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【脳を掃除する食事⑤】認知症は”脳の糖尿病”。腸内環境を整えて脳のゴミをとる食事法を名医が指南!

殺菌・整える・育てるの3ステップ! 腸から脳をスッキリ掃除する熊谷式食事術

 脳機能の低下は、適切な対処によって改善が図れます。一例として、認知症の前段階といわれる「軽度認知障害」がよくなった症例を紹介しましょう。

 Aさん(60代・男性)は「物忘れが気になる」と訴えて、来院されました。そこで、食後の血糖値の変動を観察する検査を受けてもらったところ、インスリンが正常に働いていないことが判明したのです。Aさんは糖尿病ではありませんが、前に述べた「脳の糖尿病」に該当するケースでした。

 そこで、Aさんの希望により、インスリンの働きをよくする薬を処方しました。すると、血糖値の推移が正常になるとともに、認知機能検査の点数が上昇。正常範囲となったのです。

 Aさん自身も日常生活の中で、以前とは違うと実感されたようで、「最近、頭がスッキリして調子がいいんです」と喜ばれていました。

 このケースでは薬を処方していますが、食生活を改善することで、同じ効果が期待できます。ここでは脳と腸、それぞれにいい食事法を紹介します。

脳にいい食事

 血糖値を急上昇させないことが最も重要です。具体的には次のポイントに気をつけるといいでしょう。

・白砂糖、果糖を控える

 白砂糖は素早く吸収されるため、血糖値を急上昇させます。白砂糖が大量に使われている菓子類や飲料水は極力、控えましょう。果物も単糖類で、とりすぎると脂肪になりやすいため、食べ過ぎには注意です。

・オリゴ糖を使う

 白砂糖の代わりとしてお勧めなのがオリゴ糖です。血糖値が上がりにくいうえ、腸内の善玉菌のエサになるという、優れた特長もあります。

・糖質は朝にとる

 糖は細胞のエネルギー源ですから、1日の活動が始まる朝に食べるのが最適。私自身、炭水化物は朝食・昼食でとります。一方、夕食は炭水化物を控えめにして、たんぱく質と野菜中心のメニューにしています。

 ちなみに、私は糖質制限を基本的にお勧めしません。低血糖が脳神経細胞にダメージとなるのは、前項で説明した通りです。

 特に高齢者はたんぱく質などとともに、糖質もしっかりとりましょう。その際は、玄米や野菜からの摂取をお勧めします。

・よく噛んで食べる

 同じ量の糖なら、時間をかけて食べたほうが血糖値は上がりにくくなります。よく噛むことで、記憶をつかさどる脳の海馬の神経細胞も活性化します。

・食べる順番に気を付ける

 野菜→たんぱく質→炭水化物の順に食べることで、血糖値の急上昇を防ぐことができます。

腸にいい食事

 私がお勧めするのは、次の3つのステップで腸内環境をきれいにする方法です。

ステップ①殺す(悪玉菌の殺菌)

 悪玉菌が優勢な環境で、善玉菌をとっても、定着できずに追い出されてしまいます。そこで、まずは殺菌効果のある食べ物で、悪玉菌を追い出します。

 手に入りやすいのは、ワサビ、ショウガ、マッシュルーム。この3つで、悪玉菌の多くが殺菌できると、私は考えています。

 当院でも便秘のある高齢患者にマッシュルームエキス入りの流動食をとってもらったところ、半年ほどで便が臭わなくなりました。

ステップ②整える(善玉菌が棲みやすいように腸内環境を整える)

 善玉菌が好む、酸性の腸内環境を作るステップです。そのためにとりたいのは、納豆やみそ、漬物、キムチなど植物性乳酸菌が豊富な発酵食品。これらは腸内を酸性に整えてくれます。

ステップ③育てる(ヨーグルトなどで善玉菌を腸に入れる)

 善玉菌が過ごしやすい環境を整えたら、ヨーグルトや整腸剤などで、ビフィズス菌をとります。ビフィズス菌が出す「酢酸」という物質は、悪玉菌の増力を抑え、腸のバリア機能を回復するための材料にもなります。

 ちなみに、ビフィズス菌にはさまざまな種類がありますが、そこにこだわる必要はありません。どの種類をとっても、もともと腸内にいる、その人に合った善玉菌が活性化していきます。外部からのビフィズス菌は、そのサポート役となるのです。

 この3ステップを説明するときに、私は学園ドラマの教室のたとえをよく使います。善玉菌は良家のお嬢様のようなもの。悪玉菌という不良が暴れる場所には怖くては入れません。

 そこで、ワサビやショウガなどの用心棒の力で、不良生徒を追い出します。次に、発酵食品の植物性乳酸菌に教室をきれいに掃除してもらい、お嬢様が過ごしやすい環境にするのです。

 お嬢様がゆったり過ごせるようになると、ほかの乳酸菌という生徒も感化されて穏やかになり、教室(腸内環境)はきれいな状態を保てるようになります。

 具体的なとり方ですが、この3つのステップで挙げた食品を毎日少しずつとり続けてください。その際、①~③の順番を意識する必要はありません。何より大事なのは、根気強く、長く続けることです。必ず、便通がよくなり、便の質もよくなってきます。

 ここまで挙げた食品以外で、お勧めなのは、ネバネバした食品です。ヤマイモやオクラ、なめこ、海藻類などのネバネバした成分は、血糖値の上昇を抑えて、腸内細菌のエサにもなるし、脳にも腸にもよい食品です。私自身、モズク酢を毎日、少量ずつ食べています。

 この食事法を実践することで、認知症を予防・改善できるだけでなく、全身から病気を遠ざけることができます。ぜひお試しください。