財運が雨のごとく降り注ぐ---!
最強の龍神である八大龍王が持つ御力と、それをいただく方法を気鋭の神道家が解説します。
『義経記』に記されている静御前の雨乞い伝説
前回に続き、龍神への雨乞い伝説を見ていきます。
雨乞いをめぐっては、同じ神泉苑を舞台として『義経記』に、静御前の伝説も著されています。
空海の祈祷から350年あまり後、日照りが長く続いたことから、時の後白河法皇は神泉苑の池で100人の僧に読経させて雨を乞います。
しかし、雨は降るようすがなかったため、今度は100人の容顔美麗な白拍子(しらびょうし)に舞いを奉納させ雨を祈ります。
それも99人までは効験が見られずにいましたが、100人めに静が舞うとたちまち黒雲が現れ、三日三晩雨が降り続いたといいます。
法皇は静を神の子かと感嘆し、静は日本一の宣旨を賜ります。そして舞いを見た源義経は静を見初め、召して妾としたと語られています。
白拍子は遊女でしたが、貴族の屋敷によく出入りすることから、見識や知性が高い女性が多かったといいます。静もその美しさと知性、またひたむきな思いをもって、龍神へ祈りを届かせ、また義経との出会いを得たのでしょう。
静御前は義経の子を宿し、兄である源頼朝の追手から義経を逃していくことになりますが、ここでもう1つ興味深いのは、頼朝もまた八大龍王への信仰を持っていたことです。
源実朝の金槐集には、長く続く大雨を止めてくれるよう八大龍王に頼む一首があるのです。
「時により過ぐれば民の嘆きなり 八大龍王雨やめたまへ」
この歌は昨年即位された令和天皇が、皇太子時代の2015年、国連の水と災害に関する特別会合の演説で引用されたことでも注目を集めましたが、雨は降りすぎて水害となっても困るのは昔も同じです。
水を司るのですから、雨をただ降らせるだけでなく、長過ぎる雨を止めて天を晴らし、財を守護するお力が八大龍王にはあることも、知られていたということでしょう。
(次回へ続きます)