とても薄くデリケートなお尻の皮膚…洗いすぎるのは危険
実は、日本人には痔主が多いそうです。地主じゃないですよ。肛門のトラブルの「痔」のほうです。「お尻がかゆい」という人も、すでに「痔」の予備軍かもしれません。
「それらはすべて、お尻の洗いすぎが原因です！」と言うのは、大阪肛門科診療所の副院長・佐々木みのり先生。皮膚科医から肛門科医に転身して22年、約10万人のお尻を診てきたお尻の超エキスパートです。
「日本人はキレイ好きが高じて、トイレに行くたびに温水洗浄便座を使用してお尻を洗ったり、お風呂に入れば、シャワーを直接肛門に当てたりして、お尻を清潔に保とうとしている人が多いです。しかし、それがかえってお尻にダメージを与えています。
お尻の皮膚は、目の周りの皮膚と同様、とても薄くてデリケートなので、洗いすぎは危険。洗いすぎによって、天然の油分である皮脂膜がなくなると、感染症にかかって炎症を起こしたり、乾燥でかゆくなったり、あかぎれのように割れたりしてしまいます。そうして伸縮性のない開きにくい肛門になってしまっている人は、温水洗浄便座の普及とともに、年々増えています」（佐々木医師）
便が肛門に残っているから、温水洗浄便座を使いたくなる――スッキリ出すにはどうする？
多くの患者さんに、温水洗浄便座の使用をやめるように指導してきた佐々木医師ですが、「洗わないと気持ち悪い」「紙で拭くだけではきれいにならないのでは」と思ったあなた。そこに問題が隠れているのです。
「そもそも、正しく排便できていれば、紙で1～2回拭けばお尻はキレイになります。何度も拭きたくなったり、温水洗浄便座を使いたくなったりするのは、便がスッキリ出し切れずに肛門に残っている可能性があります。このような“出残り便”は痔やおしりのかゆみの主な原因の1つで、出残り便さえ治せば、肛門のトラブルは回避できます。もちろん痔も治ります。
出残り便を防ぐには、毎日便を出すよりも、２日に１回であってもスッキリ出し切ることがたいせつです。そのためには、『便意を感じたらすぐトイレにいく』『排便時、おへその下を両手の親指で上下にゆすり、下腹部を刺激する』の2点を心がけてみてください。それでも３分たっても出ないようでしたら、さっさとトイレから出てかまいません。
お尻を洗うのをやめた人たちの中には、「１５年前に手術したにもかかわらず、再発を繰り返していた痔がよくなった」というかたもいらっしゃいます。肛門になんらかのトラブルがあるかたは、ぜひ今すぐお尻洗いすぎをやめて、出残り便の改善に努めましょう」（佐々木医師）
『ゆほびか』2021年8月号誌面のさらに詳しい情報も、ぜひチェックしてみてくださいね。
