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べストセラー精神科医が指南!60歳・70歳から人生が楽しくなる7つの習慣その⑦「薬に慎重になる」

飲んだほうが体調がいいと
実感できるものに絞る

私自身、数値は高いが薬は体調不良のときだけ

高齢者の中には、毎日10錠以上もの薬を服用している人が珍しくありません。しかし、ほとんどの医者は、自分では薬を服用したがりません。なぜなら、薬には程度の差はあれ、必ず何らかの副作用という毒性があることを知っているからです。

薬の中でも、毎日長期的に服用する薬については、特に慎重に考える必要があります。年を取るにつれて、薬を代謝する肝臓や腎臓の機能も落ちていきます。薬剤が体内に留まる時間が長くなり、作用や副作用が強く出すぎるなど、弊害が出る恐れがあるからです。

日本では血糖値や血圧を薬で下げることが多いのですが、高齢者の場合、その影響で体調がおかしくなることがよくあります。薬で血糖値を下げ過ぎると低血糖状態に陥り、ボケたようになったり失禁したりする場合もあります。降圧剤の影響で血液の巡りが悪くなり、頭がふらふらして転倒につながることもあります。基準値をオーバーしているから、という理由だけで数値を下げるための薬を飲み続けるのは、かえって害になることもあるのです。

私自身は、血圧や血糖値、コレステロール値、中性脂肪などの数値が高いのですが、数値を下げるために毎日薬を飲むという発想はありません。服用しているのは、心不全の症状を改善するための利尿剤や軽い降圧剤、頭が痛いときに飲む頭痛薬など、体調不良を改善するための薬だけ。薬を飲んだほうが体調がいい、と実感できる薬であれば服用する価値はありますが、そうでなければ薬を飲む意味はないと考えています。

栄養、運動、性ホルモン、「足し算」健康法のすすめ

日本の健康指導や医療は、適正体重になるまで減量する、食事のカロリーや塩分を控える、高い数値を基準値まで下げるなど、余っているものを減らす「引き算」の発想です。生活習慣病の薬の大半も、体内の過剰なものを減らす引き算の薬です。

しかし、私は6000人以上の高齢者の診察を通して、年を取ったら「余る害」よりも「足りない害」のほうが大きく、余っているほうが足りないよりもずっといい、ということを学びました。

高齢になったら、足りない栄養をしっかり食べて足す、不足しがちな運動を足す、枯渇している性ホルモンを足す、趣味や娯楽など自分にとっての楽しみを足す、人との会話や交流を足すなど、体と心が元気になることを足していくことが、若さと活力の維持につながります。高齢者の健康維持や増進には、引き算ではなく「足し算」が必要なのです。

体に不足しているものを足すという意味では、サプリメントの活用や、ホルモン補充療法も有用だと思います。私自身も、尿検査で体に不足している栄養素を調べてサプリメントで補充していますが、体調はすこぶる良好です。読者の皆さんも、引き算から足し算へ、発想を転換してみてはいかがでしょうか。

この記事は『ゆほびか』2022年11月号に掲載されています。

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