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【長生き】【がん予防】【宇宙体操】渋沢栄一の孫が実践!台湾の伝説の行医から教わった長生き体操(その②)

 日本資本主義の父・渋沢栄一は享年91歳という長寿でした。

 長寿の秘訣は、晩年、「このおかげで健康でいられる」とまで言わしめた健康体操「坂本屈伸道」です。

 そして、渋沢栄一の晩年を直接知る孫の鮫島純子さんは、現在98歳ですが、そうは思えないほどかくしゃくとしています。聞けば、「防がん宇宙体操」という健康体操を続けてきたとか。

「坂本屈伸道」と「防がん宇宙体操」——それらに込められた共通の思いに、長寿を実現する極意を探ります。

明治神宮の朝の散歩でご縁ができた

私は現在、98歳。22年前に夫を見送ってからは一人暮らしをしています。70代から本格的に水泳と水墨画を始め、80歳で社交ダンス、95歳からヨガを始めました。3年前に心筋梗塞でステント挿入手術を受けましたが、後遺症もなく、手術の翌日からすぐ元気に生かしていただいています。

会う人からはよく「健康の秘訣は何ですか?」と聞かれ、「姿勢がいいですね」とほめられます。

健康の秘訣として思い浮かぶのが毎日の早朝散歩と「宇宙体操」です。夫は若い頃から一人で朝の散歩は心がけていましたが、ともに歩くのは、夫がリタイアした昭和58年のこと。朝の時間に余裕ができたので、夫といっしょに毎朝、近所の明治神宮にお参りしてから1時間ほど苑内を散歩するようになったのです。

鮫島純子さんが台湾訪問時に参加した、朝の公園での「防がん宇宙体操」の様子(絵)/鮫島純子

その年の敬老の日、明治神宮の芝生で台湾出身の女医・荘 淑旂先生が「宇宙体操」の講習会を開かれることを知り、軽い気持ちで参加しました。

講習会が終わって荘先生にごあいさつすると、「あなたがたのことは知っていますよ。毎朝、歩いているでしょう。歩き方が気になって注意してあげたかったのですが、いきなり声をかけるのははばかられて、遠慮していました」と言って、歩き方の指導をしてくださいました。

1984年、東京・明治神宮宝物殿前で歩き方の指導をする荘 淑旂さん(右)と、鮫島純子(中央)、鮫島員重さん(左)

これをきっかけに、毎朝の散歩で荘先生にお会いするたびに、食事や健康のアドバイスをいただくようになり、交流が深まっていきました。

台湾の「がん予防の母」荘淑旂先生の「宇宙体操」

荘 淑旂(そう しゅくき)
1920年、中華民国台北市生まれ。漢方医であった父、夫を相次いでがんで亡くしたことをきっかけに、33歳で医者になり、台湾の家庭医学を取り入れた独自の方法で多くの患者を治療。54年、西洋医学研究のため来日し、医学博士の学位も取得。特にがんについての研究を進め、がん患者3万6000人の生活調査や診察から導き出した健康指導を広く行う。2001年、台湾政府から国民の健康向上活動の功績により、褒章を受けた。15年2月4日没。

宇宙体操は、正式名を「防がん宇宙体操」といい、荘先生は、台湾では「がん予防の母」「伝説の行医」とも呼ばれています。「行医」とは、中国数千年の歴史から生まれた、病気を防ぐために指導をする無償の医者のことです。荘先生は、この「病気を未然に防ぐ」という考え方を基礎に、西洋医学の知識を取り入れた独自の健康法を提唱されました。

荘先生は、お父様とご主人をがんで亡くされています。ご主人が亡くなったとき、先生は26歳で、4人のお子さんを抱え、5人めを妊娠されていたそうです。しかし、そこから一念発起し、33歳で漢方医の試験に見事合格。36歳のとき来日され、慶應義塾大学などで学び、医学博士の学位も取得されました。

特に、がんについて詳しく研究され、3万6000人のがん患者の生活を調査し、宇宙体操をはじめとする独自の健康法を編み出しました。

日本で暮らされた頃には、遠藤周作、松下幸之助、横山大観、山田耕作など錚々たる文化人・財界人の健康指導にあたり、皇太子妃でいらっしゃった上皇后・美智子さまのご体調管理のアドバイスにお招きに預かったそうです。

台湾に帰国後は、人々の健康向上と予防医学に力を注ぎ、宇宙体操の普及にも取り組まれました。私は20年前、荘先生からお誘いを受け、台湾のご自宅を訪問させていただいたのですが、現地の公園に早朝から100人以上もの人が集まり、お揃いのタスキを手に宇宙体操をしておられた光景が印象に残っています。