にあります。

使われなくなった心のエンジンは、どんどん錆びついていきます。その能力もどんどん衰えていってしまうのです。

しかし、多くの物事は理性で語るべきこと、そして感性で語るべきことの両面を持っています。それなのに現代社会では、どうしても理性を優先させがちなのです。

たとえば、ある会社の中に、理論やデータで動くA社員と、直感や感情で動くB社員がいたとします。この2人がそれぞれ意見を出し、どちらの意見を採用するかの会議をしたとしましょう。

Aさんは、自分が正しいという根拠のデータをたっぷり出し、ほかの人たちを説得しようとします。Bさんは直感からくる意見が多く、なんの根拠も示すことができません。「なんとなく感じるから……」で話は終わってしまうのです。こうなると、会議では全員がAさんの意見を選ぶことになるでしょう。

現代社会では、相手を説得して納得させるためには、理論やデータ、エビデンスがすべてです。説明のつかない直感や感性は相手にされません。

本来、人は、このどちらの力も併せ持っています。

むしろ、昔の人たちは、感性や直感の能力のほうが強かったはずです。嫌な予感や虫の知らせに敏感で、言霊のパワーも信じ、その恩恵に与かっていました。

虫の知らせをデータで見せてと言われても、そんなことは不可能です。口にしたことは言霊で現実になることもありますが、証明のしようがありません。それゆえ、今の社会から排除されてきたのです。

コロナ禍の今、未来を予測できない時代になりました。こんなときに、理論やデータばかりを頼りにしても、予想が外れ、怒ったりイライラしたりすることも増えていきます。
感性や直感のという心のエンジンを働かせ、余裕を持つことが、今の時代には大事になっていくでしょう。

”素”の感情に従ってアートに触れる

感性や直感など、心のエンジンを鍛え、育てる方法の一つは、アートに触れることです。

美しい景色を見る。心揺さぶられる絵を鑑賞する。本を読む。映画を観る。――こうしたことは、自分の感性を際立たせて、豊かにしてくれます。

これらのアートに触れるときには、自分の素の感情に従いましょう。

本にしろ、映画にしろ、絵画にしろ、ネット上にあるランク付けに、自分の感情を左右されないことです。ネットで大評判の映画だから必ず自分にとっていいわけではありません。友人が感動した本だから、自分も感動するわけではないのです。

アートを通し、自分の素の感情に正面から向き合うことです。最初にネットで検索し、その評価を気にする必要はありません。なんの情報もない中で向き合うのです。

これを繰り返し続けていかないと、自分の感性や直感はないがしろになってしまいます。
たとえば、みんながダメだと言ったものでも、「私は感動した」「自分はよいと思った」というものは必ずあるはずです。

星付きレストランだからおいしいとか、有名ブランドだから価値があるとかではなく、自分がどう感じるかで判断していきましょう。

自分の中で、素の感性を大事にしていくことが成熟した魂を作るためにたいせつなのです。

背景を想像しながら鑑賞してみる

もう一つ、試していただきたいことがあります。

ものを判断するときに、科学やデータなどの心のエンジンを働かせないことです。

絵画を鑑賞しているとき、「この技法がすごい」とか、「この光と影の表現がいい」とか、「筆使いにオリジナリティがある」とかなど、うんちくで語るような見方は、科学とデータなどの心のエンジンで見ている証拠です。

感性や直感を育てるために絵を見るのであれば、その絵が言っている物語を考えたほうがいいでしょう。

仮に、男女が描かれている絵ならば、筆のタッチに着目するのではなく、2人は何を話しているのか、この2人はどんな関係にあるのか、この場面に来るまでに何をしていたのかなど、あれこれ想像しながら見ることです。

このような鑑賞法を続けていけば、感性や直感などの心のエンジンはどんどん強化され、科学やデータなどの心のエンジンと同じくらいのバランスで育っていくでしょう。

両方の心のエンジンが、バランスよく働き、成熟した魂へ近づくことになるのです。